Day2-3 人としての終わり
明らかに人間とは思えない跳躍力。作中ではっきりと高さが明言された訳では無いが、ランドマークの頂点と目線の高さが等しくなるくらいには跳び上がっていた。
「……わかった、抵抗しないからここから降ろしてくれ」
「出来ねえ、助けて欲しい故の嘘って線もあるからな。敵を信用する程馬鹿じゃねえ」
「だから敵じゃないって何度言えば……ってか、このまま落ちれば君もただじゃ済まないけど!?」
「お前は死ぬが、俺は生き残る可能性もある。どっちがマシかって話だよ」
男は振りかぶった。
まずい……こいつ、さっさとトドメを刺すつもりだ!
脳裏によぎる、死という単語。ここまで怖いものだとは思いもしなかった。チープな表現だろうが、そもそも普通に生きていればこの感情を表現する機会などない。巡り合ったことがないのだ。
心拍数が上がっているのが分かる。
「……」
上がった右腕には随分と肥大化した赤いオーラ、恐らく遊力を限界まで集めているのだろう。
「Arts―――」
覚悟なんて無かった。まさか別のプレイヤーに殺されるなんて―――
〈プレイヤーNo.568、恵流仙煌。Gradeの上昇を確認しました〉
突如としてアナウンスが入った。
「F10:墜拳撃!!」
不思議と痛みは感じなかった。
「なっ……!?」
〔……主よ、最早適応能力などの次元ではない。主は……主は……〕
彼の拳は僕の身体をすり抜けた。いや、僕の身体に沈んだ、という方が適切だろう。
さっきも言ったが痛みはない。何かが当たっている、という感じはするが。
「なんだ、その都合のいい能力はよ……!」
「ツッコむのは後にしよう。僕だってよく分かってないんだからさ」
僕は顔面を掴み、空中での上下を入れ替えた。
「殺す気は一切無い。戦う気もない。だけど、死なないように身を守る気はある。みすみす殺されはしないよ」
遥か上から目を凝らし、なるべく高耐久の鬼の居場所を探す。
「君を今から鬼にぶつける。多分君はスコアを貰えるし、僕は逃げれる。WIN-WINだ」
「させ……るかァ!」
「君に拒否権は無い!僕だって無理矢理戦いを挑まれてるんだ。敵じゃないと何度言えば君は信じる!?」
「何度言われても信じねェよ!」
「だろうね!だからだよ!」
男の服を掴み、捉えた鬼に向かって投げつけた。
「吹っ飛べェェ!!」
男は鬼に見事にヒット。被弾した鬼は特に装甲なども付けてなさそうだから、男にダメージが行くこともないだろう。鬼は男もろとも倒れ込み、砂埃を上げた。
「…………さて、こっからどうしようか」
ねえ、凪って水属性でしょ?
〔ああ〕
さっき身体が水になってた気がするんだけど、心当たりない?何かした?
〔私は何もしていない。説明が面倒なのだが、おおよそ訊きたい事は予測できる。結論から言えば、普通にそのまま落ちるべきだ〕
落下ダメージ喰らうけど大丈夫なの?
〔案ずるな、今主の体は強化されている。まさか体力の4/5を一気に削られることなどは無いだろう〕
…………信じるかぁ。
僕は身を委ねてそのまま落下した。一応、足から着地できるように努力はしたけど。




