DATA ALPHA.070
いつの記憶だか分からない。ただ、この出来事が、それからの俺の全ての行動を決定づけた事だけは覚えている。
―――
「視察ゥ?俺が?」
「面倒だろうが仕方ない。開発だけやるわけにもいかんのだ。全く、何で私まで……」
ラジームがため息を付きながら俺に指示を伝えてきた。本当に白衣以外に外見の印象が少なすぎる、性格があまりよろしくない男だ。
「ちょっと待て、今「何で私まで」つったか?」
「言ったが、それがどうかしたのか?」
「つ、つまりそれ、お前も視察か?」
俺は口から漏れ出す笑気を必死に抑えながらラジームに訊く。
「……お前が人の不幸を喜ぶ人間であることは知っているが、確認させてくれ。お前、私が嫌いなんだろう?」
「当然、クソ嫌いだ。ただ俺の不幸とお前の不幸を天秤にかけて、お前の不幸が勝ったってだけだな。ハハハハハ!」
「ああ、恨めしい。何故こんな人間と同じ代に生まれ、同じ部署に……」
「まぁ、落ち着けよ…フフ…お前も…フフッ」
「笑いながら言うな。後で実験台にしてやろうか?」
「こ、こえー……クッ……ハハハハハ!」
耐えれなくなった。
実のところ、俺はこの後の事を一切考えていなかった。一時楽しかろうと、よくよく考えてみればこの性悪人間と軽く数時間行動を共にしなければならないわけで。
「……で、訊きてぇんだけどよ。視察つったって、何処に行くんだ?」
「『デバッグルーム』。各地の依者を集めておく場所だ」
「はぁ?何だってそこに。あんな趣味の悪い――」
「口を慎め。聞かれたら死ぬぞ」
「死なねぇよ。どうやってこの地位に上がったと思ってんだ」
「媚を売った」
「実力だわクソッタレ」
「お二方!」
不意に、俺達の背後から元気そうな声が聞こえた。
「あ?誰だテメー」
「二人称が安定していないぞ、ヒドロ」
「うっせぇ黙れ。で、誰だ?何の用だ?」
「あ、すみません。僕はアルゲイトと申します。お二方の視察の手伝いをするため、上層部の方々直々に指名されました!」
「指名?どういうことだ?」
「そのままです。フィリーの運転を始めとして、施設の案内や説明をさせていただきます」
「……先程の非礼を詫びよう。よろしく、アルゲイト」
「こちらこそ、よろしくお願いします。あ、ところで、先輩方の名前は聞かされていなくてですね、教えて頂ければ」
「ああ、私はラジーム。この馬鹿はヒドロだ」
「んだとォ?」
「? 何か間違いでも?」
「表出ろ、爆殺してやる」
「断る。さあ、アルゲイト。彼は置いて、さっさと行こうではないか」




