DETA ALPHA.071
「視察なぁ……」
「言いたいことは分かるぞ」
「「……遠い」」
ラジームと声が被る。
「なんでたかが廃棄物共の様子を見るのにこんな長々と移動しなきゃなんねぇんだ。施設の連中結構働き者だろ?そこそこのランクがある俺らが言ったら萎縮するだけだろ」
「そうも思うがな。上の考えることは分からん」
外の気温は2000℃を超えている。俺達を運ぶグルーフィリーの窓から、荒れ果てた地平が望める。岩に覆われ、管理された区域以外では、まともに食料なんて取れやしない。
遥か下方に、忙しなく動き回る人々が見えた。
「あいつら、どうにか出来ねぇかな……」
「あいつら?」
「今下で働いてるレヴェンだよ。飯も食えねぇ中、高ランクの連中のために鉱石採って日銭稼いでやがる。情を抜きにしても、あれじゃ生産性が低いって言わざるを得ねぇ」
「嘘をつけ。情でしか物事を言ってないのが丸わかりだぞ。思いやりなど不要と何度言えば分かる」
「けッ、血も涙もねぇお前にゃ分かんねぇだろうよ」
……俺が異端だって事は、俺が一番分かってんだ。奴隷を解放すべきって思想も、権力を分散させろって思想も。地上じゃとっくの昔に出来上がった理念が、こっちじゃ作り上げられないまんま科学技術だけが進歩していった。
「何を言うか。あるから私はお前の思想を上に報告していないのだ」
「……腐ってんのは、世界ってこった……」
「お二方、そろそろ到着しますよ」
アルゲイトが言った。
「ご苦労。おい、ヒドロ。ぼーっとしている暇があったらさっさと足を動かせ」
「はぁ……わーってるよ」
―――
グルーフィリーを降りた。地平線まで、一面が真っ赤に染まっている。
「なぁ、視察ならわざわざコレで来る必要あったのか?」
「いやいや、見てくださいよ。こんな荒れ地、ロウフィリーで走ったら爆速でパンクしますよ」
「シルグ・リを使えばいいだろう。だいたい、何故私達にグルーフィリーを貸し出したんだ。私達にそこまでの価値があるとは思えん」
「それは……」
「――まぁいい。行くぞ、ヒドロ」
「なんでテメーが仕切ってんだよ」
俺達は施設に足を踏み入れた。
その直後だった。上下にあるシャッターが、音を立てて勢いよく閉まったのだ。
「は?」
「一体何が……」
いや、俺達は目の前で何が起こったのか、それ自体は理解している。ただ、だからといってこの状況を呑み込み、理解したわけではない。少し遅れて俺達二人の脳裏に思い浮かんだ言葉は――
「「罠か?」」




