30.本当のプロローグ
気付けば日付が変わる時間までパーティーは続いていた。
広い魔王城には、先程まで騒いでいた参加者達のイビキが響いている。
ここが日本ならば自制心を持って酔潰れる前に帰路につこうとする者が大半だが、
ここは魔界という、どこまでも豪快な魔王が頂点に君臨する破天荒な世界だ。
やりたいようにやる。をモットーとしているサタンに習い、この場にいる全員が気の済むまで酒を飲み干し、満足したらその場で寝るという自由な行動を取っていた。
「うーん。私はまだ飲めますよ〜離してください。メル君!」
「姉上! 明日早いんでしょ? 帰らないとまずいですよ」
まだ帰りたくないとダダをこねるウェホウドさんを引きずり、メルクスは魔王城の門を出て行く。
大変だなこの姉弟も。
普段はどちらとも王族としての威厳や、一人前の剣士としての風格みたいな物が備わっていて、とても頼もしいのだが、
その2人が揃うとこんなにも違うキャラクターに一変するのだから不思議だ。
ウェホウドさんには弟にしか見せられない甘えた一面があり、
メルクスには姉には逆らえない弟気質な一面があるということだろう。
今日はこの2人の色んな面が見れてよかったな。
今度メルクスに会ったらからかってやろ。
《ふう・・・。だいぶ平和ボケしているのお》
「・・・またか」
また、どこからか、あの声が聞こえてきた。
この声を初めて聞いたのは、王学の剣術試験の時だ。
2年間で会得した神の裁きを披露するか否かで悩んでいる俺に、後悔しない方を選べと助言をしてくれた。
それ以来、定期的にその声が俺にだけ聴こえるようになっていた。
最初は幻聴かと思ったが、幻聴にしてはあまりにも鮮明に聞こえすぎている。
レイナスやサタンには聞こえていないし、この声の主はいったい何者なのだろうか。
「ふー。私達もそろそろ寝ようかしら」
俺が謎の声の主に頭を悩ませていると、背後から聞き慣れた聞こえてきた。
これは幻聴ではなく、俺の母親であるレイナスの声だ。
レイナスはコックのゴボルドやエルフィンを中心としたメイド軍団、そして新しく我が家の仲間に加わったアイダと一緒に料理を作り、ずっと客人のおもてなしをしてくれていた。
レイナスは魔族の立場的にはサタンに次ぐ2番目( 家庭内における立場なら多分サタンより権力を握っている)
だが、家事が好きらしく、今回のようにいつも積極的に使用人達に混ざって良く炊事や洗濯などをしてくれている。
魔王の妻という点を除けば、普通の良きお母さんだ。
怒るとちょっと、というか、かなり怖いけど・・・。
「ふう。ようやく終わったわ」
「お疲れ様でした、レイナス様」
「あなた達もね。そろそろお休みしましょう」
食器洗いを済ませ、酔い潰れた客人達に毛布をかけ終えたレイナス達はそんな事を話していた。
俺そろそろ寝ようかな。
料理もたらふく食べたし、腹もいっぱいだ。
「あのぉ、アイダはどこでお休みすればいいですか?」
レイナスの手伝いを終えたアイダは俺の裾をツンツンと引っ張ってきた。
「アイダは・・・どこなんだろ。部屋はいくらでもあるし、好きな所で寝ればいいよ」
「へ、部屋!? アイダに部屋なんて勿体なさすぎます」
信じられないといった風にオロオロと周囲を見回すアイダはとても微笑ましかった。
「アイダちゃんは、私と一緒に寝ましょうね」
「レ、レイナス様!!」
オロオロとしているアイダを後ろから抱きしめたのはレイナスだ。
レイナスはこの数時間でアイダの事をすっかり気に入ったようだ。
アイダは歳は10歳と俺よりも若いことから、レイナスは彼女の事を使用人としてより、娘のような感じで接しているのだろう。
「明日はお洋服買ってあげるからね。何でも好きな物を選んでいいわよ!」
「よ、洋服などアイダには贅沢品すぎますよ!」
今まで経験したことの無い好待遇を受け入れきれないのか、アイダは目を回して卒倒しそうだった。
どんだけ今まで不遇な扱いを受けてきたんだよ・・・。
そう思うと悲しくなる。
「んむにゃむにゃ・・・うおおお!!」
レイナスとアイダの談笑をかき消すように、サタンのイビキが屋敷中に響いた。
客人と同様に床で寝そべり、サタンは豪快に寝ていた。
「まったく、城主のあなたまで寝ていてどうするんですか!」
レイナスは格好悪く涎を垂らしながら惰眠を貪っているサタンを見て溜息を吐くと、
その頭を思い切り叩いた。
「レ、レイナス様! 魔王様にそんな事をすると・・・」
「いや、良いんだよアイダ。これがいつもの光景だから」
「ええ!! す、凄いです」
アイダもまさか魔界の王である魔王よりも偉い存在がいるとは思わなかったのだろう。
レイナスを羨望の眼差しで見つめていた。
「ん〜むにゃむにゃ。もっと食べれるぞ吾輩!」
サタンは起きなかった。
幸せそうにムニャムニャト惰眠をむさぼっていたる。
うーん。
この魔王さん、少しだらしが無さすぎるのでは?
「僕が部屋まで連れていきますよ。母様も皆も休んでください」
レイナスも使用人達も今日は色々と大変だっただろう。
早目に休息を取ってほしい。
「そう。悪いわね。後は頼んだわ」
「はい」
「ゾーマ様・・・寝室でお待ちしておりますわ」
「お前の寝室はそっちじゃないだろうが!」
俺の部屋に行こうとするエルフィンをゴブ平が止める。
ナイス、ゴブ平さん。
「では、みんなおやすみなさい」
俺はみんなに別れを告げてからサタンを背負い、サタンの寝床まで連れていった。
すげー重い。
※
「ぐへええ」
ベッドにむかって、サタンを思い切り投げる。
サタンは間抜けな声を上げながら、ベッドに落下した。
「お前、何するんじゃ!」
うお、起きた。
サタンを起こすには、叩くだけじゃダメなんだな。投げないと
「あはは。では、お父様。おやすみなさい」
「待て! ゾーマ」
そのまま去ろうとしたが、サタンは俺を呼び止める。
何だ?
「・・・二年間、よく頑張ったな」
ベッドに置いてあった飲みかけのお酒を口に含み、サタンは快活に笑う。
「皆さんのお蔭ですよ」
「いいや。お前自身の力じゃよ」
サタンはグビっと酒を飲んでから、続きを話した。
「精一杯お前のサポートをしたつもりじゃが、それさえも正しいのかわからなかった。吾輩は今まで戦ってばかりで、子育てに関してはド素人だったからの……」
「父様……」
そうだったのか。
悩んでいたのは、俺だけじゃなくサタンも同じだったのだ。
共に悩み、苦しみ、それでもひたすら前を向いた結果、今日という日を迎えることができたのだ。
「でもその心配は杞憂じゃったと、今日わかった。お前さんは吾輩が思っていたよりも強く逞しかった。
それが嬉しいんじゃ。お前さんは、吾輩と同じ過ちは犯さないだろう」
「同じ過ち?」
サタンは左眼の傷に触れながら、ゆっくりと呟く。
「実はな、お前には本来、5つ上の姉がいたのじゃ。これは娘だった者につけられた傷じゃ」
ずっと気になっていたサタンの傷。
その正体は、今日初めて存在を知った、俺の姉だった。
サタンは姉が生まれてから、今に至るまでの経緯をゆっくりと説明してくれた。
姉の名前はマラー・ベルゼブブ
彼女は生まれ付き体が弱く、魔力量も俺程ではないが少なかったそうだ。
適正の数も1つしかなかったらしい。
彼女は勿論、両親であるサタンやレイナスもその能力に困惑、どう接してやれば良いか分からなかったらしい。
しかし、マラーは己に失望しながらも、魔族としての自分を見放すことはなかった。
生まれ落ちた瞬間に魔族のお荷物の烙印を押されたマラーだったが、彼女は限界まで努力をしたらしい。
魔力が無いのなら体を鍛えればいい
勉強に力を入れて新しい魔法術を開発すればいい。
それも無理ならせめて家事や炊事を完璧にしてサポートに徹すればいい。
魔力が使えなりに他の事で頑張り、
何とか周りに一人前の魔族として認めて貰おうと奮闘していたそうだ。
しかし、いつまでたっても彼女の評価は覆ることが無かった。
サタンが圧力をかければ、周りは表向きではマラーを高貴な魔族として扱ってくれていたらしいが、
裏ではマラーに対して魔族の恥だ、お荷物だ、出て行けと陰湿ないじめを繰り返していたらしい。
魔法至上主義のこの世界は、魔族が魔法で戦えないという事実だけで、マラーに無能のレッテルを貼り続けたのだ。
マラーも最初の方はいつかは認めて貰えると耐え続けていたが、次第にその淡い期待も持たなくなり、最後の方は魔界や魔族に対する憎しみだけを持ち闇の世界へ消えていったそうだ。
「マラーに会った最後の日は、魔族が集う年1の祭典【魔族会】の日じゃ」
魔族会とは、魔族が集まってワイワイ騒ぐ、魔族だけのパーティーみたいなものだ。
その日にマラーは、同じく魔族に恨みを持った裏社会の組織と結託し、魔族を皆殺しにしようとしたらしい。
その結果、魔王側には大勢の人が傷付き、魔王も顔に大怪我を負った。
「我輩達は油断をしていた。マラーは魔法
もろくに使えず、体も弱い奴じゃった。
性格も表面上では争いを好まぬ平穏な性格をしていた。
だからこのまま何もしない。してきたとしても、魔族が一丸となればどうって事はない。
そう思っておったのじゃ。その根拠のない慢心をしたばかりに我輩達は大きな傷を負ってしまった」
「でも、どうやってマラーは魔族を相手にそこまで戦えたのですか?」
いくら仲間を増やしたとしても、相手は魔界にいる全種族の頂点に立つ魔族だ。
1人の魔族を複数人で相手にするならまだしも、同じ集団戦なら魔族が圧倒的な有利だ。
そこら辺の種族では身体能力に差がありすぎて、まず相手にならないからな。
マラーはサタン達と同じく魔族だが、彼女は魔法も使えず体も貧弱だとサタンはいっていた。
そんな者がサタンに深手を負わせられるとは思えない。
「やつは、魔界で禁じられた【魔神化】という魔法を使ったのじゃよ」
「魔神化?」
はじめて聞く魔法だった。
「人の理りを超え、魔神教の象徴であるルシファー・ドラゴンに人為的に近付くという、恐ろしく、愚かな魔法じゃ」
神に近付く・・・魔法?
そんな事が、可能なのか?
「その魔法を使ったものは、体を漆黒に包まこれ、一時的には魔王すら上回る無敵の力を得られるが、その後は跡形もなく体が燃えて死んでしまう。当たり前じゃ。人は決して神にはなれない。なろうと考えた者は当然神に裁きを受ける」
「体を・・・漆黒にする??」
サタンの言葉から、俺は初めて女神に会った時に見た、水晶の中の映像を思い出す。
そこには、体を黒く染めたサタンらしき男が映っていた。
あれは、魔神化したサタンだったのか。
その水晶に映し出された未来は、俺が魔界へ転生する前の世界だから、今後の未来が水晶通りになるかは分からない。
しかし、サタンがあれほど拒絶していた魔神化を行使して、勇者と相対する世界線があったのは事実だ。
「まあ、愚かな行為だと言ってはいても、我輩だってお前さんやレイナスを失ってしまったらどうなるか分からない。
やってはいけないと理性が告げていても、人は憎しみには勝てないのかもしれない。それは、これまで起こった魔界の戦争が証明している」
戦争だって、事の発端は理性を上回る恨み辛みだ。
人は人を傷付けてはならない。そんな事、誰でもが知っている。
しかし、分かってはいても自分や大切な人に危害が及べば、その当たり前の常識すら忘れて人は簡単に憎しみの連鎖を繰り返してしまうのだ。
そうして、憎しみに身を滅ぼしてしまった者は
魔神教の掲げる「平等と平和」の道から転落し、魔道堕ちとなってしまう。
これは、俺達魔族も例外では無い。
現にサタンも、俺のいない未来では魔神化の魔法を使い、勇者と戦っている。
その行為の先にある未来は死しかないと知っていながら、サタンはその禁じられた魔法を使ってしまうのだ。
「この時、吾輩は思った。魔王とは魔法を極めし王でもなく、魔界の王でもない。魔なる心を滅し、人を救済する王の事じゃと。
弱い者は憎しみや絶望だけで簡単に堕ちてしまう。じゃからこそ、誰よりも強い存在である、魔王が全ての憎しみを受け入れ、憎しみや絶望からそいつを解き放ち、導いてやる必要があるのじゃ。
それは誰にでも出来る事ではないだろう。吾輩が全てを失った後その事に気付いたように。じゃが、弱き者の気持ちを知り、0からのし上がったお前にはそれができるかもしれない・・・」
魔王はそう告げると、ベッドから起き上がり、俺にあるものを渡した。
「じゃからこそ、これをお前に授ける」
それは、いつも魔王が背負っていた討魔のマントだった。
レア度は最高値のS
どんなに強烈な攻撃でも跳ね除けるこのマントは、民と国の盾となって攻撃を喰らう国の王にこそ相応しい一級品のマントだ。
歴代の魔王達がこのマントを背負いながら戦い、長らく魔界を守ってきた。
その証のような存在が、今俺の手元にある。
「討魔のマント・・・」
俺が今日までの2年間、ずっと欲しかったものだ。
マントには、200年、ずっと魔族が守ってきたこの世界の平和の証である火種が記されている。
次は、俺がサタンに変わってこの小さな火を守って行く番なのだ。
「ガハハ。お前さんがこのマントを背負い、魔界を守る姿がいつか見てみたいものだな」
「……そうですね。きっと見せて見せます」
魔王の言葉に、俺はきつく心が抉られる。
思わず涙を流してしまいそうになるのを抑えながら、俺は返事をした
魔王継承が可能な歳は20歳なのに対し、俺はまだ12歳だ
俺が時期魔王となり、このマントを背負うには、少なくとも8年はかかるだろう。
そして、女神が予言した、勇者が魔界に来襲するまではあと3年
俺が次期魔王として認められる前に、勇者が魔界へ来てしまうのだ
俺がもし、勇者に勝てなかったら
魔界を救えなかったら、魔王はそのまま殺されてしまうのだ。
そんなことは……絶対にさせない
「きっと……魔王になって見せます」
覚悟の証として、俺はもう一度そう告げた。
俺に沢山の幸せを与えてくれたこの世界を
頼もしい召使い達を
尊敬できる師匠を
そして、優しい父を、母を。
俺は絶対に死なせたりはしない。
彼等には、返しても返しきれない沢山のことを俺に与えてくれたのだから。
※
魔王城から離れた小さな山の麓に、2人の男女がいた。
1人はトカゲのような見た目をした、騎士風の鎧を纏ったサラマンダー。
そして、もう1人は全身を黒い包帯で身を纏わせている少女だった。
少女の頭部にはへし折られてはいるが、魔族の証である金色の2つの角が生えている。
「相変わらず呑気ですねえ・・・。貴方の実家は。いつもあんな感じだったのですか?」
「・・・」
サラマンダーの問いかけに、少女の方は何も答えなかった。
包帯の奥に見える、目を背けたくなる程の火傷跡をそっと撫でながら、遠くに映る魔王城を見つめる。
「計画の方は順調か?」
今度は少女がサラマンダーに問いかけた。
「魔神化計画の方なら順調です。近々始まる王学の新生徒にも、既に接触済みです。その中から欲深い者を選出し、我等の組織に加える予定です」
「そうか。そっちは順調で何よりだ」
そっちという言葉に語気を強める。
順調だと上機嫌に笑うサラマンダーに対し、少女は少々棘がある言い方だった。
「逢魔の剣を手に入れられなかった件については申し訳ありませんでした。しかし、我等がやっとあの忌々しい結界を解く術式を解析した瞬間に、あの結界が解かれ、剣も抜かれていたんです。仕方がありません」
「全く・・・召喚術の準備が整ったというのに、肝心の武器が調達できないのでは意味がない」
召喚術とは、200年前に、魔神教と争っていた宗教の信徒が編み出した、異界の人間をこの地に呼び寄せる魔法である。
当初の予定では、剣聖が愛用していた伝説の剣を魔王城から盗み出し、
それを異界から召喚した人物に託し、
魔界を制圧して貰う予定だった。
しかし、その剣は何者かによって抜かれてしまった。
200年もの間、誰の手にも渡る事がなかったあの剣を。いったい誰が。
「あの結界を破れる者がいるとすれば、魔族の誰かしかおるまい。どの道、魔族は皆殺しだ」
魔族と共に過ごしてきたあの光景を思い浮かぶ度に、苦しい思い出が脳裏を過る。
この世界の戦争は、いつだって大きな権力者の欲望と欲望によって勃発していた。
魔神教とある宗教による戦争だって、互いの教祖が対立したから起こった争いだ。
権力者によって生まれた世界の主張が誰かを傷付かせるのなら、何も持たない自分達が、世を制し、住みやすい世界に変える必要がある。
そのためには、今の権力者であり、魔法至上主義という風潮を作った魔族をまず消さなければならない。
「魔族の誰かが封印を解いたのか、200年前、あの剣に封印された《賢者》が自らの封印を解き、自分の獲物にした可能性もありますぞ?」
賢者とは、魔神教と対立していたもう1つの宗教の信徒が他の世界から召喚してきた、最強の魔法使いだ。
最強の称号通り、その賢者は魔界の種族を蹂躙し、魔神教の信徒を限界まで追い詰めたという。
結局、戦争は魔神教が勝利し、その賢者も剣聖に破れたあと、逢魔の剣に封印されてしまったが。
(まあ、あの宗教の信徒が賢者を召喚してくれたお陰で、我らも異界から有力な人材を呼び寄せる術を見つけたんだがな)
賢者が昔暮らしていた世界の名は、チキュウといっていた。
チキュウには、あれ程の魔法使いが沢山いるのだ。
魔族を凌駕する能力を持っている人間がいてもおかしくはない。
「まあ、賢者が蘇っていようが、いなかろうがどうだっていい話だ」
魔王城を見て、少女は静かに頬を緩ませる。
召喚術は、既に成功し、つい昨日、賢者と同じ世界で暮らしていたチキュウ人を魔界に呼び寄せた。
彼は戦争を知らない平和な国で生まれ育った人間であったが、その魔力量とスキルの数は魔族など比ではなかった。
その人格も申し分なく、少女の話を親身に聞いてくれ、妥当魔王を約束してくれた。
突然な召喚に対しても怒ることなく受け入れてくれ、戦う覚悟すら持っていたあの男は、まさに勇気ある者といってもいいだろう。
逢魔の剣を手に入れられなかったのは誤算だが、彼なら3年も鍛錬すれば魔族を皆殺しにし、魔界に安寧をもたらしてくれるだろう。
「楽しみだ」
少女はガハハと大きく笑う。
もう少しで自分の心は満たされる。
長年抱いていた復讐を成功させ、
この世界を本当の意味で平和にさせるのだ。
「そうだな。我らの元にきてくれた勇ましい心を持ったあの召喚者の名前は、勇者と名付けようか」
待っていろサタン・ベルゼブブ、レイナス・ベルゼブブ。魔族、そして魔界に住んでいる種族共よ。
魔法という概念に囚われる必要のない、真の平和というものを、お前達に教えてやろう。
ーー勇者と戦うまで、あと3年
遅れてすみません




