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第8話 おばあの視線
村の外れに、小さな小屋がある。
薬草師のおばあさんが一人で住んでいる場所だ。
正式な名前を俺は知らない。
村の人間は皆、ただ「おばあ」と呼んでいる。
その日、母に頼まれて薬草を受け取りに行った。
小屋の前で声をかけると
中からゆっくりとおばあが出てきた。
白髪を後ろで束ね、背中は少し曲がっている。
だが、目だけは意外と鋭い。
「レインか。待っておれ」
短い言葉を残して、また中に消える。
しばらくして
乾いた薬草を包んだ布を持って戻ってきた。
「これだ。母さんに渡しとけ」
「ありがとう」
受け取るとき、おばあの目が俺の顔に止まった。
「……お前、最近、何かしたか?」
「何もしてない」
「そうか」
おばあはそれ以上何も聞かなかった。
ただ、布を渡す手を少しだけ長く握って
俺の掌を見るようにした。
「運の流れが、前より滑らかじゃ。村の若いもんにしては、珍しい」
そう呟いて、手を離す。
俺は何も答えられなかった。
この感覚を誰かに見透かされたのは初めてだ。
「無理はするな。傾けるばかりが能じゃない」
おばあはそれだけ言って、小屋に戻っていった。
帰り道、俺は何度も掌を見下ろした。
見られている。
少なくとも、この力の片鱗は。
それでも、おばあは深く追及してこなかった。
ただ、軽く忠告しただけだ。
この村は、まだまだ穏やかだった。




