監視員の登場
もっと早く動いてくれると思っていたから、発表会当日になるまで引きずるとは思わなかった。
待っていられない。
最初は部長にも告げずにさっさと行こうとしたけど、残されたユイネが混乱するだろうから、部長にだけは部屋を出ることを告げて目的も話した。
話を聞いた部長はあまりの悪質さに眉を寄せた。
そしてユイネのことももちろんだけど、私も目をつけられないかと心配していた。
「俺が代わりに行って何をしているんだと聞きたいところだがな……自分は現場を見ていないからな」
「はい。私はその時のことを忘れていませんよ。詳しく話せます。ユイネが来たらよろしくお願いします」
今日は早めに来たからユイネが来る前に戻って来れると思うけど……念のためいない間のことを部長に任せる。
「しっかりやってこい、何かあれば俺も責任を取る」
あの時の怒りに任せてずんずん足を進めるけど、今から向かうところは本当に居心地の悪いところだ。
「失礼します」
言葉を短く切って、ドアを開ける。
部屋は黒や灰色の家具で統一されていて、重厚な雰囲気を漂わせる。まず部屋の圧力に屈しそうになりながら、ユイネの顔を思い出して自分を奮い立たせた。
「フランカ・スミットです」
「ああ君か。ちょうどいいところに」
部屋の主、アヒム・ババツさんは横に向いていたのをくるりと向き直り薄く笑みを浮かべる。白髪混じりの黒髪に細い銀色のフレームが輝く眼鏡をかけた男性。鋭い視線にこの人が本気を出せば社員をやめさせることができる、という影響力が合わさって、社員からは恐れられていた。
「遅くなって申し訳ない。監視員がほとんど出払っていたり、情報の伝達に手間取ったりしてな……。横のが君たちを守る監視員だ。サンドラ、こちらは護衛対象の指導役だ」
「監視員、サンドラ・ブランカテリです! よろしくお願いします!」
真っ黒な髪に見開かれた黒い目。眉は鋭く上がり、強い意志を解き放つような挨拶だった。
「監視員は二人のことを見ているが、まあ気にしないでくれ」
問いつめるつもりだったのに、来た途端準備が整っていた。目的を砕かれ、はあ……と立ち尽くしていると、行っていいぞ、と退室を促される。
サンドラは私の背後を付いて回る。その圧の強さを気にせずにはいられなかった。
監視員は社内でトラブルがあった際、証拠を押さえたり、対象の人物の身を守る特殊な社員だ。
今までお世話になったことはないけど、こんなにも落ち着かない日々を送るのか……。でもこの圧もやる気がある証拠だ。
ユイネが傷付かないように、そして落ち着いた日常を送るために、なるべく早く解決することを願う。




