Day5-5 ノンストップ
〔ときに、主よ〕
何、急に。力鬼と氷鬼2体を相手取ってる時にする話なら聞くけど。
〔力鬼と氷鬼2体を相手取っている時にする話では……あるな〕
あるんだ。じゃあいいよ、話して。
僕は氷鬼のビームを掻い潜りながら、意識を凪に向けた。
〔……理宮の話だ〕
あー終了。重要っちゃ重要だけど今じゃない。後にしてくれ。
僕は地面に強く打ち付けられた拳を駆け上がり流河拳を撃ち込む。続いて流刀雫魚を生成し、余った左手で逆手持ち。ナイフを扱うかの如く横に振り、首を切断。
別に首の切断に意味がある訳ではない。鬼という名前だが、別に日光に当たっても死なないし、人間を食ったりはしない。ただなんとなく、クリティカルになりそうだったから斬っただけの話だ。
クリティカルにはならなかったが。
「はい次ッ!」
切った頭を両足で蹴り飛ばし、その勢いで氷鬼にも斬りかかる。
「水の呼――」
〔言わせんぞ〕
途中で雫魚を両手持ちに替え、完全に振り下ろす体勢に入った。多分、剣道の達人が鼻で笑うような、隙だらけの体勢。攻撃を食らえばひとたまりもない。
そう、攻撃を食らえばひとたまりもないのだ。
「……ヤバい」
氷鬼が手にエネルギーを溜めている。ビームタイプの氷鬼は特定の部位から、相手を凍結させるビームを放てる。威力は掌、指、眼の順に高く、特に掌から撃ち出される青白色の鮮やかなビームは、理論上最強の装備で挑んでも50ダメージは食らう。
〔主!!何をやっている!?〕
僕も分からない。ただ何となく、行ける気がしたんだけど…………ああ、いや、行ける。まだ全然切り抜けられるし、倒せる。僕の予想が正しければ。
ジェットパック。水の噴射で空を飛べる装置。身体が水になった今なら、身体の一部を使うことで飛べるようになるのではないか。
「……“流河拳派生:水流移動”」
いつも通り、口に出して唱える。足から水を噴き出すようなイメージを頭に浮かべ。
「動けッ……!」
―――気づくと、僕は宙を舞っていた。吹っ飛ばされたんじゃない、ビームにそんなノックバック効果は付いてない。
紛れもなく水流の放射で、僕は今、飛んでいる。
「……ははっ!」
すごい、すごいすごいすごい!
空を駆けると、地上における制約が全て消えたように感じる。それに足から噴き出す水が、僅かに脹脛の辺りにかかって気持ちいい。
「行ける……これなら」
そのまま上へ上へと上昇し、付近のビルを俯瞰できるようになったあたりで急降下した。
ねえ、凪。
〔どうした?〕
当たり前だけど、刀って拳じゃないじゃん。
〔そうだな〕
この固有装具で使える技に、何か名前ってあったりする?
〔……そもそも、固有装具の解放まで漕ぎ着けた人間なぞ殆どいない。激川という者が、我の知る限り唯一の、あの刀を手にした依者だ。奴は技名などつけん。「無言でキメるのがカッコいーんだよ」などと謳っていたな〕
じゃ、勝手に付けても良いのか。いい感じの名称を思いつくのなんざ簡単だ。ひとまず流河拳に寄せれば良い。
「“流剣:墜天”」




