METAMORPHOSE-3 解釈
僕はいつだって脇役だ。仙煌が幾度も、幾多もの拍手を送られる、その横に付随する「オマケ」。
依者であることを自覚し、漸く仙煌に勝てると思った数分後、仙煌も同じ力に目覚めた。そして今や力の差は歴然。しかし彼の人間性は出来上がっていて、恨むこともできない。恨む要素が見つからない。
恨んでしまえば、僕がただの「嫉妬に狂った弱く、浅い人間」であることが浮き彫りになるから。誰がそんな事を認めたいだろう。
仙煌と話すのは楽しかった。話題の引き出しが多く、相槌も面白い。少なくとも、談笑している最中は、劣等感など消え去り、一人の人間として接することができた。
けど、仙煌が何かを成す度に。その度に僕は、やり場のない有害な何かが、心に一滴一滴貯まっていくような気持ちだった。
だから僕は仙煌に何かを成して欲しくない。これは僕の、ただの醜いエゴだ。僕はこの状況を、仙煌無しで打開したい。仙煌さえいなければ、誰だって協力してやる。 仙煌さえいなければ。仙煌さえいなければ。仙煌さえいなければ。仙煌さえいなければ仙煌さえいなければ仙煌さえいなければ仙煌さえいなければ仙煌さえいなければ仙煌さえいなければ仙煌さえいなければ仙煌さえいなければ仙煌さえいなければ―――
―――
不意に現実に引き戻された。僕がどこにいたのか、あの悍ましき「僕の感情」は何だったのか。いや、そんなことを考えている暇なんて無い。思い出せ。今この状況を打開できる策を!僕の記憶から……
その時、ある馬鹿げた発想が頭に強く焼きついた。仙煌のよく分からない能力とは違う、「やってみようと思っても出来ない」部類の。
僕の能力は、「僕の位置を記憶して瞬間移動する」という物。その解釈を、今の解釈を捻じ曲げる。「僕が「そこ」にいた情報を世界に記憶させて、出力させる」物であると。細かく言えば、「僕の記憶を世界に植え付け、出力させる」物だと、そういう解釈に。
僕の今までの人生から「回避」という現象のみを引っ張り出して、僕に対して出力させる。
もしこれが、滅茶苦茶で支離滅裂で荒唐無稽じゃないとすれば―――
〔おめでとう、新スキル獲得だ〕
僕の体が、下へと勝手に動いた。動けると思っていなかった方向へ、動きたかった方向へ。僕は氷鬼の鎧を駆け下り着地。色鬼の拳は風圧を生み出しながら僕がいた場所を通り抜けた。
「っ…ぶな」
見ると、僕の動きの軌跡に、Artsよりも濃いのではと思えるほどの遊力が残留していた。
どうやらこの技は、多量の遊力を消費するらしい。
「連発はできない、か…」
〔来るよ〕
「分かってる。流石にこれなら――」
見てから避けられる!
「陽!」
「はい!」
「色鬼を氷鬼にぶつける!手伝ってくれ!」
多分、心の何処かで思っていた。仙煌がいなくなったことで、漸く僕が「脇役」から逃れられると。
仙煌がいなくなったことで、漸く僕の、僕が主人公の物語を始められると。




