Day4-2 一時撤退
「拳!なんで!?」
「なんでも何も、聞き覚えのある声がしたんでな。そこの青い遊力を纏ったお前……理宮から聞いたぞ」
僕の前にいる仙煌を一瞥し、続いて力鬼:重力体を睨みつけた。
「奴は動きが鈍い、だが周囲を―――」
「知ってるからわざわざ説明しなくてもいいよ。僕らプレイヤーだから」
力鬼:重力体。動きが鈍いが、周囲五メートルのプレイヤーの動きも同時に鈍くする。また一点に重力を集中させてその地点のプレイヤーの動きを止める技、ミニブラックホールがある。そのため遠距離から戦うのが正攻法だ。
けど今この場に遠距離攻撃持ちはいない。仙煌の能力が水だし、水圧カッターみたいなものが発動すれば……。
「……違う」
仙煌に頼るだけじゃダメだ。これ以上Gradeを上げるわけにもいかない。ここからは、僕が仙煌を先導しなきゃいけない。
後方には隕石体、前方には重力体。隕石体にはまだ補足されていないし、仮に見つかっていたとしても隕石体なら攻撃を避けるのは簡単。
「仙煌、拳。重力体から離れる。どうせ隕石体には見つかるから、別の狭い場所に誘導してそこでハメ殺すんだ」
「……理宮がそう言うなら」
「賛成だ。ところで理宮、遊力操作はできるか?」
「出来ない。僕は仙煌みたいに天才じゃないから……」
「まぁ、そうだろうな。存在を知ってからものの数分でほぼ完璧に会得するとか、とんだ化け物だしよ」
拳は僕に背を向けた。
「俺に乗れ。ただ憑者を使うだけじゃ、速度は出せねえからな」
「わ、分かった」
仙煌と拳は遊力を足に集中させ、走り出した。
「で、理宮。ハメ殺すって言っても、そんなことできる場所限られてるでしょ?」
「あーあれ?嘘だよ」
「え?」
「は!?」
走りながら2人が疑惑の眼差しを向けてくる。
「どういう事だ!?」
「仙煌なら僕の意図を汲み取れるだろうけど、関係が浅い君を、ほとんど賭けみたいな僕の作戦で動かすのは無理だと判断した。で、咄嗟に嘘をついた」
「じゃ、どうするんだ?もう気づかれてるぞ?」
彼らから見たら僕は余裕ぶってるように見えただろうが、内心は全くそんなことない。今立てた作戦は、作戦と言うにはあまりにもギャンブル過ぎる。
「まず一つ。隕石体にはメテオダッシュがある以上、この速度じゃ攻撃範囲からは逃れられない」
メテオダッシュというのは、隕石に乗って移動
するふざけた技のこと。隕石体はこの他に三つほど技があり、いずれも範囲かダメージのどちらかが非常に大きいものだった。
「そして二つ、隕石体ならともかく、重力体に喧嘩を売るのははっきり言って無謀だ。二人とも、ここに来る前に、単独であいつ倒したことある?」
「すげえ運が良けりゃ倒せるな。あっても二回とかしか倒せたことないが」
「僕も結構頑張らないと倒せないな。倒せそうなら積極的に挑んだりはしてるけど……」
もう仙煌はダメかも知れない。
「……まぁ、仙煌は上手過ぎるから例外として、ゲームでそれほど強かった敵が現実に出てきて倒せるわけが無い。唯一希望があるとすれば、仙煌が拳と戦った時に発生した謎現象“液状化”だけど、どこまで無力化できるのか分からない以上あまり期待はできない」
僕は間を置いてから言った。
「仙煌の“液状化”が出せなくなるまでに、三人で隕石体を叩き続ける。ヒーラーは無しだ、仙煌と拳、僕のゴリ押しで潰す」




