第7話 行商人の荷車
その日の昼過ぎ
村の入り口から荷車の音が聞こえてきた。
時々顔を出す行商人のタクトだ。
二十代前半の青年で、軽い調子で話しながらも、商売の目は確かだった。
「よう、レイン。元気そうじゃねえか」
「ああ。今日は何を持ってきた」
「いつもの日用品に加えて、少し良い布と、薬草の乾いたやつだ。街の方で安く仕入れられたからな」
タクトはそう言って荷車の荷物を下ろし始める。
村の人たちが少しずつ集まってきた。
俺も手伝いがてら荷物を運んでいると
タクトが低く呟いた。
「最近、街道の調子が悪いんだよ。雨で道がぬかるんだり、車輪が壊れたり。今日も朝からトラブル続きでな」
そう言われて、俺は一瞬だけ意識を向ける。
——この後の取引が、滞りなく終わりますように。
自分と、タクトの運を、ごくわずかに傾ける。
胸の奥が熱を持ったが反動はすぐに来なかった。
この程度なら、大丈夫らしい。
案の定、その後の取引はスムーズに進んだ。
村人たちも納得の値段で必要なものを買い
タクトも「今日は妙に話が早い」と笑っていた。
帰り際タクトが荷車に足をかけながら振り返る。
「お前の村、最近なんかいい感じだな。落ち着いてるというか」
「そうか?」
「ああ。また来るよ」
手を振って去っていく背中を見送りながら
俺は思った。
小さな幸運を分けただけで
誰かの一日が少し楽になる。
この力の使い道は
やっぱりこういうところにあるのだろう。




