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SG Ⅰ Soul Tags:Start Signal  作者: Omsick
Day5 継承/決意
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27/53

Day5-1 Arts②

 時刻は24時間制における4時。


「……え、出れるのこれ」


 興味本位でドアの前に立つと、開いた。


「……大丈夫?これ出たら死なない?」


 僕はChatを開いた。UIは普段僕らが使っているツールと殆ど同様の物で、仙煌のアイコンと……恐らく拳の物であろうアイコンが縦に並んでいる。名前はそれぞれ「仙煌」「Ken」。……クラスに何人かいるんだ、名前アルファベットにしてるやつ。

 アイコンはそれぞれ、僕達がショッピングモールに行った時に撮った写真、空手の道着。パンチメインの戦闘はそこから来ているのかもしれない。で、まぁ問題はそこじゃなくて。


 一番下に、真っ黒なアイコンがある。「質問受付箱」の名前のアカウント……運営の相談窓口だろう。ここに打ち込んだら、何が起こるか分かったりするのだろうか。


「じゃ、使ってみるか」


 キーボードの操作性は変わってない。フリック反転もしてないし、背景画像もまさしく僕が使っていた物だ。辞書登録も生きてる。


「……よし」


 外出可能時間についての質問を送信、即時返信。


「はっや!監視されてる?……って、あくまでゲームだもんな。そのくらいは出来るか」


 返信を読んでみる。


〈外出パスさえ所持していれば、如何なる時間帯でも、それを利用して出ることが可能です。外出パスは、売店にてお買い求めいただけます〉


 クソ物価のこの空間で買う外出パス……一体いくらするのか。


「1円=50C……で、外出パスが1枚10000Cと……200円?」


 思ってたより断然安かった。これなら余裕だ。僕は無人のレジにスマホをかざし、ホテルを出た。



 ―――



「んでよ……Artsを教えて欲しいつったって、お前遊力操作まともにできんのか?」


 僕は今、拳とジムに来ていた。


「遊力操作……って、何?」


「あっちゃー……」


 拳が頭を抱えた。


「遊力操作ってのは名前の通り、体の遊力を操作することだ。例えば攻撃の時、腕に遊力を集中させれば威力を上げられる。防御の時、当たりそうなところにあらかじめ遊力を集めておけば、ダメージを抑えられる」


「で、Artsは?」


「俺が独自に編み出した、とにかくコンボを繋げるための技術だ。防御技はない、攻撃技と予備動作のみで固めた」


「フルアタ構成?脳筋じゃん……」


「知るかよ。……で、仙煌はいないのか?」


「ああ、最初から呼んでない」


 見るからに疑問符を浮かべてそうな拳。


「……一応、理由を聞いてもいいか?」


「こんなの教えなくたって、仙煌はどうにかできる。教える必要なんてない……」


「お前……」


 拳が形相を変えた。


「お前今、「こんなの」つったか?」


「あ、いや!Artsを馬鹿にするつもりとかそう言うのじゃなくて、ただ……」

 僕はとっくに認めている。仙煌へのコンプレックスがあることを。


「仙煌に出来ないことをやりたかった……Artsを使えなくても、僕がいなくなっても、仙煌は一人でどうにかする。それが…………嫌なんだ」


「…………悪いが」


 間をおいて、拳が口を開いた。


「既に仙煌は遊力操作を身につけている」


「……まぁ、そんなことだろうと思ったよ。手が光ってたのもそういうことでしょ?」


「ああ…………」


 僕は膝をついた。


「…………それでも、いい。僕はこのまま……仙煌にくっつくだけの存在として終わりたくない。生き残るために…………僕に、遊力操作を教えてくれ!」

 僕は、ついた膝から太もも、そして上半身でZの形を作るような、恐らく形としては理想的な土下座をした。「えーと…………だな」と、拳は困惑の声を漏らした。


「まず顔上げろ。お前は今、二つの間違いを犯している」


「お前は今、二つの間違いを犯している」


 拳はピースサインを作り、2を示す。


「二つ?」


「まず一つ。Artsを教える、つったって、遊力操作ができねえやつに教えんのは無理だ。水に潜れねえやつにバタフライを教えられるか?」


「泳ぐ以前の問題だった……」


「悪い、水に潜れねえは言い過ぎた。……なんつーか、簡単に言うとArtsは、「遊力を一点に集める」ってのを高速で繰り返してるんだ。スキルツリーで例えるなら、お前は必須スキルを解放していないんだよ」


「前提となる能力が欠けてる……」


「そういうことだ。そんで二つ目、俺は誰かに物を教えたことがねえから、初めから聞く相手を間違ってる。仙煌ならそこんとこいい感じにどうにかしてくれんじゃねえのか?」


 …………拳は、大きな勘違いをしている。


「仙煌は……」


「ん?」


「仙煌は、教えるのが下手なんだよ!大抵のことは気付いたら出来てるんだ!感覚に頼ってるから、理論的に説明が出来ないんだよ!」


「あー……」


 心当たりがありそうな顔。僕も「なんでそんなに記憶力がいいのか」と言われると答えることができない以上、仙煌を責め立てることはできないけど。


「つったって俺も感覚派だからな……なんつーか……手に血液を集める感じ、とでも言えばいいのか?」


「手に…………血液を…………」


「そうだ。遊力は血液みたいに体中を満遍なく循環し、覆っている。その血液を場合に応じて、適切な部位に集めるのが遊力操作だと、俺は思っている」


「集める、ね」


 僕は右手を逆手で突き出し、目を瞑って力を込めた。心を鎮めて、深呼吸しながら。


「最初はゆっくりでいい。とにかく意識を逸らすな」


 手に、何かが上ってきた。僕は再び握り拳に力を込めた。目を開いて右に目を移すと、僕の拳は緑色に光っていた。

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