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第37話 待っている朝

 翌朝、少女が目を覚ました時、最初に聞こえたのは屋根を打つ小さな雨音だった。


 強い雨ではない。一定の間隔で細かな雫が落ち、ときどき風に流された雨粒が窓へ触れている。昨日は一日中曇っていながら結局降らなかったのに、一晩遅れてやってきたらしい。


 少女は掛け布を押し下げ、寝台の上で身体を起こした。窓の外はまだ薄暗く、村の家々の屋根も、道も、遠くの畑も淡い灰色に沈んでいる。


 昨日、西へ向かった荷車は、今頃どこにいるのだろう。


 目を覚ました直後に浮かんだのは、やはりそのことだった。


 革袋へ入れられた一通の手紙。故ハルトの息子であるエルドが以前住んでいたという西の町へ、自分が住みたいと思っている家について確認するための手紙が運ばれている。


 昨日ローデンから聞いた話では、返事が来るとしても早くて十日ほどだった。それ以上かかる可能性もあり、そもそもエルドが同じ町にいるのかすら分からない。


 だから、今日返事が来ることはない。


 少女はそう考えてから、少しだけ笑った。


「……当たり前ですね」


 誰もいない部屋で小さく呟き、寝台から足を下ろす。


 右の踵へゆっくり体重を乗せる。痛みはなく、数歩歩いてみても昨日までと変わらない。


 確認を終えると、少女は机へ向かった。


 三軒目の家について書いている紙には、昨夜追加した一行がある。


『エルドさんへ確認の手紙が出た』


 それ以上は増えていない。


 今日も増える予定はない。


 少女は紙を開いたまましばらく見つめ、それから静かに折り直した。


 昨日までは、何かが動き始めたことで気持ちまで前へ急ぎそうになっていた。けれど、一晩眠って朝を迎えてみれば、村の景色は昨日までと何も変わっていない。


 三軒目の家も、そのままそこにある。


 自分もまだマーサの家にいる。


 それで困ることはなかった。


 少女は着替えを済ませ、部屋を出た。


「おはようございます」


「おはよう。降ったねえ」


 台所ではマーサが竈へ薪を足していた。湿った朝の空気に薪の燃える匂いが混ざり、窓の外とは対照的に室内はほんのり暖かい。


 少女は戸口で一度外を見た。


「昨日、洗濯しなくて正解でしたね」


「昨日は降らなかったけどね」


「でも、干したまま忘れていたら濡れていました」


「忘れなきゃいいだけじゃないかい?」


「それはそうですが」


 少女が少し困った顔をすると、マーサが笑った。


「今日はどうする?」


「洗濯ですか?」


「一日だよ」


 問われて、少女はすぐには答えなかった。


 以前なら、朝のうちに一日の予定を決めておきたいと思っただろう。何をするか、どこへ行くか、誰を手伝うか。それが決まっていない時間は、何かを怠っているようで落ち着かなかった。


 今朝は、窓の外の雨を眺めながら考える。


「まだ決めていません」


「そうかい」


「見張りの紙は見たいです。でも、雨なので」


「紙は逃げないよ」


「はい」


 少女は頷いた。


「サナさんの石鹸も気になります」


「昨日見ただろ?」


「見ました」


「じゃあ今日は急に完成してないだろうね」


「……それもそうですね」


「ベルんとこは?」


「鑿は昨日やりましたから、今日は休んでもよいかなと」


 自分で口にしてから、少女は少しだけ驚いた。


 昨日できたことを、今日も続けなくてよい。


 せっかく再開したのだから毎日練習しなければ、とは考えなかった。


「なら朝飯食べてから決めりゃいい」


「はい」


 マーサの言葉に従い、少女は棚から器を取り出した。


 朝食は昨夜の野菜を使った薄いスープと、硬めのパンだった。少女はパンを小さくちぎってスープへ浸しながら、昨日茹でた卵のことを思い出す。


「マーサさん」


「何だい?」


「卵を茹でる時、昨日より少し短くすれば、中心は柔らかくなるのですよね?」


「なるよ」


「どのくらい短くすればよいでしょう」


「卵によるね」


 少女の手が止まった。


「またですか」


「何が?」


「大きさや火の強さで変わる、という話です」


「変わるんだから仕方ないだろ」


「料理は思っていたより、決まっていないのですね」


 少女はパンを口へ運びながら考える。


 公爵家にいた頃、食卓へ並ぶ料理はいつも同じように整っていた。卵料理なら黄身の状態までほとんど揃っており、焼き菓子も形が整い、皿の上で崩れたものなど見た覚えがない。


 その裏側に、料理人たちがどれだけ調整を重ねていたのか。当時の自分は考えたことすらなかった。


「決まってないというより、見ながらやるんだよ」


「見ながら?」


「昨日と今日で同じ火になるとは限らないし、野菜だって同じじゃない。だから途中で見る」


「途中で変えてもよいのですね」


「焦げそうなら火を弱くするだろ?」


「はい」


「なら同じことだよ」


 少女はスープへ視線を落とした。


 最初に決めた通りに最後までやることが正しいわけではない。


 途中で見て、変える。


 料理の話なのに、最近教わっている多くのことと似ている気がした。


 ただ、それを口にするとまた何でも意味づけしているような気がして、少女は黙って残りのパンを食べた。


 朝食を終える頃には、雨が少し弱くなっていた。


 少女は薄い外套を羽織り、玄関で空を確認する。まだ細かな雨粒が落ちているが、村の中央までなら歩けそうだった。


「見張りの紙を見てきます」


「滑るんじゃないよ」


「はい」


「走るんじゃないよ」


「走りません」


「帰りにガルドに捕まるんじゃないよ」


「それは私には決められません」


 少女が真顔で答えると、マーサが声を上げて笑った。


 外へ出る。


 湿った土の匂いが濃い。


 道には浅い水溜まりができており、屋根から落ちる雫が小さな輪を作っている。少女は足元を確かめながら、いつもよりゆっくり村の中央へ向かった。


 畑には人が少ない。


 雨のため作業を遅らせているらしく、軒下で道具を整えている者や、家の中から外を眺めている者の姿が見える。


 見張り場所へ着くと、小さな屋根のおかげで記録用の棚は濡れていなかった。


 昨日ベルが直した部分も問題なさそうだ。


「……何もありませんね」


 少女は試用中の紙を確認した。


 新しい記入はない。


 警戒線も鳴っていないらしい。


 少女は紙を戻そうとして、ふと雨の向こうに見える東側へ目を向けた。


 木々の輪郭は白く霞んでいる。


 森は静かだった。


 雨音があるため鳥の声は聞き取りにくいが、それ以外に目立った変化はない。


 少女は少し考えた。


 雨。


 昨日、ケルが言っていた。


 天候は、痕跡の確認に影響する場合だけ補足へ書けばよい。


 もし昨日までの足跡を確認するなら、今日の雨は意味を持つかもしれない。


 だが、少女自身が見に行くわけではない。


 自分で判断して紙へ書くことでもなかった。


「おはよう」


 背後から声がした。


 少女が振り返ると、ケルが雨避けの外套を着て歩いてきた。肩には細い縄と小さな袋を掛けている。


「おはようございます。森へ行くのですか?」


「手前だけな」


「昨日の場所ですか?」


「いや。今日は別だ」


 ケルは東側を見る。


「雨の後に見たい場所がある」


「警戒線の外ですか?」


「外だが、遠くまでは行かん。ドランも来る」


 少女は頷いた。


 以前なら、「何を見に行くのですか」とすぐ尋ねていたかもしれない。知りたい気持ちはあるが、ケルたちが戻ってから必要なことを聞けばよい。


「気をつけてください」


「ああ」


 ケルが棚へ目を向ける。


「紙は?」


「新しいものはありません」


「ならいい」


「ケルさん」


「何だ?」


「昨日、名前を聞きましたよね」


「ああ」


「『見張り記録』でした」


「そう言ったな」


「オルドさんとベルさんは『見張り帳』、ドランさんは『東の紙』、ガルドさんは『東のやつ』でした」


 ケルが無言になる。


「どう思いますか?」


「最後の二つは名前なのか?」


「私もそう思います」


 少女が真剣に答えると、ケルの口元がわずかに緩んだ。


「見張り帳でいいんじゃないか」


「ケルさんまでですか?」


「短い方が呼びやすい」


「でも、何の見張りか分からなくなりませんか?」


「置いてある場所見れば分かる」


 少女は棚を見る。


 確かに東側の見張り場所に置いてある。


「持ち出したら?」


「持ち出すのか?」


「……今のところ、予定はありません」


「なら困ってから変えればいい」


 また同じことを言われた。


 少女はしばらく考えた後、候補を書いた紙へ目を落とした。


「見張り帳……」


「嫌なのか?」


「嫌ではありません。ただ、あまりにも簡単なので」


「簡単な方が使う」


 ケルはそれだけ言うと、外套の襟を整えた。


 遠くからドランが歩いてくるのが見える。


「行ってくる」


「はい」


 少女は二人を見送った。


 警戒線の外へ出る。


 ただし、森の奥まで追うわけではない。


 村の人たちは、自分たちで決めた範囲を守っている。


 少女は二人の姿が雨の向こうへ消えるまで見た後、棚へ向き直った。


 試用紙の一番上には、まだ仮の名称が書かれている。


 少女は炭筆を持った。


 少し迷う。


 それから、仮名称の横へ小さく書いた。


『見張り帳――試用』


 正式に決めたわけではない。


 それでも、使ってみるくらいならよい。


「……これで一週間使って、困ったら変えればよいのですね」


 口にすると、少しだけ気が楽になった。


「何が?」


 すぐ横から声がした。


「きゃっ」


 少女は肩を跳ねさせた。


 いつの間にかユウが立っていた。


「驚かせないでください!」


「ごめん。普通に来たんだけど」


「声をかけてください」


「今かけた」


「来る前にです」


「難しいな」


 ユウは困ったように笑った。


 雨避け代わりなのか、頭には布を被っている。端から水滴が落ち、肩も少し濡れていた。


「傘はないのですか?」


「ないね」


「作れそうですが」


「作ろうと思えば」


「作らないのですか?」


「雨の日にあんまり出なきゃいいし」


「今、出ています」


「そうなんだよね」


 少女は思わず笑った。


「何しに来たのですか?」


「ローデンさんに呼ばれた」


「何かありましたか?」


「東側の境界壁の確認。雨の後に一回見とこうって」


 少女の表情が少し引き締まる。


「異常が?」


「今のところ聞いてないよ」


「では、定期的な確認ですか?」


「そんな感じ」


 ユウは棚の紙を見る。


「あ、名前決まった?」


「試用です」


「見張り帳」


「皆さんがそれでよいと言うので」


「いいじゃん」


「ユウさんの票は数えていません」


「まだ言ってる」


「後から合わせたので」


 少女が少し得意げに言うと、ユウは笑った。


「じゃあ俺も今から正式に一票」


「もう必要ありません」


「ひどい」


「十分集まりました」


 話しているうちに、少女の視線がユウの肩へ向かった。


 布から落ちた雨が服へ染み込み、少し色が濃くなっている。


「濡れています」


「雨だからね」


「帰ったら着替えてください」


「そんなに濡れてないよ」


「風邪を引いたら困ります」


 少女が言うと、ユウが一瞬だけ黙った。


「……何ですか?」


「いや」


「また何か変なことを言いましたか?」


「言ってない」


「では、なぜ黙ったのです?」


「普通に心配されたなと思って」


 少女の胸が小さく跳ねた。


 自分でも、言われるまで意識していなかった。


 濡れている。


 風邪を引くかもしれない。


 だから着替えてほしい。


 ただそれだけだった。


「心配します」


 少女は少しだけ視線を逸らした。


「ユウさんも、私が踵を痛めていた時に何度も聞いたでしょう?」


「それはそうだけど」


「同じです」


「うん」


 ユウが素直に頷く。


 それで話が終わると思ったのに、少女の胸には小さな温かさが残った。


 同じ。


 そう言った。


 けれど、本当にまったく同じなのかは、自分でも分からない。


「じゃあ、終わったら着替える」


「そうしてください」


「そっちも滑らないようにね」


「マーサさんにも言われました」


「走らないで」


「それも言われました」


「ガルドさんに捕まらないように」


 少女は目を見開いた。


「なぜ同じことを言うのですか?」


「何が?」


「マーサさんも言いました」


「みんな思ってるんじゃない?」


 ユウが笑う。


 少女は少しだけ頬を膨らませた。


「昨日は芋でしたから、今日は大丈夫だと思います」


「甘いな」


「何がです?」


 その直後だった。


「おーい!」


 雨の向こうから大きな声が響いた。


 少女とユウが同時に振り返る。


 ガルドがいた。


 両腕に大きな籠を抱えている。


「いたいた!」


 ユウが少女を見る。


「ね?」


「まだ何も分かりません」


「ユウもいたか! ちょうどいい!」


「嫌な予感する」


 ガルドが水溜まりを避けながら近づいてくる。籠の中には、濃い緑色の葉物野菜が山ほど積まれていた。


 少女は目を瞬いた。


「今日は葉ですか?」


「今日は葉だ!」


「何の葉です?」


「食える葉だ!」


「名前を聞いています」


「青菜!」


「本当に名前が青菜なのですか?」


「そう呼んでる!」


 少女はユウを見る。


 ユウも分からないらしく首を傾げた。


「これ、うまいよ」


「ユウさんは知っているのですか?」


「食べたことはある。名前は俺も青菜で聞いた」


「では青菜なのですね……」


 少女は籠を見る。


 量が多い。


 明らかに二人で持ち帰る量ではない。


「これ、マーサさんに!」


「全部ですか?」


「半分!」


「半分でも多いです」


「残りはユウ!」


「俺?」


 ユウが一歩下がる。


「待って。俺一人だよ?」


「食え!」


「無理だって」


「煮れば減る!」


「そういう問題かな」


 少女は笑いをこらえきれなかった。


「笑ってないで助けて」


「昨日、ガルドさんから逃げていましたよね」


「見てた?」


「少しだけ」


「じゃあ分かるでしょ」


「今日は受け取ってください」


「なんで?」


「鶏料理だけでなく、野菜も食べた方がよいと思います」


 言った後、少女は自分の言葉に気づいた。


 ユウも気づいたらしい。


「……食生活まで心配されてる?」


「野菜は必要です」


「マーサさんみたいになってきたね」


「それは褒めていますか?」


「たぶん」


「なら受け取ります」


 ガルドが笑いながら青菜を二つに分ける。


 結局、少女はマーサの家の分を両腕で抱え、ユウもほぼ同量を持たされた。


「多いです」


「食える食える!」


「マーサさんと二人ですよ?」


「近所にやれ!」


 少女は少し考える。


「それなら最初からガルドさんが配ればよいのでは?」


「雨だから面倒だ!」


「私たちに配らせるのですね?」


「頼んだ!」


 ガルドは満足そうに笑い、そのまま雨の中を歩いていった。


 少女とユウは残された。


 腕の中には青菜。


「……捕まりました」


「言ったでしょ」


「マーサさんにも報告します」


「何て?」


「予言が当たったと」


「予言なのかな」


 二人は顔を見合わせて笑った。


 少女は青菜を抱え直す。


「私は一度戻ります」


「俺もこれ置いてからローデンさんのとこ行く」


「濡れた服も着替えてください」


「はい」


 素直な返事だった。


 少女は少し満足し、マーサの家へ戻った。


 玄関を開けると、台所からマーサの声が飛んできた。


「捕まったかい?」


 少女は言葉を失った。


「……どうして分かったのです?」


「それ抱えて帰ってきて、他に何があるんだい」


 少女は腕いっぱいの青菜を見る。


「予言ではなかったのですね」


「何の話だい?」


「こちらの話です」


 マーサは籠を受け取ると、中を確認した。


「また多いねえ」


「近所へ配れと言われました」


「じゃあ昼から配るか」


「私も行きます」


「雨止んだらね」


「はい」


 少女は外套を脱ぎ、濡れた部分を布で拭いた。


 自分の袖も少し湿っている。


 ユウに着替えるよう言った以上、自分もこのままにしておくわけにはいかない。


「着替えてきます」


「そんな濡れたかい?」


「少しです。でも、風邪を引いたら困りますので」


「そうだね」


 部屋へ戻り、袖の乾いた服へ替える。


 その間にも雨音は少しずつ弱くなっていった。


 昼近くになる頃には雲が明るくなり、屋根から落ちる雫の間隔も広がっていた。


 昼食には、早速ガルドの青菜が使われた。


 マーサが鍋へ湯を沸かし、少女が葉を洗う。泥が葉の根元に残っているため、一枚ずつ開きながら水へ入れた。


「思ったより泥があります」


「畑から取ってきたんだからね」


「公爵家の厨房では、こういう状態を見たことがありませんでした」


「洗ってから出てきたんだろ」


「そうなのでしょうね」


 少女は水の中で葉を揺らす。


 泥が沈む。


 一度水を替え、もう一度洗う。


 きれいになった葉を見ながら、少女は以前の食事を思い出していた。


 皿の上に並ぶものだけを見ていた。


 誰が育てたかも、どれほど土がついていたかも、どんな形だったかも知らない。


 ここでは、ガルドが朝に畑から取った青菜を抱えてきて、それを自分が洗い、マーサが切る。


「私、以前より食べ物を見ている気がします」


「そりゃ洗ってるからね」


「そういう意味だけではありません」


「分かってるよ」


 マーサは笑いながら青菜を切った。


 昼食を終え、雨がほぼ上がった頃、二人は余った青菜を近所へ配った。


 最初の家では老婆が「またガルドか」と笑い、次の家では老人が代わりに乾燥豆を持たせようとした。マーサが「物々交換しに来たんじゃないよ」と断ったものの、結局少量の豆を押しつけられ、少女は籠の中身が完全には減らないことに気づいた。


「配ったのに増えました」


「村なんてそんなもんだよ」


「これでは終わらないのでは?」


「終わらせなくていいんだよ」


 マーサは気にせず歩く。


 少女は籠の豆を見る。


 以前の自分なら、受け取ったものと渡したものを数え、誰にどれだけ返すべきか考えたかもしれない。


 今も少し気になる。


 けれど、ガルドの芋も、オルドの卵も、誰かの豆も、すべてを一度ごとの貸し借りとして整理する必要はないのだと、少しずつ分かってきた。


 最後の家へ青菜を渡した帰り、少女はマーサへ尋ねた。


「こうして食べ物が回って、誰が誰に何を渡したか分からなくなることもありますか?」


「あるだろうね」


「困りませんか?」


「何が?」


「返せなくなることが」


「返したい時に返せばいいよ。別に同じ相手じゃなくてもいい」


 少女は歩きながら黙った。


「ガルドさんから青菜をもらって、別の方から豆をいただいて、私たちがいつか別の方を手伝っても?」


「いいんじゃない?」


「それで、ガルドさんへの返しにはならないのでは?」


「ガルドは返してほしくて持ってきてないよ」


「では、なぜ?」


「採れたから」


 あまりにも単純な答えだった。


 少女は一度瞬きをしてから笑った。


「本当に、それだけなのですね」


「たぶんね」


 家へ戻る途中、村の中央に人が集まっているのが見えた。


 少女は足を止める。


 ローデン、ユウ、ベル、それからケルとドランがいる。


 表情を見る限り、慌てている様子はない。


「何かあったのでしょうか」


「行ってみるかい?」


「はい」


 二人で近づく。


 少女に気づいたユウが軽く手を上げた。朝より乾いた服へ替わっているのを確認し、少女は無意識に少し安心した。


「着替えましたね」


 挨拶より先に口から出た。


 ユウが一瞬きょとんとする。


「そこ?」


「確認です」


「ちゃんと着替えました」


「ならよいです」


 ベルが二人を見比べる。


「何の話だ」


「雨で濡れていたので」


「子供か」


「俺が?」


「両方だ」


 少女は少し頬を赤くした。


 ユウは笑っている。


 ローデンが咳払いをした。


「話していいか?」


「すみません」


 少女は姿勢を正した。


「何かありましたか?」


「ケルたちが見てきた」


 ローデンが東側へ視線を向ける。


 少女も表情を引き締めた。


「森ですか?」


「ああ。ただし、警戒線が鳴ったわけじゃない」


 ケルが続ける。


「前から気になってた水の流れを見た。雨が降った時、北東側から細い水が下りてくる場所がある」


「以前からあったのですか?」


「ある。今日は流れが少し強かった」


 少女は聞きながら、すぐに結論を考えないよう意識した。


「何か見つかったのですか?」


「足跡らしいものが一つ」


 胸が少し強く打った。


 しかし、ケルの声は落ち着いている。


「らしいもの?」


「崩れてる。雨で形がほとんど残ってない」


 ドランが腕を組む。


「獣か人かも分からん」


「場所は?」


「外の警戒線よりさらに外。北東寄りだ」


「以前の足跡があった場所と同じですか?」


「違う」


 少女は一つずつ確認する。


「新しいものですか?」


「それも分からん。雨で古い跡が出た可能性もある」


「一つだけ?」


「見つけたのはな」


 ケルは曖昧な部分を曖昧なまま答える。


 少女はそれを聞きながら、以前なら「では何なのですか」と焦っていたかもしれないと思った。


 今は違う。


 分からないなら、分からない。


「見張り帳へ書きますか?」


 少女が尋ねる。


 ローデンが少女を見る。


「どう思う?」


 答えを返され、少女は少し考えた。


 警戒線は反応していない。


 だが、見回り中に異常らしいものを見つけた場合も記録対象にする方針だった。


「書いた方がよいと思います。ただし、『足跡』とは書かず、『足跡らしい崩れた痕跡』でしょうか」


 ケルが頷く。


「それでいい」


「獣か人かは不明。新旧も不明。場所は北東側で、外の警戒線より外」


「そうだ」


「雨のため状態確認が難しい、も補足へ?」


「入れていい」


 少女はそこで止まった。


「ケルさん、書いていただけますか?」


「ああ」


 以前なら、自分で書いた方が早いと思っただろう。


 今も、実際には自分で書く方が早い。


 けれど、この紙は自分の仕事ではない。


「じゃあ見張り場所へ行くか」


 ローデンが言う。


 全員で行く必要はないため、ベルとマーサはそこで別れた。少女はユウ、ローデン、ケル、ドランと見張り場所へ向かう。


 雨上がりの道は柔らかい。


 少女は滑らないよう歩幅を少し狭くした。


 見張り棚へ着くと、ケルが試用紙を取り出す。


「名前変わったのか」


 紙の上部を見て言う。


「試用です」


「見張り帳になったな」


「皆さんが短い方がよいと言うので」


「俺も言った」


「はい」


 ケルは板を外し、書き始めた。


 文字は少女ほど整ってはいない。


 だが、読める。


『昼前』


『北東』


『警戒線反応なし』


『外線より外』


『足跡に見える崩れた痕跡 一つ』


『人・獣 不明』


『新旧 不明』


『雨で確認困難』


『確認 ケル・ドラン』


 少女は横から読み、口を挟まなかった。


 書き終えたケルが紙を戻す。


「これでいいか?」


 ローデンが確認する。


「ああ。余計なことも書いてない」


「少女は?」


 急に振られ、少女は少し驚いた。


「私ですか?」


「お前さんが一番この紙を気にしてるだろ」


 少女は記録を見る。


 足りないものがないか。


 余計なものがないか。


 少し考えてから答えた。


「よいと思います」


「直したいところは?」


「ありません」


 自分でも意外だった。


 以前なら、もう少し整えたいと思ったかもしれない。


 字の位置。


 項目の順番。


 表現の統一。


 けれど、必要なことは読める。


「本当に?」


 ユウが横から尋ねる。


「何ですか、その聞き方は」


「いや、何か一個くらい直すかと思って」


「私を何だと思っているのです?」


「記録好き」


「……否定しにくいです」


 少女は少し悔しくなった。


 ドランが鼻で笑う。


「そのままでいいなら終わりだ」


「はい」


 少女は紙を棚へ戻した。


 その時、ユウが東側へ目を向ける。


「警戒線は反応なしなんだよね」


「今のところな」


 ローデンが答える。


「じゃあ、今日は何もしない?」


「ケル?」


「追わん」


 ケルの答えは早かった。


「形も残ってないものを追っても仕方ない。雨上がりに新しい跡が出るかもしれんから、明日の朝に手前を見る」


「それでいいな」


 ローデンが頷く。


 少女は少しだけ緊張していた肩を下ろした。


 何か見つかった。


 だからすぐ森へ入る。


 そうならなかったことに安心した。


「怖いか?」


 ドランが突然尋ねた。


 少女は自分の胸の内を確認した。


「少し」


「どのくらいだ」


 以前決めた目安を思い出す。


「四……くらいです」


「ならいい」


 ドランはそれだけ言った。


 少女は笑う。


「以前より、下がりました」


「慣れたか?」


「分かりません。ただ、分からないものを、すぐ一番怖いものだと思わなくなった気はします」


 ユウが少女を見る。


「それ、結構大きいんじゃない?」


「そうでしょうか」


「前は足跡一個でも、自分が来たせいかもって思ってたし」


 少女は少し黙った。


 そうだった。


 自分が来たことで村へ危険を連れてきたのではないか。


 警戒線が鳴れば、自分のせいかもしれない。


 森で何か見つかれば、追放された自分に関係があるのかもしれない。


 今も、その可能性が完全に消えたわけではない。


 けれど、証拠がないうちから自分へ結びつけることは減った。


「今は、私に関係があるかどうかも分かりません」


「うん」


「だから、今は分からないままにします」


 少女は東の森を見た。


 雨上がりの木々から、水滴が落ちている。


 白い霧のようなものが低く漂い、奥までは見えない。


 怖くないわけではない。


 それでも、ここから先へ自分で答えを作りに行こうとは思わなかった。


 午後は大きな出来事もなく過ぎた。


 少女はマーサの家へ戻り、余った青菜の下処理を手伝った。昼に配りきれなかった分は、明日の食事にも使えるよう、傷みやすい葉を先に分ける。


「これは?」


「今日食べる」


「こちらは?」


「明日」


「これは少し傷んでいます」


「そこ取れば食える」


 少女は傷んだ端だけを切り落とした。


 全部捨てる必要はない。


 食べられるところは残す。


「こういうことも、昔は知らなかったのですね」


「何が?」


「野菜の傷んだところだけ取ることです」


「そりゃ料理してなきゃ知らないだろ」


「知らないことが多いです」


「これから覚えりゃいい」


「はい」


 少女は素直に頷いた。


 その後、マーサが昼寝を始めたので、少女も自室へ戻った。


 机の上には何枚かの紙がある。


 三軒目の家。


 日々の記録。


 王都から聞いたこと。


 自分がやってみたいこと。


 そして、昨夜書いた小さな私的な紙。


 少女は椅子へ座った。


 今日はまだ昼過ぎだ。


 何かしなければならないことはない。


 少し迷った後、少女は三軒目の家の紙ではなく、別の紙を取った。


 そこには、以前から少しずつ書いている「やってみたいこと」がある。


 料理。


 鑿。


 石鹸。


 家。


 本。


 村の帳面。


 見張りの記録。


 少女はその下へ新しく一つ書いた。


『料理をもう少し覚えたい』


 その横に、少し考えてから付け加える。


『卵以外も』


 昨日も今日も卵のことばかり考えている気がして、少女は少し笑った。


 さらに炭筆を動かす。


『本を読みたい』


 書いたところで、手が止まった。


 公爵家には多くの本があった。


 歴史、礼法、地理、政治、家系、詩、物語。


 必要だから読んだものも多い。


 好きで読んだものもあったはずだ。


 しかし、何が好きだったかと聞かれると、すぐには答えられない。


「……何が読みたいのでしょう」


 自分で呟く。


 家に本棚を置きたいと思った。


 けれど、その棚へ何を置くのか。


 まだ考えていなかった。


 少女は少し迷った末、『本を読みたい』の後へ小さく書き足した。


『何を読みたいか探したい』


 それでよい気がした。


 読みたい本が分からないなら、探せばよい。


 その時、玄関の方から声がした。


「いるー?」


 ユウの声だった。


 少女の手が止まる。


 なぜか、ほんの少しだけ背筋が伸びた。


 すぐに立ち上がろうとして、そこで一度止まる。


 急ぐ必要はない。


 そう思いながらも、結局いつもより少し早足で部屋を出た。


 台所ではマーサがまだ寝ているらしく、返事がない。


 少女が玄関を開ける。


「ユウさん」


「こんにちは」


「どうしたのですか?」


「マーサさんいる?」


「昼寝をしています」


「あ、じゃあ起こさなくていいや」


 ユウの手には小さな包みがあった。


「何ですか?」


「これ」


 差し出される。


 少女は受け取らず、まず包みを見る。


「食べ物ですか?」


「鶏」


 少女の目が少し大きくなる。


「鶏料理?」


「いや、まだ肉」


「……料理ではありませんね」


「そうだね」


 ユウが笑う。


「オルドさんとこで一羽つぶしたから分けてもらった。俺一人だと多いし、マーサさんなら何か作るかなと思って」


 少女は昨日の会話を思い出した。


 ユウは鶏料理が好きだと言った。


「ユウさんは食べないのですか?」


「俺の分はあるよ」


「焼くのですか? 煮るのですか?」


「まだ決めてない」


 昨日の自分と同じ答えだった。


 少女は少し笑う。


「何?」


「いえ。昨日、私も卵をどう食べるか聞かれて、同じことを答えたので」


「そうだっけ」


「はい」


 少女は包みを受け取る。


「ありがとうございます。マーサさんが起きたら渡します」


「うん」


 ユウは帰ろうとした。


 少女はその背中へ声をかける。


「あの」


「ん?」


 ユウが振り返る。


 何を言おうとしたのか、自分でも一瞬分からなかった。


 用事は終わっている。


 肉を受け取った。


 礼も言った。


 それなら、もう会話を終えてもよい。


 けれど、昨日自分が言ったことを思い出した。


 三軒目の家に住めたら、用事がなくても遊びに来てほしい。


 用事がなくても会う。


 そのことを考えた時、今も同じなのではないかと思った。


「少し、話していきませんか?」


 言ってから、少女の指が包みの端を少し強く握った。


 ユウが瞬きをする。


「いいけど」


 断られなかった。


 それだけで胸が少し軽くなる。


「外は濡れていますので……」


 少女は家の中を見る。


 マーサは寝ている。


 勝手に客を上げてよいのか迷う。


「軒下でいいよ」


 ユウが言った。


「では、椅子を」


「立っててもいいけど」


「私が座りたいです」


「あ、そっか」


 少女は家の中から小さな椅子を二脚持ってきた。


 軒下へ並べる。


 雨はもう止んでいたが、屋根の端から時折雫が落ちる。濡れた土の匂いと、遠くの畑から聞こえる人の声が混ざっていた。


 二人で座る。


 少女は鶏肉の包みを膝へ置いた。


「何話す?」


 ユウが尋ねる。


 少女は困った。


「……考えていませんでした」


「呼び止めたのに?」


「用事がなくても話す、というのをやってみようと思ったのです」


 正直に言うと、ユウが少し笑った。


「練習?」


「そういう言い方をすると変ですね」


「でも、いいんじゃない?」


「ユウさんは、用事がなくても人と話しますか?」


「話すよ」


「何を?」


「その時による」


「例えば?」


「ガルドさんなら、豆の話とか」


「それはガルドさんに用事があるのでは?」


「豆に用事はないよ」


「……確かに」


 少女は少し笑う。


 沈黙が落ちた。


 以前なら、何か話さなければと思っただろう。


 せっかく呼び止めたのだから、会話を続けなければ失礼だと焦ったかもしれない。


 今は、雨上がりの村を並んで眺める。


 軒先から雫が落ちる。


 一羽の鶏が道の向こうを歩き、泥を避けるように妙な足取りで進んでいく。


「鶏って、雨の日でも歩くのですね」


 少女が言った。


「歩くね」


「羽が濡れませんか?」


「濡れると思う」


「嫌ではないのでしょうか」


「本人に聞かないと」


「聞いて分かりますか?」


「俺は無理」


 少女は笑った。


 また少し黙る。


 不思議だった。


 何か重要な話をしているわけではない。


 王都のことでも、追放のことでも、森の異変でも、家のことでもない。


 鶏が雨上がりの道を歩いている。


 ただそれだけの話だ。


 それなのに、帰ってほしいとは思わない。


「ユウさん」


「ん?」


「こういう時間は、何をしていることになるのでしょう」


「何もしてないんじゃない?」


「何も?」


「座って話してるだけだし」


 少女はその答えを聞き、膝の上の包みへ視線を落とした。


「以前なら、少し怖かったと思います」


「何が?」


「何もしていない時間がです」


 ユウはすぐに返事をしなかった。


 少女は続ける。


「何かを覚える時間でも、誰かを手伝う時間でもありません。休む必要があるほど疲れているわけでもない。それなのに、ただ座っているのは……時間を無駄にしているように感じていたと思います」


「今は?」


 少女は少し考えた。


 隣にはユウがいる。


 雨上がりの空気は少し冷たい。


 家の中ではマーサが昼寝をしている。


 膝には夕食になるかもしれない鶏肉がある。


「今は、嫌ではありません」


「そっか」


「むしろ……」


 言葉が止まる。


 楽しい。


 そう言ってしまってよいのか迷った。


 何もしていないのに。


 ただ隣に座っているだけなのに。


「少し、好きかもしれません」


 少女はようやく言った。


 ユウがこちらを見る。


 少女はその視線に気づき、急に自分の言葉の別の意味を意識した。


「時間が、です」


 慌てて付け加える。


「こういう時間が、という意味です」


「分かってるよ」


 ユウが笑った。


 少女の頬が熱くなる。


「笑わないでください」


「笑ってない」


「笑っています」


「ちょっとだけ」


 少女は視線を逸らした。


 心臓が少し速い。


 なぜこんなに慌てたのか、自分でも分からない。


 ただ、「好き」という言葉をユウの隣で口にした瞬間、別の意味に聞こえる可能性へ気づいてしまった。


 もちろん、そういう意味ではない。


 そういう意味ではない、はずだ。


「……帰りますか?」


「怒った?」


「怒っていません」


「じゃあもうちょっといる」


 ユウは立たなかった。


 少女も追い返さなかった。


 しばらくしてマーサが起き、玄関から二人を見つけた。


「何してんだい?」


 少女は一瞬だけ答えに迷った。


 それから、少し笑う。


「何もしていません」


「そうかい」


 マーサはそれ以上聞かなかった。


 少女はその答えが、今日は少しだけ誇らしかった。


 夕方、鶏肉はマーサの手で野菜と一緒に煮込まれた。


 少女も切る作業を手伝ったが、肉を扱うのはまだ慣れていないため、マーサの手元をよく見ながら進めた。青菜も少し加えると、昼とは違う香りが台所へ広がった。


「ユウさんも、これを食べるでしょうか」


「自分の分持ってるなら食べるんじゃない?」


「焼くかもしれません」


「気になるなら明日聞けばいい」


「そうします」


 少女は自然に答えた。


 また話す理由が一つできた。


 けれど、その理由がなくても話してよいことを、今日知ったばかりだった。


 夜。


 少女は自室で一日のことを紙へ書いた。


 西へ送った手紙について、新しいことはない。


 それでよい。


 見張り帳には一件、新しい記録が増えた。


『足跡に見える崩れた痕跡。人か獣か不明。新旧不明。雨で確認困難』


 明日、ケルたちが必要な範囲を確認する。


 それ以上は、まだ分からない。


 少女は次の紙を取る。


 今日のことを何から書くか考えた。


『雨』


『ガルドさんから青菜』


『見張り帳という名前を試す』


『鶏肉をいただいた』


 そこまで書き、炭筆が止まる。


 軒下。


 二脚の椅子。


 雨上がりの匂い。


 泥を避けながら歩く鶏。


 隣にいたユウ。


 用事がなくても話したいと思い、自分から呼び止めた。


 少女は少し迷った末、一番下へ書いた。


『今日は、ユウさんと何もしないで話した』


 その文章を見つめる。


 何もしなかった。


 けれど、何もなかったわけではない。


 少女はその下へ、もう一行だけ加えた。


『楽しかった』


 書き終えると、昼間と同じように頬が少し熱くなった。


 紙を慌てて折りそうになり、手を止める。


 別に隠す必要はない。


 それでも、誰かに見せたい紙ではなかった。


 少女は丁寧に折り、昨日の『ユウさんは、鶏料理が好き』と書いた紙の下へ重ねた。


 窓の外では、雨雲が東へ流れ始めていた。


 明日の朝、森の手前では今日より地面が見やすくなっているかもしれない。西へ向かった手紙は、また少しだけ目的地へ近づいているかもしれない。


 どちらも、今の少女には確かめられない。


 だから今夜は眠る。


 少女は灯りを消し、寝台へ入った。


 返事を待つ時間の中にも、朝があり、食事があり、雨が降り、誰かから野菜を押しつけられ、何の用事もなく誰かと話す時間がある。


 待っているからといって、生活が止まるわけではない。


 目を閉じる直前、少女の脳裏に浮かんだのは西へ向かった手紙ではなく、軒下で困ったように笑っていたユウの顔だった。


 そのことに理由をつける前に、少女は静かに眠りへ落ちていった。

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