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策士

休日。


レンジは美容院で髪を金色に染めた。


待ち合わせ場所へ現れたレンジを見て、柚希は吹き出す。


「どうしたの、その頭」


「今日だけだけ、特別」


「せっかくだからプリ撮ろうよ」


二人はゲームセンターへ入り、プリクラ機の中へ入った。


肩を寄せ、笑いながら何枚か撮る。


最後の一枚。


レンジは柚希の腰へ手を回し、顔を少し横へ向けキスをした。


出来上がったプリクラをポケットにしまう。


柚希と別れると、その日のうちに髪を黒へ戻した。



レンジの部屋。


二人はベッドに腰掛けながら、ダイチの話をしていた。


「まだ連絡来る?」


「来るけど、言われたとおり無視してる」


「共通の友達からはっきり伝えてもらった方がいいかもね」


柚希は少し考える。


「じゃあ、ショウに頼んでみようかな。ダイチの中学からの親友だし」


すぐにショウへ連絡し、二人だけで相談したいと伝えた。


ショウは、ダイチには黙っておくという条件も受け入れた。



数日後。


ファミレスで、柚希はショウと向かい合っていた。


「ほかに好きな人ができたから、ダイチとは別れたいの」


「ダイチから聞いてるよ。誰なの?」


「二人とも知らない人。ダイチが来ると嫌だから言えない」


柚希はレンジを守るため、相手の名前を伏せた。


「それだと、俺が言っても納得しないだろうな」


ショウが苦い顔をした。


店の外では、レンジが二人の姿をスマホで撮影している。


帰宅後。


レンジは、ショウと柚希が向かい合う写真と、金髪の自分が柚希とキスをするプリクラを並べた。


どちらも、使い方次第で意味が変わる。


レンジは二枚を眺めながら、静かに笑った。


「さて、攻略開始といくか」



数日後。


レンジのスマホが鳴った。


画面に表示された名前は、ショウ。


「……もしもし」


『おう、俺だ』


電話の向こうから、いつもの軽い声が聞こえる。


『月末だからさ。分かるよな?』


「……お金でしょ」


『明日、必ず持ってこいよ。間違っても学校で渡すな』


それだけ言って、通話は一方的に切れた。


ショウは学校でのいじめとは別に、毎月レンジから金を巻き上げている。


――金を払えば、ダイチがやりすぎたときに止めてやる。


――俺が止めなかったら、お前はそのうち殺されるぞ。


学校で受け取ろうとしないのは、ダイチに知られたくないからだ。


見つかれば、金はダイチと分けなければいけない。


ショウは仲間に隠れて、自分だけ甘い汁を吸っていた。


レンジは通話の切れたスマホを見つめる。


そして財布の中身を確認した。



翌日。


レンジは指定されたとおり、駅から少し離れた路地で待っていた。


夕方になり、商店街には仕事帰りの人や学生が行き交っている。


しばらくすると、ショウが何度も周囲を確認しながら近づいてきた。


「持ってきたか?」


レンジが答える前に、ショウは片手を差し出す。


財布から一万円札を三枚抜き取り、その手に乗せた。


紙幣を数えたショウの顔が険しくなる。


直後、レンジのすねに鋭い蹴りが入った。


「痛っ……」


「おい、足りねえじゃねえか」


ショウは三万円をポケットへ押し込む。


「毎月五万って言ったよな?」


「ごめん。今はこれしかなくて」


「ふざけんなよ」


「銀行で下ろすから……」


ショウは舌打ちし、顎で先を示した。


「さっさと行け」


レンジは足を引きずるように歩き始める。


ショウも少し後ろからついてきた。


「逃げんなよ」


低い声が背中へ飛んでくる。


レンジは返事をせず、商店街の外れへ向かった。


人通りは次第に減り、古い雑居ビルや閉まった店が目立ち始める。


「おい」


ショウが苛立った声を出す。


「こんなところに銀行なんてあんのかよ」


「もう少し先……」


そのとき、雀荘の前で話している三人組が見えた。


全員ジャージ姿。


一人は金色のネックレスをつけた短髪の男。


もう一人は色黒で、袖口からタトゥーが覗いている。


残る一人は、夕方にもかかわらずサングラスをかけていた。


大声で笑いながら、駐車場の入り口を塞ぐように立っている。


レンジは鞄から飲みかけのペットボトルを取り出した。


そして、三人の足元へ思いきり投げつける。


ボトルが地面へ当たり、中身が勢いよく飛び散った。


「うおっ!」


三人が驚いて飛び跳ねる。


すぐ後ろを歩いていたショウも、何が起きたのか分からず目を見開いた。


「何だ、お前!」


短髪の男がレンジへ詰め寄る。


残りの二人も加わり、逃げ道を塞いだ。


ショウは気配を消すように後ろへ下がる。


しかし、サングラスの男がその腕を掴んだ。


「お前も仲間だろ。どこ行くんだよ」


「いや、俺は――」


言い訳を聞く者はいない。


二人はそのまま雀荘脇の駐車場へ連れていかれた。


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