第12話 ギルド内の露店
「はい、たしかに。採取と討伐任務、どちらも完了しているのを承りました」
「ん。ありがとうございます」
報酬を受け取ってから、ぐるっと室内を見てみたが……サファもだが、他に顔見知りの冒険者はいなかった。とくれば、露店巡りをゆっくり出来るもんだ。
露店にはギルドの許可申請をきちんと通した『商人』たちが簡単な店を出しているシステム。
忍者でも女の方でも『フリーマーケット』とか『露天商』とか言うもんの記憶はあったが……それに近い感じか? 食いもんから日用品まで、なんでもござれではなくてもだいたいの商品が出そろっている。
俺の場合は、火薬に必要な材料以外はスパイスがほしいんで回ったりはするが……セイがいることだし、スパイス巡りをするのもいいだろう。肉もいいが、今後は魚も食うことはあるだろうからインベントリにたくさん保管しておいて損ではない。
「らっしゃい。うちは国内外、いろんなとこのスパイスを揃えているぞ~」
セイを頭に乗せた俺を見て、一瞬目を丸くしたがすぐに営業モードに切り替わった。たしかに、セイのような可愛いもふもふを連れた冒険者は、ちょっと珍しいもんな? 本当はフェンリルだけど、精霊族のウルフディアってことにしているから……可愛さ全開に、触ってみたいとか思ったのかもしれない。
それを我慢しての、切り替えについては一応接客のプロだと感心しかけたが。
(スパイスは……たしかに、色々揃っているな??)
料理人だったときの記憶を掘り返してみたが。あれやこれを使えば、セイに美味いものを食わせてやることが出来る気がした。
(カレーなんてどやろ? お子様っぽく、甘めの辛さにしたらセイちゃん喜ぶんちゃう?)
(……わっぱに甘くはないか?)
(あ~ら? 食育の基本は、慣れさせることから大事やで?)
脳内ツッコミは軽くスルーしようとしたが。女の言う通り、食事の慣れについては大事なことだ。
セイの喜ぶ顔はいくらでも見たいし、なにより『食べにくい』ものはあまり作りたくはない。なら、足りないスパイスと少し値は張ったが『はちみつ』も購入して……。ほかの露店でも、必要な材料をあれこれ買うことにした。任務を終えたばかりなので、懐には少し余裕があったから問題はない。揚げ物は今度作ることにした。
『リアン~? いっぱい買ってたけど、なにか作るの??』
『ああ。俺も好きな料理の材料だ。セイも気に入ると思う』
『わ~い!』
屋外の調理もいいが、たまには厨房も使いたい。宿屋に戻り、女将さんに事情を伝えれば……夕飯づくりで忙しくない時間帯であれば大丈夫だと、許可を出してくれた。
だいたいの時間に予約をして、もう一度ギルドの露店に足を向けて……せっかくなら、女将さんらにも振舞いたくて、もう少し材料を買い足すことにした。今回はコカトリスの肉とオークの肉を。鮮度がいいものを選んでからインベントリに保管。
「よ~し。作るか~」
セイにはまだバランス感覚を養うのに、俺の頭の上で座る練習をしているが邪魔だとは思わない。むしろ、鍛錬に熱心だと感心するくらいだ。
その間に、まずはスパイスの配合から始めていく。料理人だった女の言う通り、はちみつを活かすための甘めのブレンド。俺個人だけなら少し辛いのが好みではあっても、今回はセイのために作るのだ。
マイルドな味付けで、美味い『カレーライス』を作ることには力が入る。小麦粉とバターを使って『ルゥ』を作っていくのもいつもより楽しく感じた。自然と鼻歌を口ずさんでいると、音程は少し外れていたが真似するセイの様子も可愛くて仕方がない。
まだ出会って少ししか経っていないのに、愛玩の意味でも可愛いなと悶えそうになった。
次回は土曜日〜




