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手を伸ばして握り返してくれたのは……  作者: 太極
第二章「森の魔女の聖域」
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第百二十一話「変化」

「よし、出発するか。

 準備はよいか?」


「うん」


「大丈夫」


「グル」


ーウンー


 夜が明け、朝を迎え、休息を取ることが出来た僕たちに向かってウェニアは準備が出来ているのかを訪ねてきた。


「うん。行こう」


 皆に続けて、僕もまた準備が出来ていることを伝えた。


「ならば、よい。

 リザ、頼むぞ」


「グルル!」


ー任セテ!ー


 全員の準備が出来ているのを確認すると、ウェニアはリザに全員の移動を任せ、リザはそれに対して強く頷いた。

 それを見て、僕は


「リザ。ありがとう」


「グルル?」


ーユウキ?ー


 昨日とは異なり、感謝の言葉を告げた。


(リザにとっての「理由」は僕なんだね)


 昨日、僕はウェニアとの問答でこの世界と向き合う「理由」を見つけたいと心からの願いを知った。

 そして、それは他の人間にもあることだ。

 勿論、ない人間だっているだろう。

 だけど、リザは僕を「理由」としてくれている。

 あの地下迷宮で命を助け、一人でいる彼女を放っておけず、一緒に旅に出ようと言った僕の為に彼女は戦うと言ってくれた。

 あの孤独から救ってくれた。

 たったそれだけの理由だけで。

 最初は彼女を巻き込みたくないと思った。

 けれど、彼女は決して、自己犠牲の為に動いている訳ではなかった。

 ただ僕への感謝と友愛の為に彼女は共にいようとしてくれている。


(こんなこと思っちゃいけないかもしれないけれど、嬉しく思える)


 大切な友達が自分の為に戦いに身を投じる。

 平穏とは程遠いものであり、何時、命を落とすのか分からない苦しい道を歩ませることになる。

 なのに彼女が僕を助けようとしてくれることに嬉しさを感じてしまっている。

 それは恐らく、僕を大切に思ってくれているからなのだろう。

 その優しさが嬉しかった。

 「理由」を求めていることで、彼女の譲れない思いを知ったことで、僕は彼女のことを否定できなくなった。


(今までの僕は結局、自分のことを卑下していたことで他の誰かを否定していたんだ)


 少しだけ、前を向けたことで今までの自分が自分を雑に扱っていたことで、自分を大切に思ってくれている誰かを傷付けていたという事実を知ることができた。


(まだ、完全に直り切れていないけど、それでも、今、いてくれる皆は大事にしたい)


 だから、自分に向けてくれている好意には素直に応えよう。


「リウン。リナ。

 行こう」


「う、うん」


「うん!」


 同時に改めて、いや、一層この二人を守る決意は固まった。

 どんなに世界が悪意に包まれていてもこの子たちが平穏に生きていける権利はあるはずだ。

 もしもないのならば、作るしかない。

 二人を守る。

 ただそれは約束したからじゃない。

 守りたいと心の底から僕がそう思っているからだ。

 いや、二人だけじゃない。

 僕を大切に思い、僕が大切に思うみんなを守りたい。


(だから、強くなるんだ!)


 そう心の中で決めた。


「ならば、行くぞ。

 ユウキ」


「うん」


 僕の変化を見て、ウェニアはリザの背中を乗りながら手を伸ばした。

 その手を受け取って、僕もまたリザの背中に乗った。

 そして、全員が乗り終えるとリザは前進した。

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