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SG Ⅰ Soul Tags:Start Signal  作者: Omsick
Day2 遊力操作
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10/12

Day2-2 Arts

 僕は確かに、今日と明日は簡単なゲームだったと語った。それは確かに間違ってない。

 ただ開始前のトラブルが最悪だっただけで。



〈まもなくゲームが始まります。皆様、速やかにホテルを出て、準備をしてください。開始時刻は、10:30です〉


 案内を受けて、僕はホテルを後にした。まあ、当たり前というか、見慣れない景色が広がっている。これでもバトル鬼ごっこのフィールドは分かっているはずだが、ホテルやその他の建物はあくまで背景であってゲームには関わってこない。

 つまり僕はホテルの位置を覚えているわけではない。結構やり込んでいたはずなのだが、ここが何処か分からない。


「……まぁ、とりあえず高所取っとけばなんとかなるでしょ」


 憑者による身体能力ブーストで、ホテルと真隣のビルの壁を交互に三角飛び。難なく僕は屋上にたどり着いた。

 立っていたのは、一人の男。僕と同い年くらいだろうか。


「……」


 男が尋ねてきた。


「……お前、鬼か?」


「え……?いや、普通に違っ――」


 男は無言で地を蹴り、拳を突き出してきた。


「あっぶな!何急に!」


「一瞬迷ったな?」


「そりゃそうでしょ!あれは躊躇じゃなくて困惑のフリーズだから!」


「後から言い訳なんてな、いくらでも作れるんだよ……」


 凪!こいつも依者?!乗っ取られてたりしない?


〔依者なのは確定だ。だが、我からは憑者が全力で奴を制止しているようにしか見えん……む、合掌したぞ〕


 諦めないでくれよ!


「フーッ……」


 男は前かがみになり、手から赤いオーラを出し始めた。


飛炎(ヒエン)ッ!!」


〔I'll be backとでも言いたげなポーズで、憑者の姿が消えたのが見えたぞ〕


 凪が何か言ったのは聞こえたがそれどころじゃない。


「鬼は……焼き尽くす!」


 火属性っぽいな。水属性ならワンチャン勝てるか?


「“炎追破星(フレイムクラッシュ)”!」


「ええいままよ!“流河拳”ッ!!」


 二つの拳が衝突した。


「僕は敵じゃない!話も聞かずに殴りかかってこないでよ!」


「こちとら目の前で友人が踏み潰されてんだよ!わざわざ俺と同じ場所を選んで接近してきた奴なんて信じられるかクソッタレ!」


「だからってさ……」


〔……必死の説明が見えるな。聴こえていないのか?〕


 じゃあ言ってないのと一緒でしょ!?説明は“説”を“明”確に伝えて初めて成り立つんだから!


「つうか、テメエも依者か?ならコイツを使うしかねえな……“Arts(アーツ)1:拳撃(ブロー)”」


「い"っ!?」


 男の力が急に強くなり、僕は拳を弾かれてしまった。


「“ArtsP2:二連拳撃(ダブルブロー)”」


 左から放たれた二発目の拳は、僕の腹部にクリーンヒット。鋭い痛みが走るが、攻撃は続く。


「“ArtsP3:多重拳撃ラッシュブロー”!!!」


 ラッシュなどと言い始めた。二発でこの体力残量なら正直勝てる気がしない。スマホが手元にあるわけじゃないが、まぁおおよその数値は予想できる。


(……せめて、鬼と戦ってから死にたかったな……)


 僕は敵に身を委ね、覚悟を決めた。




 なんて、大嘘だ。勘違いされたまま殺されるなんて冗談じゃない。


(何も真正面から攻撃を受ける必要はない。一度バトルステージから離脱する)


 後ろ手で柵を掴みジャンプ。そのまま再び三角飛びで勢いを殺しつつ市街地に飛び出した。


「待ちやがれ!逃げるつもりか?」


「いいや逃げないね!どうせ逃げても追ってくるんでしょ?だったらこの場で負かすしか無いじゃん!僕は逃げたいけど!」


「いい度胸してんじゃねえか……“ArtsF2:落蹴撃(コメット)”!」


(……飛び蹴り!)


 着地点を見抜き回避。落下の軌跡は赤く染まっていた。


〔あの男……遊力(ゆうりょく)の扱いが上手いな。攻撃に応じて遊力をピンポイントに凝縮している〕


 遊力?魔力とか呪力とかみたいなやつ?




〔そうだ。攻撃時は遊力を、例えば殴るならば拳に移動させることで威力を底上げできる。そして、奴はその移行が非常にスムーズなのだ。見ただろう?さっきの赤い軌跡を。あれは、奴の遊力が残留したものだ〕


 なるほどね……じゃ、僕も真似してみようか。


〔何……?〕


 身体中に漲ってるエネルギーを、右の拳ただ一点に集める感じで……。


「……おいおい」


〔やはり、主は……〕


 拳は青く光っている。男は赤、僕は青だ。緑なら綺麗に対比になったのに。



〔適応能力が、ずば抜けている〕



 つまるところ、そういうことらしい。今まで何かに対して、特に「嫌い」という感情を抱くことがなかったのも、異物への適応力が高かったことの証明になるのだろうか。



「……俺は遊力操作の習得に半日を要したが、どうやらテメエも長くて一日程度か?随分と早えが、俺の能力には勝てなかったようだなァ!」


「別に張り合うつもりは無いんだけどな……」


「うるせえ!“ArtsK2:急襲(スライド)”」


 男は僕に接近。僕は腕を交差させ、攻撃が来るであろう位置へ一気に遊力を移動。


「“ArtsP9:捕握(ホールド)”」


 違う……打撃じゃない!


「“このまま……翔ぶッ!ArtsF4:飛翔(フライハイ)”!」


 男は足に遊力を集め、空へ飛び出した。

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