第3話 忍者としての戦い方
セイをテイムした翌日。
俺は、日常の相棒として彼に自分の秘密を打ち明けることにした。さすがに、こればっかりは秘密にし続けるのもしんどいからな?
「セイ、話がある」
「はい、リアン」
最初は『主様』とか連呼してきたけど。なんかこしょばゆいから、普通に名前呼びにさせた。だって、前世のどっちかでもそんな部下とか持った記憶ないから。
「俺は今十六歳なんだけど。いくつか変なものがある」
「変な?」
「前世の記憶ってやつ。それがしかも、二人分あるんだ」
「! すごいね!!」
「……いや、すごいか?」
「だって。ぼくみたいな子どもよりいっぱい色んな経験があるんでしょう?」
「……まあ、そうだけど」
そんな言い方をされるとは思ってもみなかったから、なんか胸の奥がこしょばゆい。これが、無垢な童心があるってことなのか? 可愛いし、聖獣だし、相棒になるんだから嬉しいけど。
(……随分と、慕われているな)
(撫でくりまわしたいわ~~。もふもふ最高!!)
で、なんで脳内会話がときどきツッコミ入るんだ!? たしかに俺の考え読んだかもだけど、適格過ぎてそっちもこしょばゆい!!
とりあえず、秘密は打ち明けたからまずは腹ごしらえしなくちゃだな。材料をインベントリから出したが……大したもんは見当たらない。せっかくだから、セイにも狩りを慣らせてやりたいから出動することにした。
「セイ。今から朝飯の調達だ。ウサギでもなんでもいいから、狩りの練習もするぞ?」
「うん! ……風刃だけじゃダメ?」
「そうだな。一撃で倒すのも大事だが、相手の習性を確かめるのも大事なんだ」
なにかの群れにいきなり突っ込みに行くわけじゃないし、セイを抱っこしてから地面を蹴って枝に飛び乗る。セイのはしゃぐ声がしたが、サイズ的に俺が運んだ方が最初は早いからな? 成長して、大型になるまで何年かかるかわからんが……もふもふした手触りが相変わらず気持ちがいい。
庇護欲みたいなのもあるけど、女だったときの母性本能が自然と出てくるくらいに愛でたい気分にもなっちまう。ペットじゃなくて、従魔だからちゃんと育てるけど。
「? なんか、遠吠えが聞こえた?」
「は?」
俺の聴覚じゃそこを聞き取ることは出来なかったが、セイの方がフェンリルな分鋭いところがあるからかもしれない。もしかして、ワーウルフ?とか思いかけたけど……肉は美味くないし、討伐対象にならない限りは関りたくないので却下。
枝の間を跳びながら、下も眺めてはいたが朝だから夜行性の獣たちは巣穴にいるのかであんまり見当たらない。
とくれば、その習性を利用するか。
「リアン。臭いとかしないね?」
「ん~~。巣穴探して、そこから一匹でもいいから狩るか」
「変な臭いじゃない方がいいの?」
「……なんか、見つけたのか?」
「うん。右奥の方からだけど」
セイの言葉を信じて、ちょっとそっちに方向転換。奥に行けば行くほど、木の枝が減ってきたから長めの跳躍をして移ったが……大木のようなもんが出てきたときには、ウロの巣穴かと思って一旦手前で降りた。
(……気配を探れ)
忍者の方が、指示するかのように呼びかけていたがその通りだと反論はしない。
かつての自分の経験を今活かすだけ。神経を研ぎ澄ましながら、目を凝らしてウロの中を覗き見る。黒くてでっかい影が見えたが……ワーウルフよりもでかい。ありゃ、多分熊型の魔物か??
「……いきなり。大物か」
「リアン。ぼく、ダメだった?」
「ダメじゃないが。……よく匂いだけでわかったな?」
「うん。おかあさんがくれた、お肉に似た臭いしたから」
「なるほど」
自立するのに早い年齢から追い出した割には、ちゃんと食事の躾とかはしてたみたいだ。
とはいえ、いきなりのデビュー戦にセイをここで活躍できる保証はない。見学してろ、と、茂みに待機してもらってから俺は腰の短剣を二本抜いた。苦無の代わりじゃないけど、二本あると戦い易いんだよな? デカブツの場合特に。
『あ"??』
態と足音を立てたお陰で相手が気が付いたのか。
巣穴から顔を出してきて……まあ、今の俺の倍くらいの身長差だなと理解。オークじゃなくて、熊型の魔物で正解。雑食なはずだから、毛皮の下には適度な脂身があることだろう。こんな知識は女だったときの調理技法から思い出せる範囲だから、今まで食中りになったこともない。
「リアン、参る!」
ダッ、と地面を蹴って、間合いを一気に詰める。首根っこに当たるように身体をひねってから横に振り、短剣が深く刺さったのかで赤黒い血が噴き出した。汚れるのは嫌だから、いったん地面に降りてもう一度蹴ってから背後に回る。
魔物は血の量と傷の具合に慌てているのかで俺に気づていない。デカいけど、知能はセイほどない感じだ。あったらあったで面倒ではあるけどな。
「おっ、らよ!!」
今度は後ろから首の付け根を狙って、短剣を強めに振れば……皮が割けて肉が見えた、いい感じの脂身も見えたので口笛を吹いてしまう。これは、いい獲物なんだなと。
もういっちょ、と、あとは急所をいくつか刺しまくれば仕上げは整った。
うつ伏せに倒れた魔物は全身傷まみれになって絶命。完全に動かなくなるまでは完了とは言えない。駆け出しの頃は、記憶と技術があっても経験不足で何回もヘマしたからな?
セイも茂みで大人しくしてくれているのかでこっちには来ない。
待つことしばらく。血が地面に沁み込んでいくが、そこを気にせずに魔物が事切れたのを確認してから……短剣の血を振り払い、鞘に納めた。
「セイ! 出てきていいぞ!」
「はい!」
わふわふ言いながら、茂みから出てきたセイは俺が狩った獲物を見ると、尻尾を大きくふりふりした。
「得物を使うとこんな感じだが……お前にいきなり、こんなデカいのを任せたりはしない」
「凄い!! こんな大きなの、リアンひとりで!!」
「解体すっから、それは覚えるのに手伝ってくれ」
「はい!」
皮は丁寧に剥げば、ギルドとかが買い取りしてくれるだろうから傷つけ過ぎないことも注意して。
骨は骨で、スープの出汁にもなるからインベントリにもちろん入れておく。臓物は……魔物のだから、魔素たっぷりだろうし却下。これは講習受けた時に、指導員のおっさんとかが言ってたんだよな? 前世の女だったときは、臓物の焼き肉とか色々行ってたりしてたけど……そういうのは、普通の野生動物で作ったら美味かったので実証済み。
とにかく、腹は減ったから朝飯だ!!
次回は土曜日〜




