Day3-1 謝罪と恨み
三日目。難易度がびっくりするほど低い、とても楽な日。明日のために油断させるのが目的なのかと思うほど、普通にクリアできた。
死人ゼロでは無いだろうけど。
むしろ僕としては、昨日の出来事を仙煌に隠し通す方が、難しかった。
「……あれ、理宮。いつも味噌汁飲まないのに」
「あら汁だよ。魚入ってるからセーフ」
「何に対してのセーフなの?」
日数がかかるタイプのデスゲームの食事は大抵、貧相か異様に豪華な食事かの二つ。後者だった場合、死にさえしなければただの快適な世界なわけで。
「このまま、順当にクリアできたらいいんだけど」
この一言を皮切りに、ただの雑談しながらの食事に移行した。
〈5……4……3……2……1……START〉
なあ、過憶。
〔どうしたんだい?〕
一つ聞かせてくれ。どうして君の喋り方はそんなに胡散臭いんだ?
〔返答に困るな。これが素だからどうしようもないんだよ〕
そーか、なら仕方ないな。
僕はホテルを出て、仙煌が言っていたビルに登った。彼が仙煌を殴り飛ばしたなら、相応のFFダメージが入ってるはず。つまり、上手いこと行けば和解できるはずなんだ。まぁ、仙煌の話を全くと言っていいほど聴かなかった人間だからな……会話に応じるかは怪しいけど。
僕は外壁をよじ登って柵に手を伸ばし、屋上に着地した。
僕の推測は、見事に的中した。
屋上には男が佇んでいた。
「……またか……今度は誰だ?」
“また”?ってことは、……仙煌と相対した、Artsとかいう技を使う男?情報も一致してるし。
「君が、僕の友達に手を出した人?」
「先にこちらの質問に答えてもらおうか、お前は誰だ?」
「先にそっちが名乗ってくれない?そうしたら僕は、君への対応を決めるからさ」
喧嘩腰な気もするけど、対応手段は既に仙煌から聞いてる。遊力なるエネルギーを操作できるようになるまでは、ウェポンを駆使して逃げ回るべきだと。
「……それも、そうか。俺は跳跳拳。お前の友人に手を出したのは、多分俺で間違いない」
案外すんなり名乗られた。
「……じゃ、僕も名乗るとしようか。僕は理宮高助、君に親友を、証拠もなく敵だと決めつけられて攻撃された」
僕は跳跳を睨み付けた。
「……確認するけど、君が手を出した僕の親友とは、この場所で相対したのか?」
「そうだ。そして、水のウェポンを持っていた」
強い疑念が確信に変わった。こいつが昨日、仙煌に手を出したイカれ野郎だ。
「待て、別に戦うつもりは無い。ただ俺は、お前の親友に謝りに来たんだ」
「下手な嘘をつくな。」
「嘘じゃねえ。昨日Resultを確認したら、FFダメージが150くらいあったんだ。そこで、俺は初めてあいつが敵じゃないって分かったんだよ」
「……FFダメージ、ねえ」
弁解の手段としては有用だが、この跳跳という男、見た感じ頭が良いとはあまり思えない。
……本当の事を言っている可能性が高いな。
「じゃあ、信じようか。けど、すぐに引き合わせるつもりもない。僕に協力してくれれば、やってあげないこともないけど」
「……なぁ、それは無いんじゃないか?」
跳跳が文句を言いだした。
「全面的に俺が悪いのは認めるが、お前に対して手を出したわけじゃない。その親友が俺に色々言うなら大いに理解できるが、なぜお前が上から目線で命令するんだ?」
「じゃあ、こう考えてくれ。僕と親友は一心同体であると。彼に手を出したとすれば、それは僕に手を出したも同然だ。ただ、君が「直接」手を出したのは仙……親友に対して。だから、僕じゃなく彼に謝る必要がある」
「……分かった。何に協力するかにもよるが、概ね納得した」
交渉成立。僕は跳跳を引き連れて、ビルを飛び降りた。




