27.合格発表!そして新たにできた友達
日間16位・・・軽く驚いてます。皆様のお陰です
波乱の王学試験から1週間がたった。
俺は、2年間の修行から解放され、余暇を満喫していた。
「あ。折角だから、手鏡をサタンに見せてしまおうか」
手鏡とは、俺が去年作った、ステータス機能を付けた手鏡だ。
俺は1年前、危険度A級魔獣を倒した際にレア度SSスキル『付与』という、自身のスキルを無機物に付与する事ができる能力を習得した。
このスキルを使って、魔界の役に立てないかと考えた俺は神眼のスキルを手鏡に付与して、
手鏡を見るだけでレンズにステータスが記される、お手軽な道具を発明したのだ。
これさえあれば、高価で重い水晶を持たなくても簡単にステータスが確認できるし、
何よりもステータスオープン! とかいう恥ずかしい詠唱を唱えなくて済む
本当は完成した瞬間にサタンに見せたかったのだが、去年は剣と武術の修行に夢中ですっかり忘れていた。
「確か、手鏡は机の引き出しにあったな」
引き出しを開けてみる。
しかし、中に手鏡はなかった。
「あれ??」
50個くらいは作ってたはずなのに・・
何で全て無くなっているんだ?
もしかして、ペットのスライムが食べてしまったのかな?
あいつは血液が主食だが、自分より小さな物体だったら何でも咀嚼できる。
枕や服も何度も食べられたりしたものだ。
「じゃあ、今からもう一回作ればいいか」
神眼スキルを、手鏡に付与するだけの簡単作業だ。
失くなった手鏡を探すより、また作った方が早い。
「ゾーマ様。失礼します」
そう決意した瞬間、トントンと、エルフィンがノックをしている音が聞こえてきた。
「入っていーー」
いいぞと言う前にエルフィンはドアを開け、俺の匂いで満たされた空間を堪能しようと深呼吸をはじめた。
「ああ。久しぶりのゾーマ様の香り。咀嚼咀嚼」
「やめろ、恥ずかしいから。あと、要件を先に言え!」
「あっ。そうでしたね!」
私とした事がと、舌を出しながらエルフィンは頭を自分でコツンと叩いた。
「オルエル・ウィザーズ国王とメルクス・ウィザーズ王子がお見えになりました。何でも、ゾーマ様にご用があるそうです」
※
「おお。ゾーマ」
リビングには、メルクスとメルクスを50年くらい老けさせた顔をしたおじいさんが座っていた。
似た者親子とはこの事を言うのだろう。
2人とも、出されたお茶を飲むタイミングまで同じだ。
「ほうほう。君がメルクスの友達で、ウェホウドの弟子、そして我らが主、魔王サタン様のご子息か」
おっさんは、アゴに生やしている白鬚を撫でながら陽気に笑う。
「私の名前はオルエル・ウィザーズと申します。サタン様のご子息にお会いできて光栄です」
一国の王と言えど、身分は魔族である俺の方が高いからなのか、オルエルは立ち上がり、軽く頭を下げた。
「頭を下げるのはやめて下さい。僕の名はゾーマ・ベルゼブブと申します。こちらこそお会いできて嬉しいです。メルクス君とは仲良くさせて貰っています」
身分は俺の方が上だが、歳もこの世界に貢献してきた数も相手の方が上だ。
目上の相手には敬意を持って接する。
これは、地球でもどの世界でも変わらない。
「流石はサタン様の息子だ。教育が行き届いていらっしゃるな」
オルエルは、感心したように俺をみる。
礼儀作法はサタンではなく、レイナスとウェホウドさんに教えて貰ったんだが、一々弁解するのも面倒だし、サタンの教育の賜物だと言うことにしとこう。
「しかし、ゾーマの使用人は面白いリアクションをするんだな」
「何で??」
「エルフィンさん以外のメイドは、みんな父様と俺を
見た瞬間に悲鳴をあげてあたふたしていたぞ」
メルクスはその時の光景を思い出しているのか、くっくっと笑う。
「あの人達はこの家に仕えてまだ1年も経ってない新人だからね。まだ高位の人との接し方が分からないらしい」
もう結構付き合いが長い俺たち魔族に対しても、まだ緊張が解けないのか、未だに会話をする時も表情が硬い人ばかりだ。
そんな人達がいきなり王族に会えば驚くに決まってる。
「ゾーマ様あ〜。お菓子を持ってきました〜。あ!! 王族のウィザーズ家の方々がいらっしゃるじゃないですか! すご〜い! 初めまして〜」
そんな事を思っていると、背後から鈴のように透き通った綺麗な声が聞こえてきた。
この声は、アンディという、新入りのメイドだ。
とても明るく人懐こい性格で、
俺やサタン、レイナスとフランクに接する事ができる、数少ないメイドだ。
赤みがかったボブに、華奢な体。
線の細さだけならエルフィンを上回る。
オシャレ思考が強く、レイナスに与えられたメイド服も独自に改造しているが、
メイド本来の品位はきっちりと守っており、清潔感のある装いとなっている。
うん。彼女は言葉だけで表現するなら、間違いなく美少女の部類に入るのだ。
・・・見た目が骸骨のアンデットでなければな。
「ゾ・・・ゾーマ! その骸骨はいったい??」
「し、信じられん。これはアンデットではないか」
あー。メルクスもオルエルさんもアンデットを見るのは初めてなのか。
まあ、無理もない。
アンデットは北の辺境にある『トリオアトリート国』にしか生息していない稀少な種族だからな。
「そうで〜す。私の名はアンディ。名前はゾーマ様がつけてくれたのぉ〜。まじ感謝。あげぽょ〜」
ギャル口調なアンデットという面白属性なのが彼女の魅力なのだが、今話をしている相手は王族だ。
口調くらいはわきまえて欲しい。
まあ、アンディだけでなく、『トリオアトリ王国』は他国と関わりがあまりなく、
独自の文化や習慣で育ってきた物が大半なため、世間一般の常識があまりない。
そのため、まだ魔界の礼儀作法がよくわかっていないのだ。
「すみません。アンディはまだこの世界の常識とか礼儀に疎くて」
「ま、まあ常識人のアンデットもそれはそれで怖いけどな」
「そ、そうですね・・・常識知らずで破天荒だと聞くトリオアトリ国の種族すら配下に置く何てやはり魔族は偉大だ」
何か2人が俺を見て素直に拍手を送ってくれていた。
いや、手懐けたのはサタンなんだけどね。
「配下とか、やめてよ〜。私は自由! 誰の手にも支配されない優雅な女子なの・・・だから、ゾーマ様、お覚悟を!!」
アンディは炎属性の上級魔法『完全創造』を発動させる。
右手には、魔法で作られた燃える鎌が現れ、
それを俺の首めがけて思い切り振り回した。
「な!! ゾーマ君! 逃げるんだ!」
「そんな・・・! 家臣が主人に攻撃だなんて! どういう事だ!」
血相を変えて俺を心配してくれている2人とは逆に、俺はため息を吐きながら迫り来る燃える鎌を見ていた。
ああ・・・。
またいつもの抜き打ちテストね。
たく、修行が終わってもこれはまだ続くのか。
俺は軽々とその不意打ちをかわし、右手で釜を消し去った後
その手を掴んでアンディに渾身の背負い投げをお見舞いしてやった。
「げふ!」
アンディは反射的に体を丸めて床を叩き、俺が徹底的に教え込んだ日本式の受け身の体勢をとる。
まあ、アンデットの骨は鋼並みに硬度が高いから受け身をしてもしなくても怪我をする心配はないんだけどな
「おいアンディ。客人の前で抜き打ちテストをするのはやめろ。迷惑だろ」
「ふふふ。すみません。お友達の前ではゾーマ様も隙だらけかなと思ったので〜」
こいつ、全く反省してない。
メルクスとオルエルさんを見てみろ!
凄い困惑してるじゃねえか!
「え・・・どういう事なんだゾーマ君」
「あの不意打ちを軽々と・・・」
オルエルさんとメルクスはポカーンと口を開けていた。
理解が追いつかないのか、アンディと俺を交互に見つめている。
「ああ。あれはですね、常に注意を怠らないための鍛錬で、使用人達が不定期に奇襲をしかけてくるんですよ」
たまに、サタンからも奇襲をかけられる事があるが、それは言わないでおいた。
アンディの不意打ちを防いだだけでこんなに驚かれるんだ。
更に魔界最強の存在の奇襲も受けてます。
しかも、その奇襲もさっきのように対応してます! 何て言ったらどんな顔されるかわからない。
「流石っすゾーマ様〜。流石サタン様の奇襲も軽々と躱すお方です〜」
まあ、俺の自重の心もアンディが簡単にぶち壊してくれたけどな。
「魔王様の奇襲も・・・」
「ゾーマがこんなにも強い理由が今わかったような気がするよ」
メルクスの発言に、オルエルもうんうんと頷いた。
何だか尊敬されてしまった。悪い気はしない。
「そう言えばメルクス、どうして家に来たんだ?」
「今日は合格発表の日じゃないか。一緒に行こうかと思ってな」
ああ。そうだ。
今日は合格発表の日だったわ。
読書に夢中ですっかり忘れてたわ。
「もしかして忘れてたのか?」
「あはは。まあね」
俺は実戦で上位250名に残ってるから合格は確定だし、合否に対しての緊張感はないな。
でも、俺が首席からどうかはとても気になるので、メルクスと一緒に合否を確認しに行こうと思う。
「そうか。わざわざ家に来てくれてありがとな。行こう」
「おお! では父上、私は今から王学へ向かおうと思います」
「おお。行ってこい。私もサタン様と少しお話がある」
王様はサタンに話があるからメルクスについて来たのか。
国王と魔王の会話は気になるが、それは後でサタンに聞いてみるとしよう。
さあ、王学に行こうか!
※
「凄い並んでるな。おっ。ゾーマはあんこ味を買ったのか。俺にも一口分けてくれよ」
「そりゃそうさ。合格発表だもの。いいよ、でもメルクスのタレ付きのヤツと交換な」
ドギマギしている周囲の人とは違って、俺らはやけに冷静だった。
売店で買った熱いお茶と団子を堪能しながら長者の列に並ぶくらいには余裕がある。
まあ、俺は実戦で1位、メルクスは3位だ。
合格は既に確定してる。
2人とも、興味があるのは自分の順位くらいだろう。
「さて、そろそろ確認しにいくか」
「そうだな」
お茶と団子を平らげた俺達は人混みをかき分けて掲示板に記されている、成績順で並べられた合格発表を見る。
掲示板には、先頭に1位という順位と、ゾーマ・ベルゼブブという名前が記されていた。
「よっしゃぁぁ! 首席合格だ!」
2年間の苦節がようやく報われた!
これで俺は魔王後継者として、他の後継者候補から大きくリードしたぞ!
「俺は3位か。まあ、まずまずといった所だな」
メルクスは3位だったのか。
でも、3位でも十分凄い事だぞ?
「あ。ゾーマ様にメルクス様」
麗しい声の方を見ると、ソフィーナがいた。
受験の時は試験のために軽快な装いをしていたが、今回は動きやすさより、女の子らしいお洒落に気を使った格好となっている。
あまりにも可愛すぎて、呼吸をするのも忘れてしまった。
俺だけでなく、周りを見ると先ほどまで合否にざわついていた連中までもが口を閉ざし、ソフィーナに釘付けになっている。
硬派でクールな印象のあるメルクスですら頬を赤く染めていた。
「やあソフィーナさん。順位は何位でしたか?」
合格したの?
ではなく順位を聞いた理由は、ソフィーナは合格していると確信していたからだ。
ソフィーナは実戦でメルクスを抑えて2位だったし、神眼で覗いた驚異のステータスから考えて魔法もスキルも高得点なのは容易に推察できる。
「私は2位でした。あ! ゾーマ様は1位なんですね。凄いなあ・・・」
両手を鳴らして俺に祝福してくれた。
「アハハ。でも、決勝でソフィーナに負けてたら俺が2位だったろうな。あれは危なかった」
トーナメントの決勝でソフィーナと当たったが、彼女は予想以上の強さだった。
間違いなく俺がいなかったらこの世代の一番はソフィーナになっていただろう。
「危なかったって・・・対戦相手を峰打ちだけで倒した紳士剣法の使い手が何をいらない謙遜をしてるのよ」
ソフィーナの背中にひょっこりと隠れていた鋭い目付きの少女が、苦笑を浮かべながら呟く。
ソフィーナには劣るものの、素晴らしい美貌を持った金髪の女の子だった。
同い年なのに、背がソフィーナや俺の半分くらいしかないのは、恐らく彼女の種族がドワーフだからだろう。
「こちらの方は?」
「彼女は私の親友のエルサです。戦術は拳術・・・だったわよね?」
「そうよ! 宜しくね、ゾーマ君にメルクス君」
エルサはにっこりと笑ってから俺に手を差し伸べる。
俺は当然その手を握った。
新しい友達がまた増えた。
それだけで、今日この場所に来た意味があっただろう。
※
合否を確認したあと、俺達は合格者だけが集まる受付に向かった。
ここで教科書や制服等の学生生活で必要な道具を受け取り、クラスも受付で発表されるらしい。
「ゾーマ・ベルゼブブ・・・べ、ベルゼブブ!? 魔族の方ですか?」
「は、はあ・・・」
受付のお姉さんの叫び声につられて、みんなの視線が俺に集まる。
こうなるとは思っていたが、とても恥ずかしい。
俺もサタンみたいに群衆の視線を陽気に受け入れられる度量の大きな魔王に早くなりたいものだ。
「貴方はSクラスですね。これが教科書と制服です。制服の中には学生証が入ってます。それと、今年からはSクラスの方にはこの手鏡を配布する事になりました」
そう言って、受付のお姉さんは手鏡を俺に渡した。
「どうも」
手鏡を受け取る。
鏡は淡い青色の光を放ったあと、レンズに俺のステータスを記し出した。
「・・・これは手鏡」
え、待って。
これって、俺が去年作った手鏡じゃん。
どうして俺が作った発明品が、こんな公の場で配られてるんだ?
まさか、机の引き出しから手鏡を取り出した犯人はスライムじゃなくて、サタンだったのか?
そういえば、サタンはたまに俺の就寝中に部屋へきてごそごそと何かを漁ってたな。
あまりにも気味が悪すぎて、事の真相をあまり考えないようにしていたが、
もしかしてあれは手鏡を盗んでいたんじゃ・・・
「これはつい最近、サタン様が指揮を取っている【魔界研究開発部】で作られた、自動ステータス機能が搭載された手鏡よ」
あ。やっぱ犯人はサタンだったのかよ!
あの野郎、人の発明品を勝手に売りやがったな!!
まあ、最初から手鏡は魔界の新アイテムとしてサタンに売ってもらう予定だったから、別に売る事自体は良いんだけどね。
でも、報酬はちゃんと貰わないとなあ。
うへへ。家に帰ったらサタンに儲けの6割くらい譲って貰おう。
「これさえあれば、水晶なんて使わずに、ステータスが視れるのよ。こんな凄い革新的な道具を作るなんて、魔族の部下は優秀よね」
「そ、そうなんですか・・・」
ま、まあ。正確には魔王の部下ではなくて、魔王の息子が作ったんだけどね。
本当のことを言っても信じてくれなさそうだから、別にいいけど。
「こんな高度な技術に、我等が思い浮かばないような発想! いったいどの様な生活を送っていればこんな事ができるのでしょうか」
お姉さんは機械マニアなのか、目をキラキラと輝かせている。
「そ、そうですね。2年半くらい剣の達人と斬り合ったり魔王と殴り合ったりした後に、森で魔獣をひたすら狩り続けるような人生を送れば良いんじゃないですかね?」
「え?? どういう事です?」
キョトンとしているお姉さんの返事を無視して、俺は列から外れる。
実際はあの人が思ってるほど高度な技術は使ってないんだけどな
偶然会得したSS級スキルを使って、同じSS級スキルを鏡に与えただけだし。
でもまあ、レア度SS級のスキルなんてこの世界じゃ都市伝説扱いの代物だし、
そのスキルを持ってるのは俺だけだから、お姉さんが手鏡を革新的な技術によって作られたと勘違いしても仕方ないか。




