Day4-5 連戦
背負ったまま戦うのは無理だ。僕は盾になれない……なので、近くのビルの窓を蹴破ってそこに安置してきた。
後は簡単。切り刻むだけ……いや、待て。
「∅∆∃⊆ς∟∟Εφφφφφφφφ」
僕の身体は物理攻撃が通用しないだけ。重力を一点集中させるミニブラックホールはただのデバフ技である以上、僕もその影響を受けてしまうはずだ。
仮にこの身体が物理攻撃無効ではなくダメージカット100%だった場合、ただの即死判定をぶつけてくる超重圧砲を耐えることは出来ない。
「……無効か即死か、二分の一。流刀雫魚でどうにか―――」
「邪魔だ、どけ!」
声が聞こえるとともに、重力体が僕のいる方向へよろけた。
「えーっと……誰?」
「今それ必要か?倒してからでいいだろ」
声の主……便宜上Aと呼称しよう。Aはどうやら重力体の死角から蹴りをかましたらしく、さらに立て続けに攻撃を加えた。
「“嵐旋脚:突風”!」
ゴッ、と鈍い音が鳴る。
「何やってんだ!お前も攻撃しろ!」
「あ、そうか」
僕は刀の使い方をよく知らない。なので、とりあえず接近してみた。
〔固有武器は必ず何かしらの癖がある。主のそれも例外ではない〕
別に何も思わないよ。癖がないなんて面白くないから。
〔雫魚の「癖」は2つ。ひとまず重要なのは「鍔に近づけば近づくほど威力が増す」こと。もう一つはスキルがない今の段階では気にしなくていい〕
裏を返せば、切先に近づけば近づくほど威力が弱まるということ。だとすれば何故、距離を取っていた隕石体を一撃で倒せたのか疑問だけど。
ってか、これがあるなら“流河拳”の意味無くない?
〔相応に威力は上がる。雫魚の装備中に撃てばさらに威力は上乗せされる。何ら問題はない〕
そっかそっか。まぁ、普通に斬ったほうが早いか。
さっきも言ったが刀の扱い方はよく知らない。達人が見たら引っ叩いてきそうなやり方で、僕は攻撃した。
「ちょっとそこ退いてて……」
「わーった」
Aは困惑しながらも、重力体の頭を蹴って離れ……られるわけではなかった。重力体の足元に、空間の歪みが生じている。
行動阻害技、ミニブラックホールのそれだ。
「重っ!ブラックホール来たな?」
「クソッ……もういいや、これで倒せれば!」
僕は刀を思い切り、かかっている重力に身を任せ、力いっぱいに振り下ろした。
「なんだその武器!?水?」
「僕もよく知らない」
答えてから刀を振った途端、頭の中で何かが弾けた。
「痛っ……なにこれ」
〔遊力不足だ、仙煌!〕
今この局面で!?そもそも切れるもんなの?
〔自動回復だ、時間は掛からん。だが、このままではーー〕
「うらァ!」
周囲の重力を一点に集中させるミニブラックホール。原作のゲームにおいては。これはチャンス行動だったりする。発動時に、重力体周りのエネルギーを全てミニブラックホールの一点に集めるため、効果時間中はプレイヤーへの行動制限が無くなるのだ。
Aは勢いをそのままに、貫くような蹴りを入れた。しかし、超重圧砲待機状態の重力体はスーパーアーマー持ち。足がズレることすら無いままだった。
「<<∇∇∇∇∇∇」
「溜めが終わったぞ!」
「λλλλλλλΕΕΕΕΕΕ」
空間を歪めるほどの、巨大な重力の塊となった拳が僕に迫ってきた。
この時、確信した。
僕は少なくとも、純粋な攻撃によって死ぬことは絶対に無いと。
「ゴッ」、という鈍い音。そして「ばっしゃぁぁん!」という巨大な水音。
「血じゃない……水!?」
Aの声がした。気付けば攻撃は終わっていた。
「あーはいはい……そうですかそうですか」
超重圧砲の炸裂とともにミニブラックホールが終了。システム通りだ。
「実験台になってくれてどうもありがとうございますね……!」
僕は立ち上がり、不発だった技を決めた。
「技名は決まってないから便宜上だけど……大瀑布」
両断され、割れたように倒れる重力体を背景に、僕はAの名前を聞いた。
「じゃ、戦い終わったから聞こうか。君、名前は?」
「朴牧翼。お前は?」
「恵流仙こ――」
「あー!理宮が言ってた奴か!」
「……パーティメンバー?」
「そうだ」
「じゃ……なんで今日来なかったの?」
「単純に迷ったんだよ……まあ、何はともあれクリアだ。また明日、同じ場所に集まるぞ」
「来なかったのそっちなのに……」




