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Magier Krieg -マギア・クリーク-   作者: 巻刺 司
第三章
20/21

情報交換は夕暮れの埠頭で

 

 ――港西区、埠頭


『バトルフィールド、解除』


 二人の戦闘によって、破壊された倉庫街が復活していく。


「シアンちゃん、どうしよっか」


「うーん。待つしかないんじゃない? だって、彼女のホームもわからないし。手がかりは喫茶店とここだけだろう?」


 確かに。穂波ちゃんが約束を守ってくれるならば、ここにくる確率が一番高いか。

 

「でも、よく考えたら話し合うには不便なシステムだよね」


「強制ログアウトの致死ダメージまで、与えるからだよ」


「そんなこと言っても、あの場合しょうがなくない? て言うか、このプレイヤーバトルのシステムって倒すか倒されるかまでなの?」


「いや、お互いの同意があれば戦闘終了できるよ」


「お互いの同意かあ。とても手加減できるような状態でもなかったしなあ」


 いろいろ考えたけど、やっぱりしょうがなかったという結論に至ってしまった。

 ここのところ、のんびりもしていられなかったし、海でも眺めながら待ちましょ。


 マギア・クリークに出会ってから少ししかたっていないけど、いろいろあった。

 最初はただのスマホ・アプリだと思っていたのに。

 シアンちゃんと出会って、剣さんとも出会って、VRにログインして……。

 修行して、穂波ちゃんにやられて、また修行して、今度は倒せた。


 気にしないようにしていたけど、穂波ちゃんは私が殺したことになるのか。


 自分の手を見つめ、考える。

 実感はわかなかったけど。


「確かに私が殺した」


 あの子もこんな気持ちだったんだろうか。

 

 直接手で殺したわけではないから、まだよかったのかもしれない。

 でも、トリガーを引いたのは私だ。

 

 彼女の叫び声が頭をよぎる。


 仕方なかった。彼女を止めるにはああするしかなかった。

 でなければ、他の子にも被害が及んだかもしれないんだ。 


 なんだろう、この後味の悪さは。


 いけない。これはゲームなんだ。

 ゲームのプレイヤー同士の戦いであって、殺し合いじゃない。


「穂波ちゃんはなんであんなに必死に勝ちにこだわったんだろうね?」


「さあ。それは本人に聞いてみないとわからないね」


 再び、海を眺め考える。

  

     ◇◇◇


 ――30分後


 海からの生ぬるい風にあおられながら、夕日を見つめていると、背後から人の気配がした。


「やっぱり、まだここにおってくれたか。

 お待たせ、一颯ちゃん」


「穂波ちゃん」

 

「すまんなあ。メタメタにやられたから回復に時間がかかってん。でもほとんどが魔力ダメージだけだったのはよかったらしいで」


「あの」

「あの」


「ごめんね」

「ごめんな」


 二人とも口から出た言葉は同じだった。


「あー、やられちゃったからには、しゃーない。なんでも聞いてや」

 

「えっと、じゃあ、なんでそんなに勝ちにこだわってたの?」


「そうやな。やっぱ話さなあかんよな。聞いてくれるか?」


「うん」


「うちの弟なんやけどな。

 入院してるんや。心臓が悪ーてな。生まれつきってやつや。


 なんでも願いが叶うっていうやろ?

 せめて、こっちの世界でだけでも笑って遊ぶ姿が見たかったんや」


 それだけ、一気に言ってしまうと、穂波ちゃんは黙り込んだ。


 そう、願い事が叶うのは、あくまでこっちの世界なのだ。

 現実にもどれば元に戻ってしまう。


 それでも、願うことは決して悪いことではないのかもしれない。

 強引にでも叶えたいことを目指すのは。


 何も願わないよりは……。

 

 少なくとも私よりは真っ当にゲームをしていた。と思う。


「私が勝ったら、あなたの望みも叶えてあげるわ」


 それは、本心だったのか、それともただ口をついて出てきたのかは私にもわからなかったけれど、でも穂波ちゃんは笑った。


「ええて、あんたはあんたの願いを叶えんさい。

 それに、うちやってまだ負けと決まったわけちゃうで? こっから挽回や。

 でも、プレイヤーキルはもうやめやな。後味が悪いだけや」


「穂波ちゃんが出会ったのって、私が最初?」


「そうやな。ほかのプレイヤーのことはまだわからん。

 あと3人、か……。

 そや、フレンド登録してくれるか?」


「うん。もちろん」


「これで、どこにいても繋がれる。ピンチになったら呼び出してや。

 今回の借りもあるから、いつでも駆け付けたるで」


 一通り情報交換もしたところで、穂波ちゃんとは別れた。

 

 道南区の守り手だということ。向こうにも同じように、さまよえる霊魂から鬼が生まれること。やっぱりクリスタルを落とすような敵とはまだ出会っていないこと。

 

 ただ、一つ違っているのは向こうはホームがポイ・ザ・ラスじゃなくて、ゲームセンターっていうこと。相変わらずVRMMOのモニターって文言は変わっていないんだけど。


 何か違和感がある。


 これは、他のプレイヤーとも会って情報を集めないといけないかもだね。

 だいたい、ゲーム終了の条件とかも教えてもらってないし。


 プレイヤーバトルを誘発する仕組みや、テストには見合わない報酬、MMOテストのくせにログイン人数の少なさも気になる。


 このゲーム、何かおかしいかも。



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