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新世界から

音楽室は、なぜか

ひな壇になっていて


居眠りがしにくい構造(笑)。


一番前にグランドピアノ。



放課後は、大抵



ブラスバンドの誰かがいた。




中山に続いて、朋ちゃん、初美ちゃん、と

僕が入っていったので




たまたまそこにいた外田は、察しが

ついたみたい。

「おう、来たか。頼むよ」



この外田は、やがて



音大に行って、プロになるのだけど



この時、そんな事はまさか想像にない。



そうそう、中山も

同じN響に入るのだ。



不思議な事だけれど。


朋ちゃんはnurse、初美ちゃんは

音楽の先生。



そして僕はというと、フリーのエンジニアとして

あちこちの研究所を渡り歩く、

まるで、ブラスバンドの助っ人みたい(笑)




性格は変わらないのかもしれない。





グランドピアノの脇に、ドアがあって



そこが準備室。



楽器がある。




そこに入ると、幸い


先生はいない。




ハードケースに入った楽器が多数。


と、言う事は



部員が少ない。かつては多数いた。




と言う事らしい。




日の当たらない奥に、黒い楽器のハードケース。



ユーホはふたつある。




ま、どっちでもいいか、と

手前にあった方を取って





ケースを開けて見る。




「選ばなくていいの?」と初美ちゃん。




「ま。いいよ動けば」と僕。



「しゅーねんらしいね」と、朋ちゃんは


甘い声でにっこり。




マウスピースもついてたので



それをくっつけて、譜面の音を


出してみた。




[新世界から]だ。



兄貴も吹いてたっけ、と


思い出しながら吹くと



「初見で吹けるんだ」と、朋ちゃんは

びっくりするから




「兄貴が、ほら、チューバだったから」と



思い出す。


家で、マウスピースを


ゴムホース丸めたものにつないで


じょうごをベルに見立てて吹いていたっけ。



まあ、ピストンがないんだけど(笑)。





「そっか、お兄さん元気にしてるのかな」と

朋ちゃん。




兄貴は、自動車が好きだから

東京の専門学校に行っている。


中学では、好きな女の子から

バレンタインにチョコ貰ったりして

卒業の後は、どうしてるのかなって

僕も思う。


僕らも、あと2年ない。



いい思い出になるといいけど。





突然、音楽準備室の

ドアが空いて



厳しい表情の痩せた、七三分けの

おじさんが入ってくる。


高橋孝先生だ。



僕らはたかたか、ってあだ名をつけてた(笑)。





「あ、たかたか先生」と、僕が言うと



先生は柔和な顔になりメタルフレームの眼鏡を

直した「タク?は、卒業したよな、弟か。

よく似てるな、顔も音も」




本人はそう思わないのだが(笑)。






「似てますか」と、僕が言うと




先生は「ああ。家で聞いてた?」と



さすがに鋭い。専門家だ。




「ブラバン入るのか?」と、先生は言う。




「いえ、大会まで助っ人でと

中山くんが言うので」



というと、先生は「そうか。新入生の時も

待っていたんだ」と。




そこは教育者なので、強制はしない。




「兄貴と比べられるのも嫌で」と

僕は本当の事を言う。



すると先生は「音楽は比べるものじゃない。

タクはタク、君は君。似てても違う。


チューバとユーホじゃ違うしな」



と、先生はにっこり。




僕はついでに「先生って、聞いてた印象と

随分違うんですね。しごきがきつくて

大会に勝ちたいだけの鬼コーチだって」と

僕が言うと


中山や、初美ちゃんは驚く。

先生に失礼だと思ったのだろう。





先生は「それは違うな。勝ちたいより

いい音を出したいだけだ。大会は

聞いてもらうところ、と言うだけだ」



僕は、それを聞いて


なんとなく意外。



ま、いいか。




「ちょっと合わせてみるか」と、たかたか先生。



中山は、驚いたが


パート練習してるみんなのうち



残っている人を音楽室に呼んだ。





ひな壇の音楽室は、合奏するのに

ちょっと不向きだけど。


集まったのは20人くらい。


でもま、なんとかなるだろう。




たかたか先生は、穏やかな表情で


タクトを上げた。



[新世界から]は


最初から合奏。だけど



全奏がばらばらだ(笑)



これは.....(笑)先生は渋い顔になる。




演奏を止めて「うむ。パート練習を

続けた方がいいな。ユーホが今日入った。

みんなも知ってると思うが、タクの弟だ。

とりあえず大会まで。宜しく頼む。


パートは低音一緒でいいだろう。」



全員、のどかに返事。



たかたか先生も、少し拍子抜け。




まあ、中山の言うように

これなら僕でもなんとかなるだろう(笑)。



でも思ったのは、合奏って

楽しいのだ。



バンド。


音を一緒に出すって。それだけで。

楽しい。


みんな一緒って。


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