第23話 教わる日
翌朝、少女は寝台から起き上がる前に、昨日ベルから受け取った薄い当て物を手に取った。
柔らかな布の間に薄い革を挟んだだけの簡素なものだが、指で押すと以前使っていたものより明らかに薄い。それだけ踵へかかる圧を逃がす力も弱くなるはずで、傷が良くなってきたからこそ試せるものなのだと、ユウから説明されていた。
窓の外には、昨日より少し白っぽい朝の光が広がっている。
雨の気配はない。風も弱く、遠くから聞こえる鶏の声のほかには、薪を割る乾いた音が時折響いてくるだけだった。
「……今日は、どうでしょう」
少女は当て物を自分で靴へ入れた。
最初に厚いものを作ってもらった時、ユウは自分で位置を調整できるようにと、少女自身に入れさせた。今では踵のどこへ当てれば擦れにくいのかも、おおよそ分かる。
靴を履き、立ち上がる。
部屋を端から端までゆっくり歩いた。
痛みはない。
もう一度往復する。
やはり問題ない。
「零……でしょうか」
そう口にしてから、少女は少し考え直した。
「今は、零」
今日一日ずっと零だとは限らない。
今の状態だけを言えばいい。
以前なら「もう治った」と決め、そこから一日中動けることまで一緒に証明しようとしていたかもしれない。
少女は足を軽く動かし、違和感がないことをもう一度確認した。
ベルのところへ行きたい。
昨日から、その気持ちは変わっていなかった。
台所へ下りると、マーサは朝食の支度をしながら窓を開けていた。
冷たすぎない風が室内へ入り、煮込んでいる野菜と豆の匂いを薄く運んでいく。少女が入ってくると、マーサはいつものように足元へ一度だけ視線を向けた。
「おはようございます」
「おはよう。今日はどうだい?」
「今は零です」
「今は、かい」
「はい」
マーサは少しだけ口元を上げた。
「言い方が変わったね」
「一日中大丈夫かは、まだ分かりませんから」
「そりゃそうだ」
少女は椅子へ腰を下ろした。
「ベルさんのところへ行こうと思います」
「鑿かい?」
「はい。昨日、ユウさんから聞きました」
「指まで削って帰ってくるんじゃないよ」
「そんなに危ないのですか?」
「使い方を間違えりゃね」
少女の手が少し止まった。
「……やめた方がよいでしょうか」
「なんでそうなるんだい」
「危険なら」
「包丁だって危ないよ」
マーサは朝食用の野菜を切っている包丁を軽く持ち上げた。
「だから使わないのかい?」
「いえ」
「なら、危なくない使い方を教わってきな」
少女は包丁とマーサを見比べた。
「はい」
「ベルがいきなり難しいことをやらせるとも思えないしね」
「そうなのですか?」
「あの爺さん、自分の道具に傷つけられる方が嫌いだから」
「私より道具なのですか?」
「半分くらいは」
「半分も」
少女が呆れると、マーサが笑った。
朝食を食べながら、少女は今日の予定を頭の中で整理した。
ベルのところへ行く。
鑿を教わる。
その後は決めていない。
昨日までなら、空いた午後へ何かを入れたくなったかもしれない。
今日は、不思議とそこまで焦らなかった。
「午後は何をするんだい?」
マーサから尋ねられ、少女は匙を止めた。
「まだ決めていません」
「そうかい」
「ベルさんのところで疲れるかもしれませんし」
「うん」
「楽しくて長くいるかもしれません」
「それもあるね」
「ですから、その後に決めます」
マーサは満足そうに頷いた。
「だいぶ上手くなったじゃないか」
「何がですか?」
「予定を決めないことが」
「それを上手いと言ってよいのでしょうか」
「前よりできるようになったなら上達だろ」
少女は思わず笑った。
何もしないこと。
決めないこと。
途中でやめること。
王都にいた頃なら、上達という言葉とは最も遠いものだった。
この村では、それさえ練習になるらしい。
食事を終え、少女は皿を洗ってから外へ出た。
今日は一人だった。
マーサは家の裏で縫い物をするという。
ユウも朝早くから東側の警戒線を見に行っているらしく、家の前には姿がない。
少女は自分の足でベルの家へ向かった。
道順はもう分かる。
共同井戸の横を通ると、昨日サナの家で会った老婆が桶を引き上げていた。
「おはようございます」
少女から声をかける。
「おや、おはよう」
老婆は振り返り、少女の手元を見る。
「今日は石鹸じゃないのかい?」
「今日はベルさんに鑿を教えていただきます」
「鑿?」
老婆は少し目を丸くした。
「また変わったこと始めたねぇ」
「変でしょうか」
「貴族みたいな喋り方する娘が鑿持つのは、少し変だね」
少女の足が止まった。
貴族みたいな。
胸の奥が僅かに緊張したが、老婆に探るような表情はない。
「……そうかもしれません」
「指に気をつけな」
「マーサさんにも言われました」
「なら大丈夫だ」
「なぜですか?」
「二人に言われりゃ二倍気をつけるだろ」
老婆は笑い、また桶へ向き直った。
少女も小さく笑って歩き出した。
以前なら、「貴族みたい」と言われた時点で、その後の会話が頭に入らなくなったかもしれない。
どこまで気づかれた。
何を疑われた。
誰へ話される。
そんなことばかり考えただろう。
今も全く気にならないわけではない。
けれど今日は、鑿を教わりに行く途中だった。
自分が今から何をするのか。
そちらの方が、少しだけ大きかった。
ベルの作業場へ近づくと、木を削る音が聞こえてきた。
屋根の下ではベルが小さな板を鉋で整えている。作業台の端にはいくつもの道具が並べられ、以前少女が名前を教わった木槌、金槌、錐、鉋、鑿も見えた。
「おはようございます」
少女が声をかけると、ベルは鉋を止めた。
「来たか」
「はい」
「足は?」
「今は零です」
「今は?」
「一日中同じかは分かりませんので」
ベルは一度少女を見てから、短く頷いた。
「それでいい」
少女は作業場へ入った。
「腰はどうですか?」
「俺のか?」
「はい。この前、棚で痛めたと」
「もう一だ」
「動いた時も?」
「二まではいかん」
「では、重いものは?」
「今日は持たん」
少女は少し安心した。
「よかったです」
「お前までユウみたいなこと言うようになったな」
「ユウさんにも休んでいただきたいと思っています」
「それは言っとけ。あいつは人には言うくせに自分は忘れる」
「やはりそうなのですね」
「全員知ってる」
ベルは何でもないように言った。
少女は少し可笑しくなる。
ユウ本人だけが、村中から見守られていることに気づいていないのかもしれない。
「鑿をやりたいんだったな」
ベルが作業台を指す。
「はい」
「まず触るな」
少女は伸ばしかけた手を止めた。
「……はい」
「怒ってるんじゃない。先に説明する」
「分かりました」
ベルは数本並んでいる鑿のうち、比較的幅の広い一本を手に取った。
「これは木を削る道具だ。切るって言った方が近い時もある」
刃先を少女へ向けないよう持ち、横から見せる。
「ここが刃。見た目より切れる」
「触らない方がよいですね」
「刃にはな」
「はい」
「持つのはこっち」
木の柄を示す。
少女は頷いた。
「木槌で叩く場合と、手で押す場合がある。今日は木槌は使わん」
「なぜですか?」
「初めてだから」
「手で押す方が簡単なのですか?」
「力が小さい」
ベルは作業台の上に、柔らかそうな木片を置いた。
「今日はこれを少し削るだけだ」
少女は木片を見る。
「何かを作るのではないのですか?」
「作らん」
「練習だけ?」
「初めてなんだろ」
「はい」
「なら最初から物を作る必要はない」
少女は一瞬、言葉を失った。
練習のためだけに材料を使う。
そのことに、僅かな抵抗があった。
「もったいなくありませんか?」
「端材だ」
「でも、木ですよね」
「木だな」
「失敗しても何にもならないのでは?」
ベルは木片を持ち上げた。
「これは元々、椅子の脚を切った残りだ」
「残り」
「燃やしてもいい。小さな楔にしてもいい。練習に使ってもいい」
ベルは少女へ差し出す。
「今日は練習に使う。それで役目がある」
少女は両手で受け取った。
掌より少し長い木片。
表面には切断した跡があり、商品として売るようなものには見えない。
「練習すること自体に、意味があるのですね」
「意味が欲しいならな」
「ベルさんは、意味を考えないのですか?」
「面白そうだからやることもある」
少女は木片を見つめた。
また一つ、自分には難しい考え方だった。
ベルは作業台の前へ低めの椅子を置いた。
「座ってやれ」
「立たなくても?」
「今日は力を入れん。足も治りかけだ」
「分かりました」
少女は腰を下ろす。
木片を作業台の上へ置き、ベルに教えられた通り固定する。
「左手は刃の前に出すな」
「はい」
「絶対だ」
「はい」
「滑ったら切る」
「……はい」
少女の返事が少し固くなった。
ベルが眉を寄せる。
「怖くなったか?」
「少し」
「なら今日は見るだけでもいいぞ」
少女は鑿を見る。
やりたい。
けれど、怖い。
その二つが同時にある。
「……一度だけ、やってみたいです」
「分かった」
ベルは鑿を少女へ渡した。
柄を握る。
見ていた時より少し重い。
「握りすぎるな」
「力を抜くのですか?」
「落とさない程度でいい」
少女は指の力を緩める。
「刃を木へ寝かせすぎると滑る。立てすぎると深く入る」
「どのくらいですか?」
「今から見せる」
ベルは別の鑿を使い、同じ木片の端へ刃を当てた。
ほんの僅かな角度。
ゆっくり押すと、薄い木屑がくるりと丸まりながら剥がれた。
少女の目が大きくなる。
「綺麗です」
「やってみろ」
「同じように?」
「最初から同じにはならん」
ベルは当然のように言う。
「今のを見て、やれるところまでやれ」
少女は鑿を木へ当てた。
角度を思い出す。
押す。
動かない。
「……硬いです」
「刃が寝すぎだ」
「もう少し立てる?」
「少し」
角度を変える。
再び押す。
今度は刃が木へ入った。
しかしベルのように薄くは削れず、途中で止まる。
「止まりました」
「一回戻せ」
「そのまま押してはいけませんか?」
「無理に押すと深く入る」
少女は言われた通り鑿を戻した。
木には短い削り跡だけが残っている。
「できませんでした」
「何が?」
「削るのが」
「削れてるぞ」
ベルが木片を指す。
確かに、ほんの少しだけ表面が削れている。
「でも、途中で止まりました」
「最初から端まで削るって言ったか?」
「……言われていません」
「じゃあ失敗じゃない」
少女は木片を見つめた。
自分の中で、勝手に成功の条件を増やしていた。
薄く。
真っすぐ。
端まで。
ベルと同じように。
誰にも求められていないのに。
「もう一度やっても?」
「そのための端材だ」
少女は鑿を構え直した。
二回目。
今度は少し角度を立てすぎた。
刃が深く入り、木の表面が小さく欠ける。
「あっ」
少女はすぐに鑿を止めた。
「欠けました」
「欠けたな」
「これは失敗ですか?」
「今のは失敗だ」
ベルはあっさり認めた。
少女の胸が少し縮む。
けれど、ベルは怒らない。
「立てすぎた」
「はい」
「じゃあ次は少し寝かせろ」
「……それだけですか?」
「他に何するんだ」
「私が下手だから向いていない、とか」
「二回で何が分かる」
ベルは呆れたように言った。
少女は口を閉じる。
「俺だって最初は指切ったぞ」
「切ったのですか?」
「だからお前には切らせんよう教えてる」
「それは……ありがとうございます」
「礼は上手くなってから言え」
「上手くならなかったら?」
「ならなくてもいい」
少女は思わずベルを見る。
「いいのですか?」
「お前、木工職人になるのか?」
「……今のところ、その予定はありません」
「なら、やってみたかっただけだろ」
「はい」
「それでいいじゃないか」
ベルは作業台の端へ腰を預けた。
「好きなら続けりゃいい。嫌ならやめろ。必要になったらまた覚えろ」
「途中でやめても?」
「俺が困るか?」
「困らないと思います」
「なら好きにしろ」
少女は自分が欠けさせた木を見る。
失敗した。
けれど、それで何かを失ったわけではない。
評価も。
婚約も。
家族の期待も。
誰かの信頼も。
ただ木が少し欠けただけだった。
「もう一度、お願いします」
「どうぞ」
三回目は、二回目より慎重に刃を寝かせた。
今度は薄い木屑が少し長く伸びる。
途中で切れた。
それでも、先ほどより明らかにベルの削り方へ近い。
「……できました」
「できたな」
「まだ短いですが」
「一回目より長い」
「はい」
少女は自分の手元を見る。
嬉しい。
けれど、その嬉しさをすぐに「もっとやらなければ」へ変えないよう、一度息を吐いた。
「もう一回だけやります」
「一回だけ?」
「今のところは」
「覚えたな」
ベルが笑った。
四回目は、三回目より少し長く削れた。
少女はそこで鑿を置いた。
手に軽い疲れがある。
痛みはない。
足も問題ない。
まだできる。
それでも、今日は初めてだった。
「少し休みます」
「そうしろ」
ベルは木片を持ち上げる。
四つの跡。
最初の浅い跡。
深く入りすぎて欠けた場所。
少し長く削れた跡。
最後の、さらに滑らかな跡。
「持って帰るか?」
「これを?」
「いらんなら薪にする」
少女は木片を見つめた。
「……いただいてもよいですか?」
「いいぞ」
「なぜか、持っていたいです」
「じゃあ持っとけ」
ベルは木屑を払い、少女へ渡した。
少女は両手で受け取る。
上手くできた最後の跡だけではない。
失敗した跡も残っている。
それでも捨てたくなかった。
少し休んだ後、少女はベルが実際の作業をするところを見せてもらった。
今日作っていたのは、小さな箱の蓋だった。
誰かから頼まれたものではなく、余った板がちょうどよい大きさだったから作っているらしい。
「何を入れる箱ですか?」
「まだ決めてない」
「決めずに作っているのですか?」
「できてから考える」
「そんな作り方もあるのですね」
「売ってもいいし、誰かが欲しがったらやってもいい」
「誰も欲しがらなかったら?」
「俺が釘入れる」
少女は笑った。
王都で見た職人たちは、注文を受け、決められた品を作っていた。
用途すら決めずに箱を作るという発想が面白い。
ベルが鑿を使うと、少女が苦労した木が驚くほど滑らかに削れていく。
手の動きは速くない。
むしろ、一つ一つの動作は落ち着いている。
「ベルさん」
「なんだ」
「どうしてそんなに上手なのですか?」
「長くやってるからだ」
「才能ではなく?」
「才能があるかは知らん」
ベルは木を削りながら答える。
「子どもの頃から触ってた。何十年もやってりゃ、嫌でも少しは上手くなる」
「一度見ただけでできたわけではない?」
「そんな奴いたら腹立つな」
少女は思わず笑った。
「私の妹なら、できるかもしれません」
「そうか」
「はい。何でも覚えるのが早い子で」
「なら早く覚えるんだろ」
「……それだけですか?」
「何がだ」
「私より早くできるなら、妹の方が優れているのでは?」
ベルの手が止まった。
少女は自分でも、なぜこんなことを尋ねたのか分からなかった。
昨日マーサへ妹の話をしたからかもしれない。
ベルは少し考え、鑿を作業台へ置いた。
「早く覚えるって話なら、その妹の方が優れてるんじゃないか」
少女の胸が痛んだ。
けれど、ベルは続ける。
「で?」
「……で?」
「それがどうした」
少女は答えられない。
「走るのが速い奴もいれば、力が強い奴もいる。俺より木を削るのが上手い奴もいるだろ」
「嫌ではないのですか?」
「そいつが上手いせいで俺の飯がなくなるなら嫌だ」
あまりにも現実的な答えだった。
少女は少し呆気に取られる。
「でも、そうじゃないなら?」
「上手い奴は上手い。それだけだ」
「自分の価値が下がったとは?」
「なんで下がる」
ベルは本気で分からない顔をしていた。
少女は膝の上の木片を見る。
「私は、妹ができるたびに、自分ができないことを見せられているように思っていました」
「誰かに言われたのか?」
「……はい」
「じゃあ、妹ができたからじゃないだろ」
少女は顔を上げる。
「比べた奴がいたからだ」
ベルはまた鑿を手に取った。
「妹が木を上手く削ったって、お前の木が元に戻るわけじゃない」
少女は自分の木片を見る。
そこには四つの削り跡が残っている。
妹なら、一度目からもっと綺麗に削ったかもしれない。
それでも、自分が三回目に削れた事実は消えない。
「……私ができたことは、残る」
「木には残ってるな」
「妹がもっと上手でも?」
「その妹が今ここに来て、お前の削ったところ消すのか?」
「しないと思います」
「なら残る」
ベルの答えは簡単だった。
少女は指先で、自分が削った三回目の跡へそっと触れた。
妹より優れている必要はない。
妹が優れていることを否定する必要もない。
妹の方が早く覚えるなら、それは事実でいい。
その事実と、自分が何度かやってできるようになることは、同時に存在できる。
少女は胸の奥へその考えを入れようとして、少し苦しくなった。
すぐには馴染まない。
何年も積み重なったものが、一度の会話で消えるはずもない。
「……まだ、難しいです」
少女は正直に言った。
「何が?」
「妹が私より優れていても、それで私が駄目になるわけではないと思うことが」
「じゃあ難しいままでいいだろ」
「またそれですか」
「今すぐ分かれって俺は言ってない」
「はい」
少女は小さく笑った。
「でも、少し考えてみます」
「好きにしろ」
ベルは作業を再開した。
しばらくして、作業場の外から声がした。
「ベル爺さーん」
ユウだった。
肩に小さな袋を下げ、その後ろからケルも歩いてくる。
「どうしました?」
少女が尋ねる。
「東の警戒線見てきた帰り」
「何かありましたか?」
ユウの表情を確認する。
緊迫してはいない。
「新しい人の足跡はなし」
ケルが答えた。
「獣も警戒線には近づいてない。昨日反応した鹿の跡だけだ」
「そうですか」
少女は息を吐いた。
「森の奥は?」
「入ってない」
ケルは首を横へ振る。
「足跡がないからって、安全になったわけじゃない。だから今まで通りだ」
「はい」
安心と警戒を混ぜない。
少女もその言葉を理解できるようになっていた。
「古い道の方は?」
「外から見える範囲だけだ。雨の後だから、前の人間の跡はほとんど消えてる」
「分からなくなったのですね」
「そういうことだ」
少女は頷いた。
以前なら、分からなくなったことに焦り、不安を大きくしただろう。
今も気になる。
けれど、分からないなら分からないまま置く。
村では警戒を続けている。
今はそれでいい。
「で、何してるの?」
ユウが少女の手にある木片を見る。
「鑿を教えていただきました」
「もう?」
「四回だけです」
「どうだった?」
少女は木片を見せた。
「一回目は途中で止まりました。二回目は深く入りすぎて欠けました。三回目と四回目は少し削れました」
ユウは木片を受け取らず、少女が持ったまま覗き込む。
「ほんとだ」
「失敗も残っています」
「うん」
「でも、これをいただきました」
「いいじゃん」
「妹ならもっと上手にできると思います」
口にしてから、少女は自分で気づいた。
また出た。
けれど、以前とは少し違う。
「……でも」
少女は木片を見る。
「私が削ったところも、なくならないそうです」
ユウはベルを見る。
ベルは何も言わず、箱の蓋を削っている。
「そっか」
ユウが答えた。
「はい」
少女は木片を胸元へ戻した。
妹ならもっと上手くできる。
その考えはまだ出てくる。
無理に消さなくてもいい。
その後に、もう一つ続けられるようになった。
でも、自分もできた。
今は、それで十分だった。
「ユウ、お前これ持ってけ」
ベルが突然言った。
「何?」
「箱」
「まだ完成してないじゃん」
「完成したらだ」
「何入れるの?」
「お前が決めろ」
「なんで俺?」
「道具散らかしてるから」
「散らかしてないよ」
「この前、銀の本探して三冊どかしてただろ」
「それ魔導書だから箱に入らないって」
「じゃあ別のもん入れろ」
「適当すぎない?」
少女は二人のやり取りを聞きながら笑った。
「ユウさんも、用途を決めていない箱をいただくのですね」
「何その罰ゲームみたいな言い方」
「ベルさんは、できてから用途を決めるそうです」
「そうなの?」
「そうだ」
「自由すぎるでしょ」
「嫌なら釘入れにする」
「それはそれで勿体ないな……」
ユウが本気で悩み始めた。
少女はさらに笑った。
その後、ケルはローデンのところへ報告に向かい、ユウはベルの作業を少し手伝うことになった。
少女は帰ってもよかった。
けれど、ベルが箱を作るところをもう少し見ていたい。
「まだ見ていてもよいですか?」
「好きにしろ」
「足は?」
ユウが尋ねる。
少女は一度立ち上がり、踵の感覚を確かめた。
「零から一の間です」
「じゃあ座ってるなら大丈夫そう?」
「はい。でも昼前には戻ります」
「了解」
自分で時間を決めた。
誰かに言われたからではない。
少女は椅子へ戻り、二人の作業を見ることにした。
ユウはベルの指示で板を押さえていた。
魔法は使わない。
ベルが測り、ユウが押さえ、必要な時だけ道具を渡す。
規格外の魔法を持つ人が、今はただ板を押さえている。
「ユウさん」
「ん?」
「魔法を使えば、箱も作れますか?」
「たぶん」
「では、なぜ使わないのです?」
「ベル爺さんが作ってるから」
「それだけ?」
「それだけ」
ベルが横から言う。
「こいつにやらせたら俺が暇になる」
「だそうです」
ユウが肩をすくめる。
少女は笑った。
「でも、早くできますよね」
「早いね」
「綺麗にも?」
「たぶん」
「なら……」
少女は言いかけて止まる。
早く、綺麗にできる人がいる。
だから、その人に任せる。
それは、自分がずっとされてきた比較と似ている気がした。
「どうしたの?」
「いえ」
少女は少し考えてから続ける。
「ユウさんの方が早く作れるからといって、ベルさんが作らなくなる必要はないのですね」
「俺の方が早いかは分からんぞ」
ベルが言う。
「魔法なら早いと思います」
「細かいところで失敗するかもしれん」
「俺もそう思う」
ユウが頷く。
「魔法で形を変えるのと、使いやすい箱を作るのは別だし」
「でも、もしユウさんの方が上手だったとしても?」
少女はベルを見る。
ベルは箱の角を確かめながら答えた。
「俺が作りたいなら作る」
その一言が、少女の胸へ深く残った。
「上手い人が他にいても?」
「いるだろ、そりゃ」
「それでも?」
「なんで他人が上手いと、俺がやっちゃいかんのだ」
少女は何も言えなくなった。
妹の方が上手い。
妹の方が早い。
妹の方が王太子妃に向いている。
だから自分は。
その後へ続いていた言葉が、初めて途中で止まった。
妹の方が上手でも。
自分がやりたいなら、やっていい。
それは、自分にとってあまりにも新しい考え方だった。
「……そうなのですね」
少女は小さく呟いた。
「何が?」
「いいえ」
今はまだ、上手く説明できない。
「少し、覚えておきたいことが増えました」
ベルは何のことか分からない顔をしたが、聞き返さなかった。
昼前、少女は自分で決めた通り作業場を出た。
右足は一程度。
痛みというより、歩いたことによる軽い違和感に近い。
「ありがとうございました」
少女はベルへ頭を下げる。
「またやりたきゃ来い」
「よいのですか?」
「端材はまだある」
「次も、練習だけで?」
「何か作りたくなったら考えろ」
少女は少し考えた。
「今は、まだ練習したいです」
「じゃあそうしろ」
「はい」
また一つ、小さな予定ができた。
「俺も戻る」
ユウが言った。
「箱は?」
「まだ完成してないから」
「夕方取りに来い」
ベルが言う。
「本当に俺がもらうの?」
「もうお前のだ」
「用途決めてないのに」
「決めるのもお前だ」
ユウは困った顔をする。
少女はそれを見て、思わず言った。
「自分で決めるのは難しいですね」
「他人事だと思ってるでしょ」
「少しだけ」
「ひどいな」
二人は並んで歩き始めた。
昼近くの日差しは、朝より少し強い。
道端では昨日の雨で伸びた草が風に揺れ、畑ではガルドが遠くから誰かへ大声で何かを指示している。何を言っているかまでは聞き取れないが、その声だけで本人だと分かった。
「ユウさん」
「ん?」
「今日、ベルさんに聞きました」
「何を?」
「私の妹の方が、物事を覚えるのが早いなら、その点では妹の方が優れているのだろうと」
ユウは何も言わず、少女の続きを待った。
「少し、痛かったです」
「うん」
「否定してほしかったのかもしれません」
少女は自分の足元を見る。
「本当は私の方が優れている、と」
それを口にすると、自分の中にまだそんな願いがあったことが恥ずかしく感じられた。
「でも、それでは何も変わりませんよね」
「どうだろう」
「え?」
「俺には姉妹のこと分からないから」
ユウは安易に肯定しなかった。
「ただ、妹さんがすごいのと、あんたが何かできるのは別じゃない?」
「……ベルさんにも、似たようなことを言われました」
「じゃあベル爺さんの方が詳しい」
「なぜですか?」
「七十七年生きてるから」
「年齢で決めるのですか?」
「俺より五十年長いよ」
「そう考えると、すごいですね」
少女は少し笑った。
「妹さんの方が上手いことがあってもいいんじゃない?」
ユウが言う。
少女は歩きながら聞く。
「はい」
「逆に、あんたの方が上手いことがあってもいいし」
少女の胸が少しざわついた。
「でも、それを探して勝たないと駄目って話でもないと思う」
少女は顔を上げた。
まさに、心のどこかで考えかけていたことだった。
妹より自分が優れているものを見つければ、救われるのではないか。
妹にはできないことが自分にできれば、今までの比較をひっくり返せるのではないか。
けれど、それでは結局、同じ場所から動けない。
「……勝たなくても?」
「姉妹って勝負なの?」
「違うと思います」
「じゃあいいんじゃない」
ユウの答えは簡単だった。
少女はすぐには笑えなかった。
胸の奥で、長く絡まっていた糸の一部へ触れたような感覚があった。
「私、ずっと妹に勝ちたかったのかもしれません」
声にすると苦しかった。
「妹を嫌いではなかったのに」
少女は少し歩みを遅くする。
ユウも合わせる。
「一度くらい、私の方がすごいと両親に言ってほしかった。妹より私の方ができると、認めてほしかったのだと思います」
風が草を揺らす音がする。
ユウは口を挟まない。
「でも……もし何か一つ勝てても、きっと次を探したのでしょうね」
「かもしれないね」
「終わらない」
「うん」
少女は自分の胸へ手を置いた。
「なら、どうすれば終われるのでしょう」
その問いに、ユウはしばらく答えなかった。
「俺が決めていいの?」
やがて返ってきた言葉に、少女は目を瞬いた。
「……よくないです」
「じゃあ、分かんない」
「ずるいです」
「だってあんたの話だし」
「そうですが」
「でも、今日すぐ終わらせなくていいんじゃない?」
少女は小さく息を吐いた。
「やはり、それなのですね」
「便利だからね」
「ユウさんが一番使っています」
「おすすめだよ」
少女はとうとう笑った。
マーサの家が見えてきたところで、少女は右足を確認した。
「一と二の間です」
「上がった?」
「少し」
「じゃあ昼は休み?」
「はい。午後はまだ決めません」
「いいね」
「ユウさんは?」
「昼食べたら少し寝ようかな」
少女は驚いて彼を見る。
「昼寝ですか?」
「何その顔」
「自分から?」
「俺だってするよ」
「本当に?」
「最近、俺の信用なくない?」
「休むことについては、少し」
「マーサ婆ちゃんのせいだな」
「村の皆さんが言っています」
「全員?」
「ベルさんも」
「包囲されてる……」
ユウが遠い目をする。
少女は笑った。
家へ戻ると、マーサが昼食の準備をしていた。
「おかえり」
「ただいまです」
少女は自然に答えた。
もう、その言葉を口にするたびに立ち止まることはなかった。
「どうだった?」
「楽しかったです」
「指は?」
「あります」
「ならよし」
マーサは少女の手を確認し、本当に傷がないと分かると頷いた。
「これをいただきました」
少女は持ち帰った木片を見せた。
マーサは四つの削り跡を見る。
「二つ目、ずいぶん深いね」
「失敗しました」
「そうかい」
「でも、捨てないことにしました」
「何に使うんだい?」
少女は考える。
「使わなくてもよいと思っています」
「じゃあ何で持ってるんだい?」
「今日、私がやったことが残っているので」
マーサは少女の顔を見た。
「そうかい」
それだけだった。
昼食を終えると、少女は宣言した通り休むことにした。
右足の違和感は、座っているうちに一まで下がった。
窓辺の椅子へ腰を預け、木片を膝の上に置く。
指で削り跡をなぞった。
一つ目。
二つ目。
三つ目。
四つ目。
上手くなっている。
けれど、一番上手い必要はない。
少女はまだ、その考えを完全には信じられなかった。
妹より劣っている。
その言葉は、今でも胸の奥へ鋭く刺さる。
自分の人生の大部分を支配してきた痛みなのだから、当然なのかもしれない。
それでも、今日は新しい言葉が一つ加わった。
妹の方が上手でも、自分がやりたいならやっていい。
少女は木片を窓辺へ置いた。
それを見ながら、ゆっくり目を閉じる。
いつの間にか眠っていた。
目を覚ました時、窓から差し込む光は少し傾いていた。
少女は慌てて身体を起こしかけ、すぐに止まる。
眠ってしまった。
どのくらいだろう。
以前なら真っ先に時間を確認し、失った時間を取り戻そうとした。
今日は窓の外を見る。
村は変わらずそこにある。
誰も自分を起こしに来ていない。
急ぐ予定もない。
「……よく眠りました」
少女は小さく伸びをした。
居間へ出ると、マーサが縫い物をしていた。
「起きたかい」
「どのくらい眠っていました?」
「半刻ちょっとじゃないかね」
「そんなに」
「足は?」
少女は立ったまま確認する。
「零に近いです」
「じゃあ昼寝した甲斐があったね」
「はい」
少女は素直に頷いた。
「午後はどうする?」
マーサが尋ねる。
少女は少し考えた。
今からベルのところへ戻ることもできる。
サナのところへ行くこともできる。
オルドの鶏を見ることもできる。
けれど、今日はもう十分な気がした。
「……今日は、このままここにいます」
「そうかい」
「何かお手伝いできることがあれば、少しだけ」
「縫い物やるかい?」
少女はマーサの手元を見る。
古い布のほつれを直している。
裁縫なら、公爵家でも習った。
「それなら、できます」
答えた後、少女は少し考え直した。
「たぶん」
「たぶん?」
「以前はできました。でも、マーサさんのやり方とは違うかもしれません」
「見せてみな」
少女はマーサの向かいへ座った。
針と糸を受け取る。
それを持つ手には、鑿を持った時とは違う馴染みがあった。
針へ糸を通し、布の端を整える。
少女が縫い始めると、マーサが少し驚いた顔をした。
「上手いじゃないか」
少女の手が止まりかける。
上手い。
その言葉に、昔ならすぐ次の考えが続いた。
妹ならもっと。
実際、妹も裁縫は得意だった。
少女は息を吐く。
「ありがとうございます」
それだけを返した。
妹のことは、頭に浮かんだ。
消えてはいない。
けれど、口には出さなかった。
「これくらいでよいですか?」
数針進めて、少女が尋ねる。
マーサは縫い目を見る。
「細かすぎるね」
少女の指が止まった。
「細かすぎますか?」
「服の飾りなら綺麗だけど、これは作業用の布だ。もう少し粗くていい」
「でも、粗いと見栄えが」
「誰が見るんだい?」
「……マーサさん?」
「私は使えりゃいい」
少女は自分の縫い目を見る。
確かに綺麗だ。
だが、一針ずつ細かく縫っているため時間がかかる。
「速く縫うために、粗くするのですか?」
「必要な丈夫さがあればね」
「綺麗な方がよいとは限らない?」
「物による」
サナと同じ答えだった。
「では、次は少し広くしてみます」
少女は縫い目の間隔を広げた。
最初は落ち着かない。
手を抜いているように感じる。
しかし数針進むと、確かに速い。
「これで十分ですか?」
「十分」
「……本当に?」
「引っ張ってみな」
少女は縫った場所を両側から軽く引く。
ほどけない。
役目を果たしている。
「十分ですね」
「だろ」
少女は笑った。
鑿では、最初から上手くできなかった。
裁縫では、自分ができるやり方よりも簡単なやり方を教わった。
どちらも新しかった。
できないなら練習する。
できるからといって、必要以上に完璧にしなくてもいい。
少女は縫い物を続けながら、自分の中にあった「正しくやらなければならない」という線が、ほんの少しだけ柔らかくなるのを感じた。
夕方近くになった頃、家の外からガルドの声が聞こえてきた。
「マーサー!」
「今度は何だい!」
マーサが縫い物を置く。
少女も顔を上げた。
ガルドは玄関前まで来ると、籠を一つ掲げた。
「豆だ!」
「またかい!」
「採れた!」
「見りゃ分かるよ!」
少女は思わず笑った。
「お前も食え!」
ガルドが少女へ籠を差し出す。
「こんなに?」
「若いんだから食え!」
「十九歳は、そんなに豆を食べる年齢なのですか?」
「食べる!」
「根拠がありますか?」
「俺が十九の頃は食った!」
「ガルドさん基準なのですね」
「悪いか!」
「少し不安です」
少女が言うと、マーサまで笑い出した。
ガルドは籠を置き、ふと窓辺の木片に気づいた。
「なんだこれ!」
「今日、私が鑿で削りました」
「おお!」
ガルドが手に取る。
「ここ失敗してるぞ!」
「知っています」
「ここは上手いな!」
「ありがとうございます」
「何作るんだ?」
「何も作りません」
ガルドが目を丸くした。
「何も?」
「練習です」
「そうか!」
数秒考えただけで納得した。
「じゃあ次は何か作れ!」
「まだ決めていません」
「そうか!」
それも受け入れられた。
少女はガルドから木片を返してもらう。
失敗したところも、上手くできたところも、同じ木に残っている。
どちらか一方だけを消す必要はない。
その日の自分が、そこに全部残っている。
夕食には、当然のように豆が出た。
「昼も豆でしたよね」
少女が器を見る。
「朝もだよ」
マーサが答える。
「三食ですか?」
「ガルドが持ってくるからね」
「明日も食え!」
なぜかまだ家にいたガルドが笑う。
「さすがに別のものも食べたいです」
少女は少し迷った後、そう言った。
ガルドが目を丸くする。
「豆嫌いか?」
「嫌いではありません」
「なら食える!」
「食べられることと、毎食食べたいことは別です」
口にしてから、少女は自分で可笑しくなった。
サナの言葉と似ている。
できることと、やめてはいけないことは別。
食べられることと、食べたいことも別だ。
「明日は卵がいいです」
少女は自分の希望を口にした。
マーサが笑う。
「オルドに言っとくよ」
「俺の豆は!」
「昼に食べるかもしれません」
「食うのか!」
「豆は嫌いではありませんから」
「ならいい!」
ガルドは満足した。
少女は笑いながら豆を口へ運んだ。
夜、客間へ戻った少女は、ベルからもらった木片を窓辺に置いた。
薄暗い部屋の中でも、削った場所の凹凸は指で分かる。
少女は二回目に失敗した深い跡へ触れた。
妹なら。
その言葉が頭に浮かぶ。
以前なら、そこで終わっていた。
妹ならもっと上手くできた。
妹なら一度でできた。
だから私は駄目だ。
少女は指を少し横へ動かした。
三回目の跡。
自分も、できた。
「……私も、できました」
小さく口にする。
妹より上手い必要はない。
妹より才能があることを証明しなくてもいい。
まだ、そう心から信じ切れるわけではなかった。
明日になれば、また比較するかもしれない。
何かに失敗すれば、妹ならと思うかもしれない。
それでも今日、初めてその言葉の後へ別の言葉を置けた。
少女は木片を窓辺へ戻し、寝台へ腰を下ろした。
明日は何をしよう。
ベルのところへもう一度行ってもいい。
行かなくてもいい。
オルドの鶏を見てもいい。
マーサの家にいてもいい。
そして、もう少し先には商人が来る。
そのことを考えると、胸にはやはり緊張が生まれた。
王都の話を聞くことになるかもしれない。
自分がここにいることが、外へ広がっているかもしれない。
何も起きないかもしれない。
分からない。
少女はその言葉を、以前より怖がらずに受け止めた。
分からないものは、まだ決めなくていい。
明日のことは、明日の自分が考えればいい。
少女は灯りを消し、布団へ入った。
窓辺には、上手く削れたところも、失敗して欠けたところも残った一本の木片がある。
どちらも今日の自分だった。
そして、そのどちらがあっても、明日もう一度鑿を持つことはできる。
少女は目を閉じた。
上手くできるから、やっていいのではない。
誰かより優れているから、選んでいいのでもない。
自分がやってみたいから、やってみる。
その感覚を本当に自分のものにするには、まだ時間がかかるだろう。
それでも今日は、その入口に自分の足で立てた気がしていた。




