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SG Ⅰ Soul Tags:Start Signal  作者: Omsick
Day5 継承/決意
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METAMORPHOSE2-1 巨神鬼

「ΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩ」


 攻撃が当たったにもかかわらず、依然体勢を崩さず、再びさっきの鳴き声を繰り返す。


「へぇ、こういう変身の仕方か……」


「……!分析してる場合じゃないです!」


「はっ―――」


 刹那、僕は宙に舞った。高度は街の中心にあるタワーの展望台付近にまで達し、真下には何者かの肩。

 状況からすぐに、こいつが何なのか、僕は直ぐに分かった。これに関しては、記憶はあんまり関係ない。というか、こんなのプレイヤーなら僕に限らず分かって当然だ。

 僕達プレイヤー……とりわけ高ランク帯のプレイヤーは、こいつに何度辛酸を嘗めさせられたか分からない。


「きょ、巨神鬼……!」


 丁度肩の位置にいたから、変身と同時に吹っ飛ばされたのか。


 こっからテレポートしたところで、さっき記憶した位置じゃ踏み潰されて死ぬ。この高さじゃ、多少頑丈に設定されてても間違いなく死ぬ。このままグダグダしてたら、至近距離にいた陽が死ぬ。もしかしたらもう死んでいるかもしれない。

 

「逃げろォォォォォ!!!」


 陽の連絡先を知らない僕は、ありったけの声を振り絞って叫んだ。この高さから通じるとは思ってないが、それでも僅かな希望に賭けて。



 巨神鬼――同試合内で変異体が二体以上倒された際に確率で、四体を超えるとその瞬間に確定で出現する。そもそも変異体が出現しない試合すらあるにも関わらず、変異体が出現しないければまず見られない激レア鬼。その戦闘力は紛れもなく、最強。


「れ、連絡……」


 なりふり構っている暇はない。下手したらあと数分で、ここにいる全員が死ぬ可能性があるのだ。僕が落下しながら仙煌に連絡している間、巨神鬼は丁度目の前にあったビルを引っこ抜き、薙ぎ払った。子供がおもちゃで遊ぶように、軽々と。


「仙煌ッ!」


〈知ってる。今どこ?〉


「巨神鬼の背面!多分あと数秒で地面に……」


〈分かった。直ぐに行く〉


 通信は切れた。

 そうだ、僕が間違っていたんだ。大人しく、仙煌に頼って、変な意地を張らずに守られていればよかったんだ

 僕が……僕が……出しゃばらなければ。


「理宮!手を!」


 仙煌の声だ。僕は言われるがまま手を伸ばした。首だけ動かして確認すると、確かにそこには仙煌がいた。


「安心して……って、あれ、理宮……泣いてる?」


「いや、違う、そんなわけ……」


 僕は目元に手を当てた。確かに、微かに湿っている。

 僕の知らぬ間に僕は泣いていて、僕の知らぬ間に仙煌は強くなっている。僕は何も理解できていない。


 鬼から離れたビルの屋上に、仙煌は僕を送り届けた。


「一つ気になったんだけどさ」


「……何?」


「何であの巨神鬼は、あんな訳の分からないところから唐突に出現した?アラートみたいなのも無かったけど」


「あいつは姿を変える。僕らは氷鬼:重鎧体(フルアーマー)と戦ってたのに、いつの間にか穿孔体(ペネトレーター)、でア(・)レ(・)に変わった」


「んー、巨神鬼より強い鬼なんていないし、流石にそこから変化してくることは無いだろうけど……」


「だったら最初から巨神鬼でいいだろ。そこに何か狙いがあるんじゃ…………」


「分かった。十分警戒しとくよ。理宮はそこで待っててくれ」


 その言葉を最後に、仙煌は飛び立っていった。


「……はは」


 結局、僕は仙煌に頼りっぱなしだった。湧いて出た強敵すら、自分の力で倒せない。


「う…………ぁ」


 どうしようもない声が漏れ出した。やがて積もりに積もった声が僕の喉から決壊して――


「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」


 虚しさが。無力感が。寂しさが。劣等感が。絶えず撹拌され続けた僕の心が、遂に限界を迎えたような気がした。

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