Day4-1 WARNING!! WARNING!!!
「やめろ!頼む……ゔあああああ!!!!」
「もう……やめ……」
「どうして……こんな……あ゙」
重苦しい阿鼻叫喚が僕の脳を何度も殴りつける。
「翼……」
足はへし折られ、自慢の俊足は発揮できない。
「拳……」
遊力で攻撃をガードしようにも、相手の力が強すぎて無意味。
そして、僕にも攻撃が来た。
僕という存在の中で最も優れている、人体のデータベースである脳。それが収納される「頭」をめがけて―――。
「――――あ゙」
勢いよく僕は飛び起きた。
「……はは、ひっどい夢」
絵に描いたような夢オチ。でもこういうのは大抵正夢になるんだよな……勘弁して欲しい。
僕はついこの間まで、死と隣り合わせって感覚が想像できなかったのに、むしろそれに慣れつつある自分に驚いていた。
「……朝食、食べるか……」
朝食が出されるホールにて。
「今日……だね」
「うん」
仙煌も緊張しているのか、テンションが低い。心なしか、受け答えもぎこちないように思える。
「……箸、全然進んでないよ」
「そりゃそうでしょ……これから何が起こるか分かったもんじゃないんだから。逆に理宮はなんでそんなに食べられるの?」
いつもなら胃の容量をオーバーするくらい食べる魚も、今日の卓に並ぶ量はその四分の一程度。
「これでも少ない方なんだけどな……昨日の夜にあんまり食べなかったからかな」
要は昨日の空腹に今日対処している。エネルギーは幾らあってもいいし。というか何故、昨日食欲がなかったのかが謎だった。
今日の夜、ご飯を食べることを目的にしよう。生き残っても瀕死じゃ意味が無い。ちゃんとご飯を食べられる体で、僕は生き残りたい。
―――
外に出て、仙煌と共に約束の場所へと向かった。昨日まで明るかった空は、まるでこれから起こることを示すように、黄昏色に染まっていた。
この空が示す単語――逢魔が時に違わず、街のあちこちに鬼という魔物が跋扈していた。
「酷いな……」
見渡す限り、どいつもこいつも上級鬼ばっかりだ。力鬼、氷鬼、増鬼……え?
無数の鬼共の中に1体、明らかにヤバそうなオーラを放っているのがいた。姿形は力鬼に近いのだが、その背には巨大な岩の様なものがある。
僕達は、絶対にそれを見たことがある。何度辛酸を舐めさせられたことか。
「嘘だ……じゃあ、もう……」
変異体。試合中稀に出現する、既存の鬼の強化形態。一種類の鬼につき、一つから四つまで変異体が用意されており、とりわけ力鬼の変異体は、強いという言葉で片付けるにはあまりにも理不尽な強さをしている。
ただ、それもあくまでゲーム内の話。作中のキャラクター達と僕らの強さが同等な訳が無い。
つまり要約すると「クソ理不尽」ってわけだ。
「岩……力鬼:隕石体か。重力体じゃないだけマシかも」
少なくともこいつに即死攻撃は無い。即死“級”攻撃はあるから全く大丈夫ではないが。
「……仙煌。あいつどうするべき?」
僕が尋ねた。
「どうするもこうするも、あんなの戦わないに限るよ。盾体か俊体ならまだ考えたけどね」
出方を考えよう、と言いながら仙煌が一歩前に足を踏み出したその時。
「……なんかさ、重くない?」
「何が?」
僕が聞き返す。
「いや、なんか……動きが鈍く……」
仙煌の声がだんだん小さくなっていくのがはっきりと分かった。
全てを察したのだろう。仙煌は乱暴に頭を掻きむしりながら、翼に話しかけた。
「理宮。君は逃げてくれ。死ぬのは僕でもいい」
僕が警戒していた力鬼:重力体が、曲がり角から顔を出した。
真っ先に思い浮かんだのは、逃走の二文字。
(死にたくない、死にたくない)
硬まった首の筋肉をどうにかしようともがいていると、どこからか覚えのある声が聞こえた。
「遊力の使い方ってやつを教えてやるよ」
足に赤い光を纏わせながら、声の主――拳は言い放った。




