戦禍うは天使と悪魔
――???
「我が国の魔法開発は遅れています。このような方法に頼っていては、よい人材の確保など」
「しかし、子供への影響や世論の反発を考えますと、とても公に出来るものでもありません。第一、世界首脳会議で極秘と決定されたことではないですか」
「そんなことを言っても、各国は秘密裏に魔導士の育成に力を入れているに違いありません」
「例の開発計画はどうなっているか?」
「フェイズ2まで終了、明日からはフェイズ3が開始されるでしょう」
「間に合わなければ意味がない。急げよ」
◇◇◇
――翌日、いつもの喫茶店
「ねえ。知ってる? 一颯ちゃん。マギ・クリは魔導士育成のために国の秘密機関が作ったって噂。今ネットで評判なんだよ」
「えー。なにその話。作り話にしてももう少しヒネリはないの? だいたいスマホのアプリでどうやって魔導士? を育成するっていうの?」
「それは、極秘事項なんだって。ね。面白いと思わない? 異世界からの侵略者とかいたりしてー」
「ただのゲームだよ」
そう、ただのゲームなのだ。たとえVRの世界に行って戦えたとしても。殺し合いをしたとしても……。第一、育成する意味がわからない。いったい何と戦うというのだろう。
◇◇◇
――同日、夜、中央区、ビル屋上
生暖かい夜風が、髪を撫でる。今日も熱帯夜かあ。昼間暑かったせいで水蒸気が上空にたまっている。どんよりと雲がかかっているせいで、星空は見えない。それでも、中央区の摩天楼は煌々と明かりをつけている。
穂波ちゃんとは、最悪の出会い方をしてしまったけれど、でも友達になれた。そう思う。
プレイヤー・バトルが終わらない以上、注意は必要だけど、他の子とも会って話をしないといけない気がする。魔力サーチを使えば探し出せるかもしれない。
サーチ魔法を発動させて様子を見るのが早いか、どうかというタイミングで摩天楼の一部が瓦解した。あれは、バトルの光だ。誰かが鬼と戦っているのか、それともプレイヤー同士なのかはわからないけれど、少なくとも一人とは出会えるはずだ。飛んでいったほうが早そうだ。
現地に着くと戦闘に魅入られてしまった。空中で、戦っているのは、白い甲冑に身を包み天使の羽をもつ子と、同じく甲冑、こちらは漆黒だが、に身を包んだ悪魔の羽をもつ子だった。
白と黒の羽がふわふわと舞っている。
さきほどの爆発はどちらが放ったものなのかはわからないが、今は、白い子は剣で、黒い子は斧で戦っている。白い子は剣と盾で巧みに斧を防いでいて、それを崩そうと黒い子はなおも攻撃を仕掛ける。白い子の近くには孔雀らしき鳥が舞っている。あれがあの子の守護獣だろう。黒い子の方は肩に小さいヤギが乗っている。
空中でお互いが幾度もぶつかり合うがお互い決定打にはならないようだ。どちらかに味方することはできない。しかし間に割って入るには危険すぎる。さて、どうしたものだろうか。
斧が盾ではじかれ少しの間ができた、途端、剣と斧に魔法陣が現れる。白い子の剣から放たれたのは炎の刃だ。巨大な刃はビル群もろとも黒い子を薙ぎ払おうとしていた。対して黒い子の斧から放たれたのはこちらも巨大な、雷だった。
二人の魔法が衝突するとビルは崩れ、街並みも半壊といったところだろうか。さっき遠くから街が崩れたのが見えたのは二人の魔法の衝突によるもののようだった。
風に乗って二人の会話が聞こえてきた。
「ひきなさい。小町。あなたでは私に勝てないわ」
「うるせえ。ヒカリ。そんなこと、やってみなきゃわかんねえ。堕ちるのはそっちだ」
「だいたい、悪魔なんて相変わらず悪趣味ね」
「そっちこそ、天使なんて、正義の味方気取りかあ?」
「私のミカエル様を愚弄するなど!」
「ミカエル様だあ? こっちのルシファーの方が強いに決まってる」
戦っている二人はお互いに知り合いのようだ。それもバトル以前からのような。
「シアンちゃん。ミカエルとルシファーって?」
「ミカエルは大天使、熾天使クラスの上級天使だよ。熾天使っていうのは天使の最上位クラスね。ルシファーはかつて大天使だったけど、堕天して、今は堕天使の長になってる。悪魔って考えてもいいかもね。どっちもかなり戦闘向きだよ」
「白い子はヒカリちゃんって名前だよね? 見たところ『火』属性かな。そして、黒い子が小町ちゃん。見たところ『木』属性ってところか。どうやって介入しようかな」
「介入するつもりなのかい? 危険すぎるよ。一人でも手に負えるかどうかわからないのに、相手が二人なんて」
「だって、このままじゃ、どちらかが倒されるまで戦っちゃうよ。あの二人。知り合い同士なのに、殺しあっちゃいけないよ」
「これはあくまでゲームなんだし、いいんじゃないの?」
「そんな無責任なこと言わないでよ。殺した方も殺された方も死ぬほど苦しいんだから」




