アバター進化は戦闘の後に
『バトルフィールド解除』
レーザー砲を打ちまくって相変わらず焼け野原と化した倉庫街がもとに戻っていく。
『レベルアップ、上級アバターが解放されます』
「上級アバターってなんだろう? シアンちゃん何か知っている?」
「上級アバターっていうのは、まあそのままの意味で今より上位のアバターだよ。君の神様は阿修羅で、特性は3種の武器換装だったけど、上級になれば同時に3種の武器が展開できるよ。腕が6本になるけどね。つまりより阿修羅に近づくってわけ」
「腕が6本ってどういう状態なのかな」
「まあ、そのへんは変身してみればわかるよ。さ、やってみて」
「ノウマク・サマンダ・ボダナン・ガララヤン・ソワカ……、
Transform、上級アバター」
光に包まれたかと思うと、右肩と左肩に防具が取り付けられていく。そこから、機械の腕が生えてきて椀釧【ブレスレット】、臂釧【上腕の飾】が取り付けられていく。
肩から生えている腕の上に機械の面が現れる。
「これって、完全に阿修羅様じゃない?」
「まあ、上級だからねー。より神を具現化した姿へと進化したってことさ。機械の面は管制システムの強化、腕は武器の保持数強化かな」
これで今までの問題は結構カバーされることになる。これまでは、ゲームを楽しんでいた気がするけれど、今はただ純粋に力を試したくなっている。これはまたマギ・クリのゲーム性によるものなんだろうか……。
「魔力サーチ、近くの魔力反応あり、囲まれてる?」
『Oncoming! バトルフィールド設定』
倉庫街からわらわらと白い獣が現れる。さっきのの仲間か何かかな……。
優に20体はいる。これはまた頑張らないとだね。でも、新武装を試すにはちょうどいいか。
また、飛翔するが、白い獣からの波状攻撃にあう。こちらもダガーで応戦するけれど、さばききれない。
「他の4本の腕も使わないと、もったいないよ」
そうか、今は腕が6本あるんだった。これなら、ダガーを6本持つこともできるのか。右手? 3本で防ぎながら、左手でカウンターを入れる。これでも勝てるだろうけど、
レーザーで応戦しようとするが、数が多すぎるし、さっきみたいに分離されても面倒だ。出来るならば、一気に倒してしまいたい。レーザーで焼き尽くすか、滝で一気に倒すか……。
「火器管制オート、レーザー砲20門、魔力追尾」
左右の面がオートで照準合わせをしてくれる。なるほど、これなら多数の敵相手でも戦える。
「発射(Firing!)、撃て撃てー!」
せっかくさっきのバトルフィールド解除で修復された倉庫街がまた焼け野原だ。まあ、しょうがないけど。白い獣達は四散するが、どこまでも追尾するレーザー砲が逃がさない。火器管制の追加制御は思ったよりも使い勝手がいい。
『バトルフィールド解除』
これだけ倒してもクリスタルにはまだ当たらないや。どれだけ稀なんだろうか……。
◇◇◇
――同刻、港西区、ランドマークタワー展望室 【???】
「武器換装システムか。おもろい特性もっとるやん。守護獣はまだそだっとらんみたいやけど。結構強敵になりそうやな。な、フーもそう思うやろ?」
魔力で望遠鏡を動かしながら、同じプレイヤーであろう少女を眺める。
「まあ、穂波の敵じゃないやろうけどな」
「また、そんなん言って、油断は禁物やろ?」
「うん。それがわかっているから穂波は強いんよ」
肩に乗っているフーは私の相方、守護獣でキツネのフーや。もちろんNPCには見えていない。今は省エネも兼ねて通常モードになっているんやけど、進化した姿はうちが乗れるほどの大きさになる。
「観察しとったけど、あいつ何属性選んだんだかわからんやん」
「今回属性技使わんかったしなあ」
「けど、『火』属性強化された、この天叢雲剣の前ではどんな奴も意味ないけどな。さあて、ちょっと挨拶しておきますか」
「プレイヤーバトルは明日からやで?」
「だから、ちょっと挨拶するだけやって」
魔法で窓を通り抜け、タワーの屋上へと飛ぶ。風が強いな。あれだけドンパチやってたら、魔力サーチもなく見つけられるわ。さて、行きますか。
風に乗って埠頭の倉庫街へと最速で飛ぶ。次の瞬間にはふわりと着地し、少女の目の前にいた。
「なあ。あんた、プレイヤーやろ?」
「え? あなた……、誰?」
いきなり目の前にうちが現れたものやから、少女は困惑した顔でこっちを見ている。
向こうとの距離は1メートルとなく、向き合う。
「うちは穂波、あんたと同じマギ・クリのプレイヤーや。この子はフー。よろしゅう頼んます」
あちゃー、いきなりすぎて固まっとる。
「こっちが、挨拶したら、そっちも返すもんやで?」
「こらこら、フー。こっちがいきなりやったんやから、しゃーないやん」
ようやく、状況を飲み込み始めたんだろうか。少女が話し始める。
「あ、えっと、始めまして、私は一颯、越美一颯です」
「そっか、一颯ちゃん言うんか。で、いきなりやけど、一颯ちゃん。負けてくれんか」
同時にTransform、Arms発動、天叢雲剣で切りかかる。とっさに守護獣が防御に入るが、間に合わない。少女の腹部に天叢雲剣が突き刺さる。完全に背中まで貫通したので、剣を抜く。
「え? かっ、はっ」
状況もわからないまま、少女は腹部を抑えて悶え、血を吐き、そして倒れた。少女の周りが血で染まり、やがて光に包まれて、消えた。少女が消えた後には血の跡だけが残った。
「ちょっと、挨拶するつもりやったんやけどなー。今のがかわせんかったならしゃーないな」
「まったく、穂波はいきなりすぎるんや。かわいそうにもう戦えないかもしれないで。あの子」
天叢雲剣の血をふき取るとまた空へと飛び立った。




