エレクトーン
それから、僕らは[jesus]のコーラスを練習しながら。
こんどはおおっぴらに歌える(笑)ので、そんなに気にしなくてもいい。
「趣味です」と言っていればいいのだ。(笑でも、たかたか先生は気づいてて
「あいつら、またやってるな」と。音楽を知っていればまあ、だいたいあらすじは判るらしい。
そうだろうけど。例によって芸術的な人だから、あんまり封建は好きじゃなかったらしい。
その頃は戦後の雰囲気が残っていて、封建とか服従って嫌ってたものだった、教師も。
だから
自由だったのだが、その5年後くらいから封建っぽくなる。なぜか。
僕らは高校に行ってしまって知らなかったが)
「ベース、どうしようか」と、僕は音楽準備室に行って
使い手の居ないコントラバスを抱えてみた。
大きいが、意外と軽い。
弦のテンションは強いけど、エレキベースでもそんなものだと
思った。
「これ、慣れてもエレキみたいに弾くまで時間掛かるよね」と僕は
中山に言った。
「深町ならできるよ、なんだって」と、中山はいい加減な事を(笑)
お坊さんの孫のせいか、なーんとなく信じられそうな感じだが
死んでから天国にいけなかったと知っても「金返せ」っていえないもんなぁ(笑)
「あ」僕は思い出した。
中山が「ナニ?」と聞く。
窓際の明かりが眩しい、薄暗い準備室。
「市民文化センターにエレクトーン無いかな?」
中山は「あるだろうけど、練習できないよ」
そうかぁ....。
僕は、学校の裏庭から田んぼの方へ出かけた。畦道しかないのでのんびり歩けて好きだった。
畦道には桑の木があって。
どうしてか、と言うとどこの土地でも、昔は養蚕をしていたので
自宅で飼っている人が、植えたらしい。
それで、僕らも小学校の頃は蚕を飼ったりして。
蛹になったところで殺されるのがかわいそうで、茹でて糸にするって
なんて残酷だと思ったものだった。
自由を束縛されて、最後にはああなるのかな、なんて
事も思ったけど
それは若さ故。怖い事も思うのだ。
元々人間の妄想って、防御の本能だから
一番悪い事を考えるものだから。
この時も、少し行き詰っていたのかもしれない。
田んぼで風に吹かれていると、支線の単線を
大きな蒸気機関車が貨物列車を引いて下ってきた。
戦時中の名残で、まだ走っているのだった、田舎には。




