↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
9/12

第9話 父の短い言葉

畑仕事の合間、父が珍しく声をかけてきた。

「レイン」

「ん?」

「最近、お前の様子が違う」

鍬を立てたまま、父は俺の方を見ている。


表情は普段と変わらない。

ただ、目だけが少し真剣だ。

「悪い意味じゃない。前より、落ち着いてる」

「……そうか」

「無理してるわけでもなさそうだしな。母さんも言ってた」

父はそこで一度、言葉を切った。


風が吹いて、小麦の穂がさらさらと揺れる。

「お前がこの村で普通にやっていけるなら、それでいい」

それだけ言って父は再び鍬を動かし始めた。


俺は少しだけ手を止めて、父の横顔を見た。

前世では、親にこんな風に言われた記憶があまりない。


「結果を出せ」「もっと頑張れ」——そういう言葉の方が多かった。

ここでは違う。

「普通にやっていけるなら、それでいい」

その一言が、妙に胸に残った。


能力のことを話すつもりはまだない。

だが、少なくとも家族は

俺の変化を否定していない。

それだけで、少し気が楽になった。


夕方、仕事を終えて家に戻る道中

リリアが遠くから手を振ってきた。

俺も軽く手を挙げて応える。


村の空気は、相変わらず穏やかだった。

そして、その穏やかさが

以前よりほんの少しだけ濃くなっている気がした。


俺が分けた小さな幸運のせいなのか。

それとも、ただの気のせいか。

どちらでもいい。

今日も、無事に一日が終わる。

それだけで十分だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。