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夢の世界で魂を求めて -ソウルメイト-  作者: nusuto
第二章 ガルナドク解体作戦編
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第二十八話 未来への祈り

 全身が血で染まっている俺達を見たアリア達は、テントから急いで木材の長い板を用意して1人ずつ救護用のテントに運ぼうとしていた。アリアは事前にセレストから魔法でテントを生成する魔法を教わっており、5人分の救護用のテントを作成した。誰から最優先で救護するべきか迷っているアリア、リル、クラーラ、フローレンスに対して助言した。

「みんな、ありがとう。まずは最優先でエレアノールを回復させてくれ」

「でもエルディアさんが......」

「俺は1番最後でいい。エレアノールは魂の管理者だ。エレアノールがいなければ『夢の世界』から脱出することができない。アリア、リル、クラーラ、大至急手当てしてくれ」

アリア達は頷き、エレアノールを板に乗せるとすぐに『1』と書かれたテントに運び込まれた。残りの仲間の回復の順番はフローレンスに指示した。

「2番目にエレアノールを手助けできる要員としてセレストを頼む。セレストなら禁断の魔法とかで無理矢理、エレアノールの代わりに『夢の世界』から脱出することができるだろう。3番目にメルマールより重症なエミだ。エミはガルナドクによって体中に針を刺され、もしかしたら臓器まで貫通していつかもしれないからアリア、セレストに精密な検査を任せたい。4番目にメルマールを救ってくれ。メルマールの腹に針が貫通しているが、エミよりは軽症だろう。だが針が刺さった位置が問題だ、この問題もアリア、セレストにお願いしたい。最後に俺は4人と違って歩けるし話せる、傷を治す程度でいいから最後に回してくれ」

フローレンスは頷くと『1』のテントで手当てをしている3人に順番を伝えた。アリアはエレアノールの回復に専念し、3人でセレストを『2』のテントに運び込んだ。俺は3人に指示した。

「エミとメルマールもテントに運んでくれ。俺はデグロードに用事を思い出したから救護はいらない」

「危険ですよ、エルディアさん。休んでください」

「クラーラ、心配しなくていい。俺はまだ動けるし戦える。クラーラは4人の回復だけに専念してくれ」

クラーラは頷くと、3人でエミとメルマールもテントに運び、1つのテントに対して1人で付きっ切りの看病をした。


 俺はテントから離れて戦地へ再び向かうと、黒い鎧の兵士が5分の1程度まで減少していた。そこでは両腕に包帯を巻いているライラと傷だらけの銀色の鎧を着たデグロードが中心となって戦っていた。兵士は2人の活躍によって士気が高められ、兵士やギルドの下っ端、魔導士が支え合いながら敵に向かって進軍していた。俺は倒れた兵士が大勢転がっている戦地を駆け抜け、ライラとデグロードに向かって走り出した。


 最前線に近づくと猫背になりながら戦っているライラの姿が見えた。ライラは腕の力が弱まっており、衝撃波の威力も弱まっていた。槍捌きや立ち回りも遅くなっており、銃弾を食らう覚悟で攻撃していた。ライラは全身の痛みを堪えながら叫びながら戦っていた。

 一方、デグロードは大剣を鈍器のように扱いながら1人ずつ倒しながら地道に戦っていた。俺はデグロードに近づくと、

「エルディアさん、ご無事で何よりです。エルディアさんは休んで、後は私達にお任せください。」

と嬉しそうな表情を見せた。

「デグロード、俺にも戦わせてくれ」

「いいえ、エルディアさんはガルナドクを倒した立派な仕事を果たしました。だから残りの黒い鎧の兵士達は私達が仕留めます」

「いや、彼女が危険な状態なのに放っておけないだろう。それに戦える兵士や魔導士が少なくなっている」

俺はライラに向けて指を指した。白い服が赤い服に変わってしまうほど肉体的にこれ以上戦うのは危険すぎる。さらに戦地に向かう最中、重症の兵士や魔導士の救護が大幅に遅れており、大勢の人間が血を流しながら倒れている様子を見てしまった。衛生兵が足りないのに、これ以上戦える人員が少なくなれば敵に支配されてしまう。

 俺の思いが伝わったのか、デグロードは諦めながら「頼みます」と伝えた。俺は魂の声に力を借りながら、虹色に発光する剣を強く握り、敵に向けて剣を大きく振り衝撃波を発生させた。ガルナドクとの戦いで力を使いすぎたせいで、俺が放った衝撃波も威力が弱まってしまった。しかし衝撃波は銃を構える敵を風圧で地面に叩きつけ、ライラの攻撃の邪魔を減らすことに成功した。


 俺達3人が中心となって敵を倒し続け、さらに将軍やギルド長、魔道学校の教師も最前線に向かい、この戦いに集まった戦士が一斉に敵を囲み、一斉攻撃を仕掛けた。将軍やギルド長は部下のお手本になるように機敏な動きや確実に敵を仕留めるように剣で突き刺して敵の数を減らした。魔道学校の教師は銃で攻撃している敵に対して雷を頭上に落とし、剣で戦っている兵士に負担を掛けさせないように遠距離攻撃で支援した。そして俺とライラは力尽きるまで衝撃波を何度も発生させ、デグロードは兵士に攻撃の指示を叫びながら、俺やライラの攻撃を邪魔する敵を叩き潰し始めた。


 戦闘開始からおよそ30時間後、腕の筋肉を限界まで使用した俺が最後の敵を倒すと、戦地から大きな歓声が響き渡った。武器を捨てて抱きしめ合う兵士、救護テントから飛び出して叫びだす兵士、一緒に勝利のダンスを踊りだす兵士やギルドの下っ端、魔法で花火を打ち上げる魔導士、将軍と握手を交わすギルド長と魔道学校の教師。ついにガルナドクを解体することができた!俺は喜びに溢れ、平和の訪れを表現しているような神々しく輝く日光に向けて手を上げるが、体に力が入らず地面にうつ伏せに倒れてしまった。デグロードが「エルディアさん!」と叫ぶ声だけが聞こえたが、俺は暗闇に吸い込まれて目を閉じてしまった。


 誰かに腹を擦られていたので目を開けると、救護用のテントに運び込まれていた。テントの中ではセレストが俺の腹に両手を当てながら魔法で傷を癒してくれた。体に新品の血液が流し込まれるような感覚で、徐々に失われていた体力を取り戻していくような状態だった。俺の目覚めに気付くと幸せそうな表情をしながら、

「エルディアさん、平和を取り戻してくれて、ありがとうございます」

と礼を述べ、魔法を中断して俺に抱き着いてきた。

「エルディアさんがいなければ、このような奇跡は起こりませんでした。やっと私達は奴隷や生贄がいない自由の世界を手に入れました」


 興奮しすぎて我を忘れていたセレストは冷静を取り戻して再び俺に回復魔法を唱え始めた。その後、俺の体に異変がないことを確認するとクラーラを呼び出し、セレストはテントから出て行った。クラーラはすぐにテントに入り、顔が近すぎるほど俺を覆いかぶさるように強く抱きしめた。

「エルディアさん!」

クラーラは俺の名前を嬉しそうな声で呼び、それからは俺もクラーラも何も話さず静かに抱きしめ合った。クラーラのモチモチした柔らかい肌は俺を精神的に回復させてくれた。そして俺もクラーラに心配を掛けすぎたことを心の中で謝罪しつつ、クラーラを優しく抱きしめた。


 俺とクラーラは寝始めてから数時間後、俺は自室のベッドに寝ていた。『夢の世界』から抜け出したのかと周りを何度も見渡し、ベッドから起き上がって自室を何度も探索した。ファンタジー部の発表に使用するレポートや着信履歴が多く残っているスマートフォン、そして有栖先輩や有栖裕香からの大量のメール。俺は無事に現実世界に帰還することができたことに感謝し、窓を開けて「ただいま!」と興奮しながら叫んでしまった。落ち着いてから机の下を覗くと「東條翔吾、君は『夢の世界』の未来を救った勇者様だ!」とエレアノールの字で書かれた紙切れだけが残されていた。


 この戦いで増援を含めて約1万人近くの兵士やギルドの下っ端、魔導士が投入されたが、4分の3近くの魂が消えてしまった。またワイナル王国とディール共和国は壊滅し、今後はデグロードが中心となって新たにアーネストリス帝国を再建する予定だ。ガルナドクに協力していた約100人程度の魔導士は魔女裁判によって正しく処罰され、生贄のために捕まった国民はアーネストリス帝国によって生活を支援する予定である。

 だがガルナドクが残した影響は凄まじく、主にワイナル王国やでディール共和国の約5万人以上の国民がガルナドクのために生贄となり魂が消えてしまった。さらには他国でもガルナドクによって街が破壊されたり、国民が行方不明になる事件が多発しており、多くの罪のない魂が失われる異常な世界による恐怖は平和になった今でもトラウマとして人々に精神的なダメージを与え続けていた。


 しかし悲しいことばかりではない。俺達はライラを含めて全員生き延びた。魔法見習のアリア、狩人初心者のリル、熟練メイドのクラーラ、アリアとリルの師匠であるエミ、銃使いのメルマール、正義感が強い指揮官であるデグロード、優秀な魔導士であるセレスト、メイドの仕事を覚え始めたもう1人のフローレンス、ゼルガンドの罪を背負いながら生きていくライラ、剣使いのエルディア。


 仲間を誰も失わずにガルナドクを倒した奇跡に感謝しつつ、有栖先輩に会うために制服に着替えて自宅を飛び出した。日差しは神が俺達を祝福しているかのように明るさが増していた。

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