初期属性は悩みの種
――翌朝
スマホを確認すると、シアンちゃんが元気になっていた。もともと霊体みたいなものだから、ご主人からの魔力供給で回復する。だそうだ。よかった。
◇◇◇
――授業中
昨日は大変だったな。シアンちゃんがのびてしまったから、どこに連れて行ったらいいかかわからず、なすすべもなくさまよった挙句に結局スタート地点のポイ・ザ・ラスに行ってみた。
現実世界と同じように、剣さんがいて、休めば治ることを教えてくれたけれど、守護獣をここまでボロボロにしてはいけないよ。とちょっとお叱りを受けてしまった。これからは気をつけよう。
昨日の爆心地はバトルフィールドが解除されると何事もなかったように、元通りになった。とりあえず、これで心置きなく魔法が使えるわけだから、心配事が一つ減ったわけだ。
でも、あんな街中に鬼が出るなんて……。
これじゃあ、プレイヤー探しなんてやっている場合ではないのかも。でも、プレイヤーとの戦いにはなりたくないしな。でも、挨拶くらいはしておきたい。
本格的なバトルは明日からってことだから、もうちょっとレベルを上げておきたいな。それまでに、どの属性でスタートするかも考えておかないといけない。
そもそもプレイヤーの5人はどうやって出会うようになっているんだろう。蓼浜市の人口は学校で習ったのだと、370万人。そのなかの5人なんて……。
わかっているのは、あとの4人も守護獣を連れているということ。たぶん私と同じく魔力値が大きいこと。それから、マギア・クリークをやっている子ってことか。
子供……、特に小学生に限っていえば18万人。その中でスマホを持っている子供か。だいたい3人に一人くらいは持っているかな。ってことは6万人。それから、港西区の担当は私ってことだから、あとは、中央区、山東区、道南区、河北区に一人ずづかな。各区でみると、1万2千人に一人か。
だめだ。もっとヒントがないと全然絞り込めないや。普通にやってたら、すれ違うことすらないのかも。それよりも会う前にもっとレベルを上げておかないと。
◇◇◇
――放課後、港西区ポイ・ザ・ラス前
「シアンちゃん、身体はもう大丈夫なの?」
どこへ行くあてもないけれど、とりあえず歩き出す。
「それなら、ご心配なく。でもあんな無茶はあまりしないでね。それで、今日はどうするつもりなの?」
「どうしよっかなあ。敵も倒しといたほうがいいだろうし、プレイヤーも探さないとだし。昨日も結構苦戦したし、共闘できればいいんだけどな」
「苦戦というより自爆に近かったけどね。共闘ねぇ……、それでクリスタルが出たらどうするつもりなの? 一度に2つなんて絶対ありえないよ」
「私はとりあえず、勝たなくてもいいって思っているし、一つ目を譲ればいいのかなって」
「のんきだねえ。今日中に初期属性考えないといけないんだよ」
「それもあったね。昨日みたいなのは嫌だからな。『火』属性はなしかな」
『無』属性であれだけの火力だったのだ。『火』属性がついていたら、無事では済まなかったかもしれない。あとは、どうだろう……。
『土』属性は、守りに特化しているし、バトル向きではないからなあ。そういえば他の子はどうするんだろう? 『火』とか『水』は人気がありそうだよね。だとすると、『水』、『土』がそれぞれ相性がいいことになる。そう考えて、そっちを選ぶって可能性もあるしなあ。残りは『木』と『金』かあ。
「まあ、深く悩まなくてもいいよ。クリスタルを使えば属性は後からでも変えられるんだしね」
「でも、それだとクリスタルを消費するんでしょ。確かに勝つ気は今のところないけど、ただ負けるってのもなあ」
武器の方から考えるってのもありかもしれない。今の装備はダガーと錫杖、それに大剣。基本は金属とあと、木製か……。とすると、『金生水』か『木生火』ってなるし。
「ああ、もう堂々巡りでどれがいいかわかんないよ」
「そりゃあ、そうだろうね。全部平等だから、成り立つバランスだからね。まあ今日中だからまだ時間はあるよ」
どこへともなく歩いていたが、この辺りは最近ニュースになっているところだ。
「この辺り、原因不明の火事が多発しているところだ」
「原因不明の火事か、それはまたバトルの匂いがするね」
「それって、また鬼の仕業って……」
「あっ、あそこ何か飛んでる!」
『Oncoming! バトルフィールド設定。半径5キロをフィールド設定』
周囲一帯のNPCが消えていく……。
また、バトルフィールド設定だ。
「Transform、Arms、錫杖!」
空を飛んでいた何かが、火の粉をまき散らしながらこちら目掛けて突っ込んでくる。
「Fly!」
飛びながら地上をみると、何かが突っ込んだ地面が燃えている。炎が集まって鳥のような形になっていく。
「シアンちゃん、あれも鬼なの?」
「鬼っていうか、火鳥だね。火事で亡くなった人と鳥かなにかの霊魂が融合したタイプかな。イタズラ好きの悪ガキでも素体になっているのかな」
「イタズラって……、人が亡くなっているのに」
「本人? はもうその意思はないからね。ただ人を巻き込みたい衝動だけで動いているよ。早く倒さないと!」
炎を纏いながら、こちらに飛んでくる。『水』属性の魔法なら、ダガーにインストールしてある。けれど、近接用の魔法だ。これでは近づけないし、また昨日のように空中でインストールするしかないんだろうか。だが、昨日の鬼よりも明らかに動きが素早くてとても魔法を組んでいる場合ではない。錫杖は昨日のままだから、煉獄の炎だし、あれは使いたくないし、そもそも効かないだろう。
つまり、ピンチってことね……。
火鳥の攻撃をかわし続けてはいるけれど、かわしているだけでは倒せないし……。
かわす度に、ビルや、民家やらなにやらいろいろと燃え広がっている。




