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第11話 遠くの噂
次にタクトが村を訪れたのは
それから十日ほど後だった。
荷車の荷物はいつもより少し多めだ。
「街道の調子が戻ってきた」と笑っていたが
目元には薄い疲れが見える。
荷物を下ろし終えたあと
タクトが俺にだけ聞こえる声で言った。
「最近、街の方で変な噂が流れてる」
「どんな」
「辺境の村で、妙に運がいい連中がいるらしいってな。作物が順調で、病気も少なくて、怪我人も出にくい。『幸運の村』とか呼ばれ始めてるらしい」
俺は手を止めた。
「……冗談だろ」
「本気の噂かどうかは分からん。ただ、商人同士の間ではちらほら出てる。興味本位で見に来る奴が出ないとも限らん」
タクトはそう言って、肩をすくめた。
「お前の村はいい場所だ。あまり目立たない方がいいと思うが……まあ、俺が口を出すことでもないか」
その日の取引はいつも通りに終わり
タクトは夕暮れ前に村を後にした。
俺は一人家の裏手に立って空を見た。
幸運を分けすぎたのか。
それともただの偶然が重なっただけなのか。
どちらにせよ外部の目が
少しずつこちらを向き始めている。
まだ大きな波ではない。
ただの噂だ。
だが、このまま何も考えずに使い続ければ
いつか本当に人が来るかもれない。
「……注意するか」
小さく呟いて俺は家の中に戻った。
村の夜は今日も静かだった。
虫の声だけが変わらず続いている。




