ともちゃんの気持ち
朋ちゃんは、のんびりしてて
おとなしい。
ひとりになると、すこし憂いの雰囲気。
そこが、なんとなくフランスふうの
外観に似合ってて
男子にもファンが多かったらしい。
らしい、と言うのは
僕は、あんまり男子との
付き合いが多くなかったから。
(後、修学旅行の夜に
おきまりの告白タイム、みたいなので
それを知る。
朋ちゃんの片思いの相手が
別の女の子を好き、なんて事も)。
なんというか、音楽とか
そういう付き合いが多いと
どちらかと言うと、女の子の
方が多かったかな、と言う感じ。
朋ちゃんの憂いには、理由があって
ひとと少し違ってる生い立ち
、と言う悩みだった。
あとで22才になってから、僕は聞く事になるのだけど。
そんな朋ちゃんから見ると、僕は
「女の子みたいだね」と言う事なのだけど。
乱暴でなくておとなしい、と言う事なのかも
しれないけれど。
僕は、ひとと自分を比べる事はしないので
同じにしよう、なんて
別に思わなかった。
それなので、ブラスバンドで
コンクール、なんて
比べられるのもあまり、好きではなかった。
けど、まあ、先生が
怖い人でもなくて安心したし。
ブラスバンドの友達と一緒なのは
それなりに楽しかった。
放課後の2年F組は、たいてい
みんな帰ってしまって
3時半あたりになって、僕は
ソフトケースから、ギターを取り出して
なんとなく弾いてみる。
アルベジオ。
適当なコード。
時折マイナー。
なんて、していると
朋ちゃん、クラリネット持って
パート練習抜けて来る(笑)。
「なんか弾いてー」って。
それで、適当な曲をアルベジオで。
「なんて曲?」と
朋ちゃんはにこにこ。
空いてる椅子に座って。
クラリネットは、大切そうに抱えて。
「それ、自分の?」
朋ちゃんは首を振る。
柔らかい髪が振るえてる。
西陽のせいで、少しだけ
大人っぽく見える。
元々大人っぽいのだけど、そのせいで
クラスの男の子は、ちょっと敬遠して
しまうらしい。
隠れて見る感じ。
背も高いので、大抵の男子は見下ろされてしまうから
そのせいもあった。
「クラリネットは高くて買えないよー」と
朋ちゃんはにこにこ。
その割には、英語の辞書を買う時は
革装のものを選んだり(笑)それなりに
女の子らしい。
学校の楽曲なら、置いて帰れるし。
重くない、と言う理由もあるだろうね。
「少し弾かせて」と、朋ちゃん。
僕は、ストラップを首から外して
朋ちゃんにギターを渡した。
朋ちゃんは座ったままギターを持って
柔らかい指で、フレッドを押さえて
アルベジオの雰囲気。
でも、隣の弦を弾いてしまう。
それでもそこそこ音楽に聞こえるのは
コードがあってるから。
「クラリネットの方が楽だね」と
メロディーを弾くならそうだろうと
僕は、両方演奏したので
そう思う。
「お兄ちゃん、いないと淋しいね」と
朋ちゃん。
朋ちゃんにお兄ちゃんはいないのか
よく知らないが
なんとなく、聞かない方がいいような
そんな気もして
聞かなかった。
音楽に触れていれば楽しい。それだけで
幸福だと
そう思ってた僕も、なーんとなく
朋ちゃんに似てたのかもしれない。
「フルートの方が好き?」と、僕は尋ねて見ると
朋ちゃんは、こっくりとうなづく。
幼い子のよう。
「フルートって綺麗だもんね、たけちゃんと
代わって貰えば」と、僕は言う。
たけちゃんは、僕らの友達の
おそばやさん。
「うん、先生が決めたから」と、朋ちゃん。
元々、そんなにこだわりがある訳でも
ないらしい(笑)。
僕は、ずっと後でフルートを買う。
なんとなく、この時の事を覚えていたから
かもしれない。
実際に、フルートを持ってみると
割と重くて。
中学生だったら大変だったかな、なんて思う(笑)。
「お兄ちゃん、チューバだったんだよね」
うん、と僕。
「三年生のね、先輩に久美子さんっていて
お兄ちゃんと仲良かったんだって」
と、朋ちゃんは、なんとなく恥ずかしそうに。
「ああ、知ってる。チョコ貰ったっけ。バレンタインに。アニキは家でそれを見せてくれて」
と、僕が言うと、朋ちゃんは
「そっか、公認だったんだ」
公認もなにも、当時の中学生だし
危ない事件にはなる訳もない、田舎の
中学生。
学校の周りはたんぼと工場で
遠くに山と海。
長閑なところだと、あまり
妙な気持ちにもならない。
はずだが(笑)
朋ちゃんと友達になれたのも
悪友やまこーが
夏休みに女の子誘ってキャンプしよう、
そこで襲おう(笑)なんて妄想して
僕の相手に朋ちゃんを考えたのだった。
もちろん、そんなのは空想なのだけど。
「でも、アニキは卒業して東京に行っちゃったし、そこで終わりかな」
と、僕が言うと、朋ちゃんは「淋しいね」
さびしがり、なのかな。
「みんな、いつかばらばらになっちゃうのかな」
なんて、言う朋ちゃん。
「卒業すればそうなるだろうけど。」と
僕が言うと
「しゅーねん、冷静だね、いつも。
淋しくない、お別れなんて」
と、朋ちゃんは瞳を潤ませて言う。
「そりゃ寂しいけど、でも仕方ないよね。
好きだったら、離れ離れでも続くんじゃない?」
と言うと、朋ちゃんは少し考えた
それで
「うん、そうだよね!」と、元気に言った。
よく気持ちが変わる子なので
そういうあたりも、男の子が怖がる
あたりだった。
後で解るんだけど、朋ちゃんの生い立ちと
このお話がつながっていて
それで、朋ちゃんは
なんとなく元気になれたらしい。




