DETA ALPHA.073
「これを使えば……よし」
依者達は、ガラス張りの巨大な部屋に詰め込められていた。全員が、怯えた目線で俺を見ている。
不意に、そのうちの1人である男がガラスを叩き出した。男は怒りとも、恐怖とも取れる、なんというか負の感情マシマシの顔をしていた。
「…!…!!」
聞き取れない。言語フィルターが正しく動作していないのか?
「えーと、これで……聞こえるか?」
「うわッ!」
男は驚いて尻餅をついた。
「な、何だお前!俺らの言葉が話せんのかよ!」
「話せてないぞ。フィルタ……あー、だから、分かりやすく言うと自動翻訳を使っている。先に言うが、俺はこの施設の人間ではない」
「はぁ?どういうことだ?そもそも、ここは何処なんだ?俺達は……」
「落ち着いてくれ。俺は君達に協力を仰ぎに来たんだ」
出来る限り、不自然ではないように、かつ萎縮させないように、言葉を選んで発する。
「時間はあまり無いが、なるべく答えられることには答えよう。まずここは君達がいた地上じゃない、えーとだから……そっちの言葉で言うと地底だな」
「地底?馬鹿げてる」
「そうだ!俺達をからかってんだろ!」
まぁ、こうなることは全然予想していた。
「よく見てくれよこの腕を。よく知らんが、地上の生物にこんなのいないだろ。他に質問はないか?無いんなら、そろそろ本題に入りたいんだが」
長袖をまくって見せたが、驚いた依者は1人もいなかった。施設の奴で見慣れてるんだろうか。
「待てよ、キショ腕」
「ん?」
前に出てきたのは、痩せ細った人相の悪い男だった。
「質問は2つだ。1つ目はお前と、この施設の人間の関係について。2つ目は俺らが捕まってる理由について」
「はぁ?ふざけんじゃねぇ!なんで貴重な機会をお前が――」
「うるせぇな、黙ってろよ雑魚」
ドスの効いた威圧感のある声で、そいつは言った。ここで騒動が起きても面倒なので、遮るようにして俺は言った。
「……1つ目より先に2つ目を答えさせてもらう。君達がここに運ばれたのは処分のためだ。君達は一斉に転送されただろう?リストを見た限り、君達は明日全員死ぬ予定だった」
「処分…だと?」
「君達は俺達の認識で言うとバグだ。それを取り除くための施設がここ、『デバッグルーム』。これ以上は長くなるから言えないが、そういう事だ」
「ああ、そうかい。じゃ1つ目の質問に答えてもらおうか」
様々な人間がいた。怒りに震える者、絶望に打ちひしがれる者、恐怖でこみ上げてくる吐瀉物を必死に抑えつける者。しかしその中で、彼はただ真っ直ぐに俺を見つめて、ピクリとも動じなかった。
「ああ。1つ目に戻るが、俺が所属している組織の下に、この施設が存在する。地上とはシステムが違うだろうから簡単には言えないが、つまり親会社の社員といったところだろう」
「ほーん……嘘はついてないっぽいな」
信用ならないのは分かるが、ここで嘘をついてどうしようというのか。
「それじゃあ本題に入らせてもらう。俺の目的、それはここからの脱出と、君達の解放だ」




