Day5-6 Donut Hole
〔さて、どうする?〕
どうするって、何を?
〔これからの話だよ。君はどうするつもりなんだい?〕
どういうこと?過憶は何が言いたい?
〔まだ分からないかい?仙煌という友人を喧嘩という形で失い、拳という仲間を惨死という形で失い、その仇を自分でぶっ殺した。今の君は「虚無」だ。君の心は分かってる。君は今、脱出すらも求めてはいない。現状唯一の仲間である翼の存在を思い出すこともない〕
僕が……空っぽ……。
〔そう、空っぽ。穴ぼこ。普通こんなダメージを負うようなことは無いんだけど、なんでだろうね……何かに、侵されてる感じ。僕は君とは同じようで別の存在だから分かるけど……当事者である君に理解することは難しいかな〕
何?喧嘩売ってる?
〔まさか!憑者が依者を苦しめるなんてあるわけないだろ?僕は君を心配してるんだ。遠い目的もなければ近い目標もない。おまけに得体の知れない何かが君の周りを這いずり回ってるときた。こんな訳の分からない場所で、訳も分からず、訳の分からない存在に怯えるのは御免だろ?〕
僕は答えない。確かに過憶の言うことは一理ある。けど今の僕は、どうにも物事をポジティブに考えられなくなっているらしい。何が僕をそうさせてるのかは分からないけど、悪意を持った何かが僕の腹の、心の、脳の、体の隅々で犇めいている感じがする。
過憶に言われて確信した。この施設には、人智を超えた“わるいもの”が詰まっている。
―――
気持ちの折り合いがついたわけじゃないけど、ある程度は落ち着くことができた。さて、これからどうしようか。とりあえず翼を探すべきなんだろうけど……
「わぁぁぁ!助けてくれ!」
後方から声が聞こえた。人の声を真似する魔物の類かと思い一時は無視を試みたものの、僕の善性がそうさせなかった。結局、僕の「善性」と「理性」の衝突の末、勝利した「善性」に身を預けることとなった。
結論から言えば魔物ではなかった。バイクでも自転車でもない二輪の何かに乗り、こちらに向かって爆走している少年だった。恐らく年齢は最高でも同年代、下手すれば3つは年下であろう少年。紺色のTシャツを着ており、幼さの残る顔立ち。あと、強い憑者のオーラみたいなものを感じる。
〔お、君も感じられるようになったかい?強者のオーラってやつをさ〕
これだけ歪な環境にいれば、歪な方向へ歪な成長を遂げてもおかしくないからね。特別な訓練をしたわけじゃないけれども、感じられるようになったことは何も不思議じゃない。
〔これは僕の推測だけどね……多分彼、Grade自体はそんなに高くないよ。ただ憑者が相当強いっていうのと、どうやらかなり絆ってやつが強いらしい〕
絆?え、絆?憑者と依者の関係に絆って関係あるの?
〔大アリだよ。漫画とかでもよくあるじゃん?「絆が僕を強くする!」ってやつ。思い込みの場合も多々あるけど、憑者サイドからすりゃ立派な強化要素だ。心で繋がってる方がこっちもサポートがしやすい〕
へぇ、なら憑者とのコミュニケーションも重要なわけだ。
……じゃ、コミュニケーションの一環として過憶に質問させてくれ。
〔なんだい?〕
アイツ、どれくらい強い?
〔……ざっと250FPS。数値としては、君が全力で頭を回してようやく勝てるレベルかな〕




