表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/21

理央 止まらない復讐

教室では、ダイチがつまらなそうに授業を受けていた。


デブゴンとユウマが消え、ショウまで鼻の骨折で全治一カ月。


気づけば、ダイチの周りには誰もいなくなっている。


一緒に笑う相手も、レンジを押さえつける役もいない。


そのせいか、最近はレンジへちょっかいを出す回数も減っていた。


一方、レンジにはまだやることが残っている。


ショウのスマホから抜き取ったデータを、一つずつ確認していた。


いじめの動画。


クラスメイトとの写真。


理央とのやり取り。


その中の一枚で、レンジの指が止まった。


画面を見つめ、口元を歪める。


「いいもの持ってるじゃん」



昼休み。


レンジは隣の教室へ向かった。


黒髪のショートカットの女子生徒の前で足を止める。


ショウの幼馴染で、彼女でもある理央。


「ねえ」


理央はレンジを見るなり、露骨に顔をしかめた。


「気持ち悪いから、近寄らないでくれる?」


「あの、ショウのことで話があるんだけど」


「ここで?」


理央は周囲の視線を気にするように教室を見回した。


「みんなの前で話すの嫌だから、屋上にして」


そう言って先に教室を出る。


レンジも少し間を空けて、そのあとを追った。



屋上へ着くと、理央は腕を組んで振り返った。


「それで? ショウの話って何?」


「これなんだけど」


レンジはスマホを取り出し、一枚の写真を表示する。


そこには、ショウと理央がキスをしている姿が映っていた。


理央の目が大きく見開かれる。


「はあ!? なんであんたが持ってるのよ!」


レンジは困ったように視線を落とした。


「……ショウが千円で売ってくれた」


「売った?」


理央は意味が分からないという顔で、レンジと画面を交互に見る。


「うん。それで、一万円で売ってくれたのがこれ」


指を滑らせ、次の画像へ切り替えた。


理央の顔が一気に赤くなる。


「ちょっ……え、嘘でしょ」


慌ててスマホを奪おうとするが、レンジはさっと頭上へ持ち上げた。


そして口元を緩めながら言う。


「三万円で売ってくれた動画も見る?」


「やめて!」


理央の声が屋上に響く。


レンジはスマホを下ろさず、楽しそうに理央の反応を眺めていた。


そのとき、理央の頭に以前のショウの言葉が浮かぶ。


――今日、レンジから金取ったから、新しい靴買ったんだ。


レンジへのいじめが始まってから、ショウの羽振りは急によくなっていた。


理央はずっと、レンジから金を脅し取っているだけだと思っていた。


「お願い……」


理央の声が震えた。


「その動画、消して」


目には涙が浮かんでいる。


レンジはしばらく黙ってから、スマホをポケットへ戻した。


「あのさ。もうショウとは別れた方がいいんじゃないかな」


「……何よ、それ」


「だって、ダイチから柚希を奪ったのもショウなんだよ」


理央が顔を上げる。


「え?」


「二人でこっそり会ってた」


「なんで、いじめられてるあんたがそんなこと知ってるのよ」


「偶然、見かけたんだ」


レンジは何でもないことのように答える。


「写真もあるけど、見たい?」


理央は一瞬迷ったあと、首を振った。


先ほどまでの恥ずかしさは消え、代わりに怒りが顔へ浮かんでいる。


「動画は消しておいてあげるよ」


レンジは屋上の扉へ向かう。


「嘘だと思うなら、ショウ本人に確認してみれば?」


理央が何か言う前に、レンジは屋上から出ていった。



放課後。


理央はまっすぐショウのマンションへ向かった。


何度も訪れているため、ショウの母親も疑うことなく部屋へ通してくれる。


理央は勢いよく扉を開け、そのまま鞄を投げつけた。


鞄がショウの顔に当たり、鼻の固定具がずれる。


「痛ってえ! 何すんだよ!」


「あんた、柚希と何してたの?」


「は?」


ショウは固定具を押さえながら、理央を睨む。


「二人で会ってたんでしょ」


「誰から聞いたんだよ」


「レンジが見たって言ってた」


その名前を聞いた瞬間、ショウの顔が固まった。


「……レンジが?」


「それに、あいつが私たちの写真とか動画を持ってたんだけど」


「それは違う!」


ショウは慌ててベッドから身を乗り出す。


「あいつに奪われたんだよ!」


「はあ?」


「本当だって。あいつ、いじめられてるふりしてるだけなんだよ。実際は――」


「嘘ばっかりつかないでよ!」


理央の声が震える。


「レンジが、あんたからスマホを奪った? そんなわけないでしょ!」


「だから、あいつは普通じゃないんだよ!」


「もういい」


理央は床に落ちた鞄を拾い上げた。


「別れる。もう二度と話しかけないで」


「待てよ、理央!」


ショウが呼び止めても、理央は振り返らない。


扉を強く閉め、そのまま部屋から出ていった。


残されたショウは、しばらく閉じた扉を見つめていた。


レンジのやつ、ここまでやるのか……。


鼻の奥に鈍い痛みが残っている。


その痛みと一緒に、デブゴンとユウマの顔が頭へ浮かんだ。


「まさか……」


今まで、偶然だと思っていた。


しかし、すべてがレンジの仕業だったとしたら。


理央に振られた悲しみよりも、背中を這い上がる恐怖の方が大きかった。


「まずい……」


ショウは震える手で、鼻の固定具へ触れる。


「このままじゃ、俺もダイチもあいつに潰されるぞ」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ