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Magier Krieg -マギア・クリーク-   作者: 巻刺 司
第二章
11/21

火鳥を倒すは華飾の滝で


「ピンチってことね」


 ご都合主義な展開ならば、ここで、プレイヤーが乱入してきて倒してくれるんだけど、そんなことは期待できない。でも絶対、何か手があるはず。これは魔法の戦いなんだから、あきらめて心が折れたら、それこそ負けってものだよね。


 手持ちのカードは、煉獄の炎がインストールしてある錫杖と水付加のダガーと、それからスロットが空いている大剣。コンパイル済みの魔法のリストにも、有効なものは無し。今回は魔法を組んでコンパイルしているような隙はなさそうと。

 しまったなあ、こんなことなら魔法を組んでおけばよかった。無事に帰れたら、新しい魔法を作っておこう。そういえば、負けるとどうなるんだろう……。強制ログアウト? だっけ? そこもちゃんと聞いておけばよかったな。


「のんきに考え事している場合じゃないよ。一颯!」


 なおも火鳥(ひどり)が攻撃を仕掛けてくるため、空中で高速でぶつかり合う。こちらの武器はダガーに換装していて、ぶつかり合う瞬間にはしっかりとガードは出来ているけれど、これでは防戦一方、こちらが消耗するだけだ。

 ぶつかると同時に火の粉をまき散らすものだから、周囲一帯がもはや焼け野原と化し始めた。たぶん元に戻るんだろうけど、被害が大きすぎる。

 

 だが、幾度となくぶつかってはいるが、こちらはそれほど消耗していない。むしろ向こうのほうが消耗しているようにも見える。


「そりゃ、こっちは魔力300万だからね。ちょっとやそっとじゃ消耗しないよ」


「ってことは、このまま防御しているだけでも、勝てるってこと?」


「だといいけどね。負けないってだけかな。危なくなったら向こうも逃げるだろうしね」


「そんなあ。逃げられたら、また火事の被害が起きるんでしょう?」


「だろうね。ここで倒しておいたほうがいいよ」


 このままだと、負けないけど、倒せない。戦闘の被害は大きくなる。


「うーん、……まてよ」


「何か思いついたかい?」


「シアンちゃん? 武器の具現化って、魔力でやっているのよね?」


「その通り、だから具現化の分、魔力を消費してるってわけ」


「だったら魔力があれば複数の具現化も出来るってことよね?」


「そうだね。普通は持てる分しか具現化しないけど、君がダガーを2つ具現化してる時点で出来るってわかってるんだろ? そう、2つあって当然とイメージしているからダガーを2つ出せているわけだよ」


 ダガーって投てきにも使われることが、あるとかないとか言われてるよね。投げて消えないんだったら、私の考えていることができるかもしれない。銃とかも武器のうちに入っているんだし、先ず問題ないはず。


 ちょっと、やってみますか……。


「実験その1、えーいっ!」


 『水』属性で強化したダガーを火鳥に向かって投げつける。かわされはしたものの、地面に突き刺さったダガーはちょっとの間だけど消えずに残った。


「やっぱり、思った通り」


「手から離れたところで武器化したままなんて、かなり難易度が高いんだどね。こうもあっさりとやられるとなあ……」


 要するに、武器化はイメージの問題なのだ。Flyだってイメージで出来るんだし、確かにArmsも同じことなのかもしれない。今までは無意識にやっていたけれど……。


「よーし! 実験、その二。

 Arms、ダガー with object ウォーター」


 水属性付加の魔法はインストール済みだから、発動状態での武器化もやっぱり出来るわけだ。


「今度は、魔法発動状態での武器換装かい? それも結構なレベルがいるんだけどな……」


「でいやっ!」


 今回は、火鳥の右の翼にかすった。ダメージはわずかだったんだろうけど。


「よし、最後の実験!

 Arms、ダガー、5本」

 

 ダガー5本が出現するが、もちろん持ちきれないので、残りは地面に向かって落ちていく。だが、それでいい。3本以上でも出せるってことがわかることが重要なのだ。


 今までの実験3つで、確認できたのは、


 1、手を離れても消えない

 2、魔法を付加した状態で武器化できる

 3、複数武器化可能


 よし、これで勝てるかもしれない。イメージするんだ。無数のダガーを操る様子を……。そう水のダガーがまるで滝のように火鳥に向かっていくイメージを……。

 火鳥のちょうど直上になるようにFlyで位置を取る。

 

「Arms、ダガー with object ウォータ、

 マハー・ヴァイプリヤ・ブッダ・アヴァタンサカ、

 ダガーよ滝となれ! Kegon-Falls!」


 空中に無数の魔法陣が出現し、さらにそこからダガーが水を纏った状態で出現する。その数は数百にも及んだ。

 腕を振るうと一気に全てが火鳥めがけて跳んでいく。もちろんいくつかはかわされた、が、かわし切れず首、翼、胴体に水のダガーが突き刺さる。まさに滝と呼ぶにふさわしいダガーの数だった。

 

「魔法発動状態での複数同時武器化なんて……。

 莫大な魔力と繊細なコントロールがいる技なんだけどな。まあ、できちゃったら仕方ないか」


 全身にダガーが刺さった火鳥は、細かい火の粉へと姿を変え、やがてそれも消えた。


『バトルフィールド解除』


 焼け野原にされた後にダガーが降り注ぐという、激しい戦闘となったフィールドも解除と同時にすっかり元通りだ。火鳥が吹き飛ばしたビルも、自分が吹き飛ばした民家も……。


 

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