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第12話 村の空気

最近、村の人間の会話に

同じような言葉が増えていた。


「最近妙にうまくいくな」

「怪我人も少ないし病気も流行らん」

「今年は豊作になりそうだ」


井戸端でも畑の畦道でも

そんな声が自然に交わされている。

俺はそれを聞きながら黙って作業を続けていた。


自分が分けた幸運が

どこまで影響しているのかは分からない。

だが村全体の空気が以前より柔らかくなっているのは確かだった。


その日の夕方おばあが

珍しく村の中心まで出てきた。

薬草を届けるついでらしく

俺の家の前で足を止める。


「レイン」

「はい」

「お前が何をしてるか、わしは知らん。だが、流れは確かに変わっておる」

おばあはそう言って短い間を置いた。


「傾けるのは楽じゃ。だが、受け止める側の覚悟も要る。忘れるな」

それだけ言い残しておばあはゆっくりと去っていった。


夜、部屋に戻ってから

俺は改めて自分の力を整理した。


小さな幸運を分ける分には反動は軽い。

だが、積み重なれば

村全体の空気すら変える。

そして外部の噂にもなり得る。


この力は便利なようでいて

扱いを間違えれば日常を壊す。


「……分かってる」

呟いて、目を閉じる。


これ以上無闇に大きく動かさない。

必要なときに必要な分だけ。


この村でゆっくりと生きていくために。

窓の外では、いつもの虫の声が聞こえていた。

今日も、穏やかな一日が終わろうとしている。

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