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29.首席祝いのパーティー

 家に帰った俺は、試験の結果をみんなに伝えた。

 主席合格だと知った召使い3人衆は感涙しながら俺を胴上げしてくれた。


 派手に喜んでくれたのはその3人だけではなく、両親やウェホウドも同じだった。

 サタンとウェホウドは当然だと言わんばかりに満足げに頷き、


 レイナスは胸を撫で下ろしてから優しく抱き締めてくれた。

 俺の成功に皆がまるで自分のことのように喜んでいてくれていた。


 それは当たり前のことなのかもしれないが、

 生前の俺はそういった経験と縁のない人生を歩んできたという記憶がぼんやりとあるので、

 その当たり前のことがとても嬉しかった。


 自分はもう一人じゃない。大切な人が沢山いるんだと実感できた。


「ゾーマの合格を祝って今宵はパーティーを開くぞ!」


 既に酔っ払い気味のサタンが声高々にそう告げた。


「いいわね! お料理沢山作らないと」


 サタンの提案にレイナスも賛同する。

 屋敷の二大ボスがそう言うのなら、残りの召使い達も当然賛成するしかなく、屋敷中の召使い達はパーティーの準備に取り掛かるのだった。


 まあ、俺の合格とは別に、急にアイダという奴隷を連れてきたことに関してはレイナスに軽く叱られたが、


 アイダを買うことになった経緯と、サタンが俺が発明したアイテムを勝手に売り捌いてたという事実を暴露することによって、怒りの矛先をサタンに逸らすことに成功した。


 サタンは、悪かったと俺にいい、報酬の全てを俺にくれた。

 てか最初から手鏡オート・ステータスで得た報酬は俺に全てあげる気でいたらしい。


 将来、俺が魔王になった時に自由に使えるお金として溜めていたそうだ。

 息子に優しい両親で助かった。


「す、凄いお屋敷ですね。ゾーマ様」


 アイダは終始落ち着かない様子で俺達と、魔王城を交互に眺めていた。

 慣れない環境が不安なのか、俺の裾をずっと掴んでいるのがとても可愛らしかった。


 余りにも愛らしいので頭を撫でてやろうかと思ったが、手をアイダの頭部に置く度に、

 エルフィンが恨めしそうにアイダを睨みつけているのでやめておいた。


「今日からここが君の住処になるんだよ」

「は……はい」


 何故かアイダは意気込んでいた。

 その仕草の儀突一つが小動物のようで可愛らしい。

 可愛いなあああああ。抱きしめてえええ。


「ゾーマの合格を祝って今宵はパーティーを開くぞ!」



 ※


 パーティーは大変な盛り上がりを見せた。

 参加者の総数は何と500人。

 魔王城に住む者達は勿論、魔界騎士団の連中や、サタンと交流のある貴族。


 そして、他国の王までもがパーティーに参加してくれた。

 いや……凄い規模だな

 てっきり、地球でいう誕生日パーティーみたいな規模かと思ってたよ。



「よお、ゾーマよ。また会ったな」

 当然、この国の王子であるメルクスも来ている。

「メルクス! でもこんな所に来ていいのか? 今日はお前の合格したひでもあるんだぞ?」


 普通なら、俺の首席合格祝いにくるのではなく、ウィザーズ家は息子であるメルクスの合格祝いを家でやるべきだと思うんだけど・・・。


「いや、俺は毎度、誕生日を迎える度にこの人数と同じくらいの人が来てお祝いされるから・・・正直つかれるのだ」


 メルクスはげっそりとした表情を浮かべて俺に説明してくれた。

 そうなのか・・・


 やっぱ王族も大変なんだな。

 俺はそういった状況を危惧して誕生日の時は身内だけのパーティーにしてくれって頼んでいたが、


 それでもグレイモアの屋敷には使用人が100人ほどいるので、かなりの大規模パーティーになっている。


「お前も大変なんだな・・・メルクス」

「そうだ。でも、今日はお前のパーティーで良かったよ。注目を浴びるのは俺じゃなくてお前なんだからな。アハハー」


 と、メルクスは意地悪そうな笑みを浮かべて俺を見ていた。

 こいつ、やっぱ性格が捻くれてやがる。


 そんな事を話している時だった。

 背後から、誰かの声が聞こえて来た。


「ゾーマ様、そしてメルクス王子。この度は王学の合格、おめでとうございます」


 声をかけた人物は、黄金色に光る立派な王冠を被った小太りのおじさんだった。


 穏やかな印象だが、どこか近寄りがたい、威厳のある雰囲気を全体から放っている。

 多分、どこかの国の王様だろう。


「これは、ソマージュ様。この度はドミニオン王国から来てくださって誠にありがとうございます」


 悪友モードから、直ぐに王子モードに切り替えたメルクスは、王族らしい洗礼された丁寧な挨拶を相手に返した。


 へえ、この人はドミニオン王国の人なのか。

 俺も挨拶をしておく。


「始めまして。僕の名前はゾーマ・ベルゼブブと申します。この度は、僕のためにわざわざ遠い所からいらしてくれて誠にありがとうございます」


 国王さんは、12歳とは思えない俺達の大人びた振る舞いに唖然としていた


「驚いた。魔王様とオルエル様の言っていた通り、とてもしっかりとした子達なんだな。我が子にも見習ってほしいね」


 唐突に、国王さんが俺に挨拶してきた。

 俺達は差し出された手を握る。


「お子様がいらっしゃるんですか?」

「ああ。君と同い年さ。もしかしたら来年同じクラスになるかもな」

「同じクラス?」


 ということは、王学のSクラスなのか。

 へえ。立派なお子さんをお持ちじゃないかソマージュ様。


「ああ。君達は王学のSクラスなんだろ? 私の子もだ。まあ、あいつはかなりの自信家でな。自分が首席間違いなしと言っていたが、5位だった。ひどく落ち込んでいたよ」


 まじかよ。変な因縁とか付けられないだろうな。

 まあ、ソマージュさんはちゃんとした父親っぽいし、それないかな。


「ユンナ。私の娘は酷く負けず嫌いな子だ。入学して直ぐに貴方達に宣戦布告してくると思うが、まあ仲良くしてやってくれ。彼女も切磋琢磨できるライバルが増えて内心喜んでいるはずだ」


 あ。やっぱこれは因縁つけられるパターンなのか?

 でも、まあプライドが高いってだけで、アリエッドみたいに権力に物を言わせるような悪い子じゃなさそうだ。


 仲良くはできるだろう。


「わかりました。ぜひ、仲良くさせて頂きたいと思います。な、ゾーマよ」

「そうだな。そんな優秀な子が王学のSクラスだなんて、ドミニオン王国の未来も安泰ですね」


 そういうと、ソマージュはガハハと笑う。


「ははは。安泰なのは我が国だけじゃなくてグレイモア国や、魔界全体の将来だろう。君達に会えてよかった。では、また来年」


 華麗に去っていくの姿は何だかとても格好良かった。

 学園か……色々楽しみになってきたな。


 ※


 その後も、メルクスと一緒にパーティー会場を適当にうろついて、沢山の人と会話をした。

 他国の国王さんと談笑したり、お世話になった魔界騎士団の人達にお礼と、挨拶をしていた。


 色々な人との会話は楽しかった。

 他国の王様たちの武勇伝はとても盛り上がり、

 お世話になった先鋭騎士達の激励はとても心にしみた。


 生前の頃の俺では味わえなかった喜びが、今俺の心を満たしている。

 そして、その喜びを与えてくれたのは俺の逃げない心と、家族のサポート

 そしてなんといっても師匠であるウェホウドさんだ。


「ウェホウドさんにまだお礼を言ってなかった」

「姉様にか?」

「そうだ。一番の恩人だ」


 あ。でも確かウェホウドさんは王妃継承の日に国を抜け出したんだっけな。


 なら、親でありグレイモア国の王であるオルエルさんと仲はあまりよろしくないのかな?

 それだったら、オルエルさんも来ているこのパーティーには来てないのかも・・・。


 その事をメルクスに訪ねてみたら、予想外の答えが返って来た。


「父と姉の仲は険悪などではない。むしろ良好だ。国を抜け出す理由が、男関係ならともなく、姉は自分の夢を優先し、最終的には魔王様率いる魔界最強の騎士組織、魔界騎士団の一番隊長にまでなったんだ。父にとっては自慢の娘だよ」


 そうなのか。それなら良かった。

 俺のために2年間親身になって色んなことを教えてくれたウェホウドさんが、親子関係のせいでここに来れないのはあまりにも悲しかったからな。



「まあ、姉様が逃げた分、俺が国王の後継者として色々大変な目に合わされたけどな。小さい頃からずっと魔法の勉強を強いられたり、束縛されてたよ」


 ぶつりと、メルクスは陰鬱な表情と、ダークな雰囲気を纏いながら何事かを呟いた。


 こいつ、ちょくちょく闇の深いエピソード小出しにしてくるな・・・。


「ま、まあその過去のお陰で今や王学ぶのSクラスじゃないか! ポジティブに考えようぜ!」


 俺のフォローにそうだな・・・。と頷くメルクス。

 そう考えないとやってけないなと呟き、気持ちを切り替えた。

 こいつ、もしかして思ってた以上に闇が深い??


「では、姉様に会ってみようか。俺も久々に話をしたい」

「そうだな。俺もお礼を言いたいし」


 彼女には沢山伝えたい思いがある。

 俺はウェホウドさんの魔力を探知し、彼女の元へ向かった


 ※ 


「ゾーマ様! それにメルクス君! 楽しんでましゅかああ」

「ウェホウドさん。酒臭いですね」

「姉様はお酒に弱いからな」


 ウェホウドはベロンベロンだった。

 いつもはな彼女だったが、今日は大分羽目を外しているようだった。

 しかし、ハメを外し過ぎじゃないか?


 服は崩れ、今まで見せなかった大きな胸元の肌が露わとなっている

 子供とはいえ中身は大人の俺にこの格好をしても大丈夫なのか?

 へへ。襲っちゃうぞ?


「あはは。楽しんでますね」

「楽しみすぎだ」

「アハハー。メル君、何でそんなに不機嫌なんですかー」


 ウェホウドさんはアハハと陽気に笑いながらメルクスの頬を突いた。


「え、メル君?」


 お前、このイケメンフェイスで、メル君何て呼ばれてるのかよ!!


「やめてください姉上! 他の者がいる時はメルクスって呼んでくださいって言っているでしょ!」

「ええー。メル君のケチ!!」


 てことは、2人きりの時はメル君って呼ばれてるのか・・・。

 何だこの姉弟。

 仲がいいのか悪いのか・・・。


「全く、1つの2つや文句を言いたい気持ちはあるが、姉様の前だといつもペースに乗せられてしまう。やはり俺はまだ未熟者だ」


 やれやれといった風にメルクスは両肩を竦めた。

 うん、どの世界でも姉って存在は強いんだな。

 いつも冷静沈着な印象のあったメルクスを、こんなに取れ乱されるなんて、流石はウェホウドさんだよ。


「あれれ〜。お二人はどうして私の所に来たのれすか」


 ウェホウドさんは、酒を飲みすぎて呂律が回っていなかった。

 どうしてこんな風になるまで飲んだのだろう。


「お礼にきたんですよ。僕は、ウェホウドさんにお礼をしにきました」

「はい?」


 まあ、相手が酔っている時だからこそ、俺も素直に気持ちが言えるってものだ。

 お互い平静なままだと、照れ臭くて言えない言葉もある。


「この二年間、僕に剣を教えてくれてありがとうございました! この御恩は一生忘れません」


 これは紛れもなく本心だ。

 俺は、彼女の存在無しでは王学の首席合格どころか、まず試験すら受けれるレベルになっていなかっただろう。


「……うええええん。そんなこと今言わないでください。泣いちゃいますよおおお」


 ウェホウドさんは感涙し、俺に抱きついてきた。

 うおお。ウェホウドさん柔らかいし、良い匂いがする。


「この先、沢山の困難がゾーマ様に訪れるかもしれませんが、その度に私と共に修業した二年間を思い出してください」


 そう言って、ウェホウドさんは俺に自分が身に付けていた首飾りを渡した。


「私の修行に耐えた貴方ならきっとどんな困難でも乗り越えられるでしょう」


 目の前にいるウェホウドさんの両目は、どこまでも澄んでいて、真っ直ぐだった。

 この人の元で学べてよかった、

 俺は心底そう思い、再度頭を下げる。

次話は、明後日投稿の予定です。すみません

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