Result
こっから回想。
落下した後、僕は彼に再び追い回された。思ったよりダメージは無く、地味な痛みこそあったが走るのに大きな支障は無かった。
「いやおかしいでしょ!敵対するつもりは無いんだって!」
「鬼に人様を投げつけといてよくも……!」
「だから、話聞かずに殴ってきたのはそっちでしょ?僕は自分の身を守ることすら許されないの!?」
男が僕もろとも翔ぶ直前にやったガードは意味を為さなかった。まぁ、ガードが掴み攻撃に弱いっていうのは格ゲーの常、あれもそういうことだったんだろう。
「あー、もう埒が明かない。こういう時はさっさと逃げるに限るっ!」
遊力の移動が役に立たなかったのはあくまでタイミングが悪かったから。覚えた技術そのものが役に立たないわけじゃない。
僕は足に遊力を集中。そのまま全力で地面を蹴り、逃走した。恥なんてあるわけ無い。
「κμδααααααα」
道中、複数体の鬼がいたがそんなもん邪魔でしかない。数体を足蹴にしつつ走っていると、ゲーム終了の通知がされた。
回想、終了。
「……大変だったね」
「本当だよ。意味分かんない奴に絡まれるし」
理宮は、やはり無数の魚を際限なく取り込みながら僕と会話している。
「で、理宮は?どうだったの?」
「え!?あ、いや……まあ、昨日より遥かにマシだったね。なんせ憑者っていう強い味方がいるもんで」
「そっか」
「いや、ていうかさ。なんで勝手にどっか行っちゃうの?僕を連れてってくれてもよくない?」
「……どのみち高所に登る予定だった。だから下手したら理宮は僕と一緒にあの変な男と交戦する羽目になってたかもしれない。理宮は人に手は出せないだろ?」
「まあ、そうなんだけどさ。仙煌に付いてった方がこっちとしても安心感があるんだよ。コバンザメみたいって言われたらそれまでだけどさ」
やけに自虐的に理宮は言う。別にそんなこと思ってないのに。
「……ごちそうさまでした。やっぱこのホテルの魚、異様に美味いんだよな……」
呟きながら、理宮は部屋へと帰っていった。
「じゃ、僕もそろそろ」
一汁三菜、バランスの取れた食事を終えて、僕も部屋へ向かった。
今日は碌にスコアを稼げなかった。先に手を出した、どころか殺しにかかってきたのはあっちだし、次に会って一発殴っても罰は当たらないと思う。
〈Loading……〉
千回は見た、あの円を描くアニメーションが中心に表示されている。数秒後、僕の成績が表示された。
「与ダメージ1800、討伐数:6、移動距離……へえ、こんなのまであるんだ」
一日目はスコアしか眼中になかったから、細部まで見るのは今日が初めてだった。
「FFダメージ50……多分あれだろうな……」
ぶつけた際にダメージが入ってしまったか。ただ、今のところFFでペナルティがあるかは分からない。
「さて、肝心のスコアは……1200か」
収入は期待できそうにない。恐らく脱出にもさほど近付いていない。
……ところでさ、凪。
〔呼んだか?〕
僕が液体になったあの現象について説明をお願いしたいんだけど。どういうこと?
〔うーむ、説明が難しいのだが。まず、憑者は依者に融合することで強化を行っている〕
融合?したところで、足すものが無くない?筋肉とか。
〔憑者は遊力の塊だ。筋肉量は増えない〕
……なるほど。で、結局なんで急に強くなったわけ?融合が強まった、とか?
〔察しがいいな。融合には段階があるのだ。主は先程、2段階目に突入したのだ〕
ああ、レベル制ってことね。
〔その表現でも間違ってはないが、これには別の名称が存在する。Gradeという名称がな〕
Grade……等級、階級とかかな。似たようなもんか。
〔主は今Grade:Ⅱ。その適応能力が発揮され続ければ、いずれは……〕
いずれは……何?
〔いいや、何でもない。明日に備え、早く寝ろ〕
……まぁ、分かった。
隠された気がしたものの、僕は気にせずそのまま眠りについた。




