第2話 試しに、少しだけ
朝食を終えて、俺は家の裏手にある小さな畑に出た。
今日の仕事は、雑草抜きだ。
兄のカイルがすでに先に出ていて、腰を屈めて黙々と手を動かしている。
「遅いぞ、レイン」
「ああ」
短く返事をして、隣に立つ。
土の匂いと、朝の風が気持ちいい。
草を引き抜きながら、ふと、昨日の違和感を思い出した。
あの「傾いている」感覚。
試しに、少しだけ意識を向けてみる。
——今日の作業が、少しだけうまくいきますように。
そう願うように、自分の中の何かを、ほんのわずかに動かした。
直後、胸の奥が軽く熱を持った気がした。
気のせいかもしれない。
だが、次の瞬間、手に触れた雑草が、根ごとすんなりと抜けた。
土が柔らかく、力を入れすぎる必要がなかった。
「……」
カイルが横目で見てきた。
「今日は調子いいな」
「たまたまだろ」
そう返しながら、内心では少し驚いていた。
もう一度、意識を向ける。
今度は、カイルの方へ。
——兄さんも、少しだけ楽にできますように。
すると、カイルの手が止まった。
次の草を掴んだとき、彼もまた、すんなりと引き抜いていた。
「……なんだ、今日は草が弱いのか?」
カイルが首を傾げる。
俺は黙って、作業を続けた。
小さなことだ。
雑草が少し引き抜きやすくなっただけ。
それでも、胸の奥で、何かが確かに動いた感覚が残っていた。
この力は、きっと「運」なんだろう。
俺は、まだそれを、誰にも話さなかった。




