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「オクシー!オクシー!」
〈聞いてます!なんですか?〉
「今から俺の視界情報を送る。眼の前のガキをスキャンしてくれ」
〈何のために?〉
「……カルボーンからの情報だ。先日、この世界に『0ware』が侵入した」
〈なッ…〉
「で、それがこいつに感染したくせえ」
〈い……今すぐ離れてください!戦ってる場合じゃないでしょう!?〉
「お前も知ってんだろ?こいつ、『二神』の一角の欠片持ってんだよ。みすみす逃すわけには行かねえ」
「何を1人でごちゃごちゃと……!“流剣:大瀑布”」
ヒドロと呼ばれたその男は、息を切らしながらも、真上から放たれた仙煌の攻撃を間一髪で回避。
〈ヒドロ!〉
「当たっちゃいねえよ。さっき手痛いのを食らったばっかだからな、これ以上受けようもんならマジで死にかねねぇ」
ヒドロは爆発によって体勢を変え、加速して上昇し追撃に備える。つい先程まであった筈の右足からとめどなく、これから体内を循環する予定だった黄色の液体が溢れ出す。
「あー、あー、センコウ。聞こえてるかは分かんねぇが、これ以上やったら俺は望みを果たせないまま死ぬ羽目になる。つーわけで、あとの事情はリミヤから聞いてくれ。俺はトンズラかまさせてもらう」
「……!待てッ!」
「待ってたまるかよ。守るために戦ってるのに、守るべき相手に殺されるとか洒落になんねぇ」
「逃がすわけ無いだろうが!“流剣:急流”」
切先から水を噴射して急加速。原理は爆噴空走と同じだが、ノズルの役割を果たすのが両足ではなく雫魚の切先ただ一箇所のみであるため、姿勢制御が非常に難しい。
その分加速力は目を見張るものがあり、瞬く間に追いつきヒドロの目の前で
「さっさとしてくれオクシー。マジで死ぬ、マジで死ぬ」
〈急ぎます。5分くらいその場で逃げ回ってください〉
「5分!?5分つったか!?」
ヒドロは通信先に向かって叫んだ、その時。
「……お?」
仙煌の刀が激しく発光した。彼含むプレイヤーは知る由もないが、ヒドロ達はこの意味を、その恐ろしさを身を以て知っている。
「Grade上昇!?このタイミングでか!?」
「“流剣:渦潮”」
急流の勢いを絶やさぬままに、運動エネルギーを全て回転数へ変換。ヒドロの身体に刀が触れたその瞬間、彼の身体はずたずたに引き裂かれた。
「……あー、無理だな、こりゃ」
足は2つずつに、胴体と手は3つずつにそれぞれ切断。ただのプレイヤーならばこの時点で既に息絶えていただろう。
ただの、プレイヤーならば。
〈準備完了〉
「遅えんだよ、普通なら死んでたぜ」
「……首か。首を叩けばお前は死ぬのか?なぁ、ズタズタになっても生きているお前は!!死ぬのか!!」
ヒドロの発言を全く無視し、仙煌は、倒せる確証はないが倒せると確信して雫魚を振り下ろした。殺害に一切の躊躇いもなく、また自分の行いの正当性すらも。全てを忘れ、怒りのままに両断せんと。
不意に、ヒドロの身体が光に包まれる。仙煌が雫魚を当てるよりも早くヒドロは飲み込まれ、刃は消えていく光の中に振り下ろされた。
―――
「ッぶねぇ、マジで死ぬかと思った。実際に戦うと意味分かんねぇな、アレ」
「僕も見ていて肝が冷えましたよ……」
無数のモニターに囲まれた6畳程度の部屋、その隅に置かれたクッションに、ボロボロになったヒドロが光に包まれながら落下した。
「オクシー。一応見てくれ、感染してるかもしれねぇから」
「もししてたら、ノータイムでこの部屋から追い出しますからね?」
「構わねぇよ。そんときゃ『施設』に突っ込んでテロ起こしてやる」
「分かりましたよ。とりあえず今日を終わらせるので、ちょっと待ってくださいね?」




