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変態いじめられっ子

朝の教室。


ショウ、ユウマ、デブゴンの三人が、窓際で女子の話をしていた。


「ショウって、彼女と何年だっけ?」


ユウマが机に腰をかける。


「三年ちょい。幼馴染だから、知り合ってからならもっと長いけど」


「よく飽きないな。喧嘩とかないの?」


「今んとこな。ユウマはどうなんだよ」


ショウがユウマに顔を向けた。


ユウマは女子から人気があるものの、特定の彼女を作ろうとはしない。


「付き合うと面倒じゃん。遊ぶくらいがちょうどいいんだよ」


「なんかむかつくな。でも、また遊ぶとき誘ってくれよ」


ユウマがお菓子を食べながら頷いた。


「そういうデブゴンは?」


ショウがデブゴンの肩を叩く。


「好きな子いるんだろ?名前なんつったっけ」


デブゴンの顔が赤くなる。


「いねえよ」


「あれだよ。あのブスな子」


デブゴンの笑顔が、一瞬だけ消えた。


「うるせえな!」


ショウとユウマが声を上げて笑う。


そこへ教室の扉が乱暴に開いた。


ダイチだった。


鞄を机へ投げ、誰にも挨拶をしない。


三人の笑い声が小さくなる。


「柚希と話せたのか?」


ショウが恐る恐る尋ねた。


「ああ、戻るつもりはねえってよ」


ダイチは椅子を蹴り飛ばす。


近くの生徒が驚いて振り向いたものの、すぐに目を逸らす。


「他の男が好きだから無理だとさ」


「相手、分かったの?」


「分かってたら、もうボコボコにしてる」


教室の空気が一気に重くなった。


ダイチは苛立ったまま周囲を見回し、席に座るレンジへ目を止める。


「おい。ストレス解消に付き合えよ」



休み時間。


レンジは四人に囲まれ、教卓の前まで連れてこられた。


「よっしじゃあ、告白タイムな」


ダイチが、教室にいるクラスメイトを見渡す。


「じゃあ、吉井のとこ行って告ってこい」


レンジは困った顔をして動かない。


「さっさと行けよ!」


ダイチが後ろから蹴とばした。


レンジは仕方なく、吉井の席へ向かう。


一緒に話していた女子たちも、露骨に嫌そうな顔を見せた。


「好きです。付き合ってください」


レンジがボソボソと小声で言った。


「無理だから、来ないで」


即答だった。


後ろでは、ショウがスマホを構えている。


「もっと必死に頼めよ」


レンジは黙ったまま、もう一度頭を下げた。


「お願いします」


「マジで気持ち悪いんだけど」


ダイチたちの笑い声が廊下まで響く。


ショウが笑いながら言う。


「吉井じゃ、レベル高すぎじゃね」


ダイチが見回す。


「じゃあ、安野にしようぜ。安野ならワンチャンあるだろ」


その言葉にデブゴンがぴくっと反応した。


安野美幸は、デブゴンが密かに恋をしている子だった。


レンジが美幸の前に行き告白する。


すべて聞こえていた美幸は、困ったように目を伏せた。


「ごめんなさい」


「それだけ?」


ダイチが不満そうに口を挟む。


「もっとはっきり言えよ。気持ち悪いって」


美幸は何も答えない。


「早く言えよ」


ダイチに睨まれ、美幸の肩が小さく揺れた。


「……気持ち悪いです」


絞り出すような声だった。


ダイチが笑いながら言う。


「安野みたいなブスにまで、ふられたのかよ!」


三人が再び笑う。


ただ、デブゴンだけは笑えない。


美幸の横顔を、黙って見つめていた。



放課後。


四人はレンジを、旧校舎近くのトイレへ連れ込んだ。


普段はほとんど誰も来ない場所。


扉が閉まり、鍵がかかる。


「服脱げよ」


「嫌だよ」


ダイチがレンジの胸ぐらを掴む。


ショウとデブゴンが両腕を押さえ、制服を無理やり脱がせた。


シャツとズボンは、小さな窓から外へ投げ捨てられる。


「取りに行けば?」


ユウマが笑った。


直後、ダイチの拳が腹へ入る。


息が詰まり、レンジの体が折れた。


さらに背中を蹴られ、冷たい床へ倒れ込む。


「デブゴン、お前もやれ」


「わかったよ」


「早くしろ」


デブゴンは一度だけ唇を噛み、レンジの脇腹を強く蹴った。


続いてユウマも足を振り下ろす。


「俺までやる必要ある?」


口では嫌そうにしながら、顔は笑っていた。


ショウは少し離れた場所から撮影を続けている。


「顔はやめろよ。ばれるから」


やがてダイチは息を整え、床に倒れたレンジの頭を踏みつけた。


「少しはすっきりしたわ」


四人は笑いながらトイレを出ていく。


しばらくして、扉がもう一度開いた。


戻ってきたのはショウ。


丸めたジャージを、レンジのそばへ投げる。


「これ着ろよ」


レンジはゆっくり顔を上げた。


「……ありがとう」


ショウは笑って言う。


「勘違いすんな。ゴミ。いじめがバレたら面倒だからだよ」


ショウは扉に手をかける。


「お前、自殺でもしないと終わらないと思うぞ」


そう言い残し、今度こそ出ていった。


トイレに静けさが戻る。


レンジは床に座ったまま、閉ざされた扉を見つめていた。


一分。


二分。


その表情には、怒りも悲しみも浮かんでいない。


やがて、ショウから渡されたジャージへゆっくりと袖を通す。


「自殺でもしないと、終わらない……か」


その言葉を確かめるように、もう一度呟いた。


レンジはどこか恍惚のような表情を浮かべる。


「自殺なんかしないよ」


レンジは、痛む腹を押さえながら笑った。


「これから、最高に気持ちよくなれるんだから」


最初に消す相手は、もう決めていた。


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