ガチャアイテムは雷の後に
――地下、練習場
先ずは回してみないとね。
『ガチャん』
上級版ガチャを回すと、前回と同じくカプセルが出てきた。カプセルの見た目は前と変わっていない。
「いいかい。開けたら、倒すか、倒されるまでログアウトはできないからね?
それから、敵が強ければ強いほど上位のアイテムが出る確率は上がるけど、あくまで確率論だからね」
ゴクり。
できるだけ、弱くて上位のアイテムが出る敵でありますように……。
「開けるよ」
カプセルを開けると人型の紙が出てきた。前回までの鬼よりも鮮明に形になっていく。今までの敵は何となく輪郭がぼやっとしていたが、今回は完全に人の形になった。垂纓冠からすると平安時代の貴族の恰好だろうか。和服は黒色の単衣を着ていて、笏を持っている。
梅の紋章が左手に浮かび上がっている。なんだろうこの人見たことある気がする。
なんだかとても悲しそうな顔をしている……。
『鬼神クラス、レベル50』
もしかして、菅原道真公?
「鬼神クラスって何? 強いの?」
「そんな悠長なこと言っている暇はないよ。とっとと離れないと……。
よりにもよって神クラスとは最初からなかなか運が悪いというか、いいというか……」
シアンちゃんが私の襟のあたりを口で咥えて引っ張る。
敵が持つ笏の周りになんだかエネルギーが集まっている。
「いいから、早く変身して、防御態勢! 早く!」
シアンちゃんの対応からしてかなりヤバイってことなのね?
「わかったから、引っ張らないで。
Transform、Arms、錫杖、魔力防壁発……」
防壁の発動を待つかどうかというところで、道真公が笏を振ると、同時に電撃が部屋中に広がる。魔法防壁に雷があたったところだけ魔法陣が浮き出る。
「これは倒せたら、いいアイテムが期待できそうだね。倒せればだけど」
ひらひらと笏を振るだけで、轟音とともに雷が乱れ飛んでくる。これって、いつもの防戦一方ってやつじゃない?
「Transform、上級アバター」
よし、これで錫杖で防御しながらでも他の武器が使える。こっちだって応戦しないと。
「レーザー砲門、10門展開!
発射(Firing)!」
雷とレーザーが相殺しあってちょうど道真公と自分の中間くらいの位置で爆発が起こる。一発の雷に10門のレーザーが押し負けている?
「さらに、10門展開!
撃て撃てー!」
10門追加して、20門でようやく、トントンか。これは骨が折れそうね。
「火器管制システム左右に10門ずつ譲渡。
シアンちゃん? 防御の制御任せるわよ!」
両肩には火器管制用の面があるので、左の面の上にシアンちゃんはしがみついている。
今までは立ち止まって雷を撃ってくるだけだった道真公が、ふわりと浮くとこちらに接近してくる。まずい、あの人動けるの?
「菅原道真といえば、弓も刀も得意だよ~」
「だよ~、ってそんな余裕ないじゃない!」
一通り雷撃が止むと、刀へと持ち替えたようだ。あれって、宝剣天國? だっけ?
「こっちも、Arms、換装、ダガー」
こちらもさらに、ダガーを武器化して応戦する。6本のダガーで1本の刀を防ぐのが精一杯だ。
刀とダガーを撃ち合う音だけが、練習場に響く。
道真公が一歩後退したかと思うと、刀は雷を纏った状態へと変化した。接近して零距離でアレを撃つ気なんだろうか。
まずい、と思い、上空へ避難したが、道真公は軌道を変えてこちらへと撃ってきた。自分もろとも練習場の壁が薙ぎ払われた。衝撃波で壁に打ち付けられる。
「うっ、くっ、痛っ」
肩を押さえながら、壁から抜けると、ぼろぼろと壁が崩れる。
「シアンちゃんこれどうやったら倒せるの?」
「さあ? それは僕もわからないよ」
「せめて、弱点とかないの?」
「そんなの、知っていたらとっくに伝えてるよ」
その後も遠距離からの雷撃、近距離からの雷を纏った刀に何度も撃たれる。そのたびに立ち上がってきた。だが、もう二、三発くらったらもたない……。
いくら強くたってなにか秘密があるはず。何度もくらったおかげでだいぶ攻撃にも慣れてきた。
笏から宝剣に持ちかえる瞬間にはわずかだけど隙がある。それから、雷のチャージにもそれなりに時間がかかっている。ということは、笏で雷を撃ってから宝剣に持ち替えさせるところが隙だ。だがその隙に攻撃するためには、遠距離からの雷をかわして、一気に距離を詰めないといけない。
「一つ、やってみますか」
思いついたのは、単純な作戦だ。遠距離の雷をよけられるギリギリの距離まで離れ、雷を撃ったと同時に最大加速で間合いを詰め、零距離で攻撃を打ち込むのだ。錫杖での防御を捨ててダガー6本に切り替える。
「シアンちゃん防御、任せるからね!」
「任された!」
「来たっ、雷撃!」
ギリギリでかわし、フルブーストで飛行し近づくと同時にダガーで攻撃を叩き込む。
「崩れた」
この隙を逃す手はない。回転しながら、6本の腕で斬撃を撃ち続ける。
「ヤバイそろそろカウンターが来るっ」
道真公が刀へと持ち替えている隙に、再びフルブーストで緊急回避する。
遠距離になったおかげでまた笏へと持ち替えている。
「これなら、いけるっ!」
後はこちらが2発いや、3発受ける前にきめられるかどうかだ。
何度かカウンターをくらったものの、ヒットアンドアウェイ戦法で道真公が朧気になるまで削ることができた。
だが、こちらももう後がない。
お互い、あと一撃といったところだろう……。
雷撃をかわして、斬撃を叩き込む。カウンターも無視してひたすら切りつけると……。
道真公が光となって消えていった。
「強かった……。
上級ガチャって皆こんななの?」
「うーん、まあ特に強いのに当たった気もするけど、おおよそこんなかな」
『クリア報酬、三鈷杵をゲットしました』
「三鈷杵って、あれだけ苦労したのに……」
「そんなこと言うもんじゃないよ。それもランク5の道具だよ」
「これってそんなにすごい道具なの?」
「雷を自在にあやつる道具さ。仏のアバターを持つ君にはぴったりだしね」
「これであの子と戦えるかな……」
「うーん。天叢雲剣と戦うってことだよね?
どうだろうな」
「じゃあ、回復したら、もうちょっとやっていくわ」
「えっ……」




