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26.圧倒してしまいました

 メルクスの試合以降は、退屈な勝負ばかりだった。

 唯一目を引かれた受験生は、先程会った美少女くらいだ。


 ソフィーナと言ったっけ?

 あの子は凄かったな。

 容姿もさることながら、魔法の腕前も周りよりずば抜けていた。


 ひっそりと神眼でソフィーナのステータスを覗いたが、メルクスの言う通り、とんでもない数値が記されていた。


 魔力量は90万、適正は全属性。

 スキルの数もレア度Sが40個あった。

 戦術は俺と同じ剣を心得ているらしく、剣の腕前も中々のものだった。


 あの、麗しい美貌だけでも完璧なのに、魔法使いとしての才能もあるとか、完璧超人とは彼女の事をいうのだろう。


 多分、俺には及ばないだろうけど、単純な戦闘力ならメルクス以上なんじゃないか?


「次は、ゾーマ・ベルゼブブとジョン・デストロイ。両者は闘技場の中心に集まれ」


 おっ。次はいよいよ俺か。待ちくたびれたよ。


「ゾーマ。頑張れよ!」


 メルクスの応援に答えてから、俺は武道場へ向かった。

「おい……あれ魔王の息子らしいぞ」


「ベルゼブブの名を持つものに会えるだなんて」

「凄いな……ワシ、校長じゃがもう彼が首席でいいと思う」


 ベルゼブブという名はやはりここにいる全員が知っているらしく、

 周囲の顔つきと、空気がガラリと変わった。

 ……てか、さっき校長が何かよからずことを言っていたが、スルーしておこう。


「て、あれ?」


 俺の対戦相手、どこかで見たことあるなーと思ってたら、さっき俺に絡んできたアリエッドの仲間じゃないか。


「お前、魔族だったのか」

「まあな」


 俺の素性に少し驚くかと思っていたが、ジョンはやけに冷静だった。

 むしろ、厭らしい笑みを浮かべていた。

 何だこいつ。

 不気味なんだが 


「では、試合始め!」


 試合開始になると同時に、ジョンは背負っていた片手剣を取り出し、俺に向かってきた。

 このまま躱して即KOするのもありだったが、

 それでは面白くないので、攻撃を受けてやることにした

 ガキーンと剣音が武道場に響く。


「……おい、お前魔法が使えないんだって?」


 周囲に聞こえないくらいの大きさで、ジョンは俺に話しかけてきた。

 何だこいつ? いきなりどうした

 というか、どうして俺が魔法を使えないと知っているんだ?


「魔法の試験の時、お前の姿がなかった。魔法の試験を受けていないってことは、つまりお前には魔力がないということだろ?」


 あー。それで気付かれたのか。

 うかつだったな。

 この大人数だし、皆自分のことで精いっぱいだろうから、正直誰も俺のことなんて気にしてないと思っていたよ。

 現に、友達のメルクスも気付いてなかったし。


「僕は2つの属性を持っている。アリエッド様に至っては3つも持っているのだ。それに対して魔族のお前は0。実力主義がモットーのこの学院では、俺等の方が格上だ」


 さっきまでは校訓に背いて一方的に権力を振りかざしていたくせに。

 都合の良い時だけは学校の校訓を遵守するのか。

 はあ……


 全員という訳ではないだろうが、権力者にはろくな奴がいないな。

 魔族の第2、第3夫人もそうだし、アリエッドも、こいつも色々と性格が歪み過ぎている。


「魔族の恥晒しが。お前のような落ちこぼれが子供で魔王様に同情するよ」


 ……だんだん腹が立ってきたな。

 何で赤の他人のお前にここまで言われなきゃならんのだ。


「いや、お前のような失敗作を作る魔王様やレイナス様がまず不出来だったのかな。あははは。偉そうにしている魔族の時代も終わりだ。お前ら無能家族のせいでな」


 ぷっつん。

 ここで俺の堪忍袋の緒が切れた。 

 今まではどんな辛辣な発言も流してやっていたが

 俺だけじゃなく、家族まで冒涜する発言は流石に見過ごせないな。


「魔族の時代が終わりだって?」


 そんなこと、俺がさせるはずがないだろ。

 魔族の時代を恒久的なものにさせるために、俺はこの世界へ転生してきたのだから。


「ああ。終わりだ。少なくとも、この学院ではお前は奴隷並の待遇だろう。いつも父上をコキつかっている魔族を虫けらのように扱えて俺は嬉しいぞ」

「やってみろよ」


 滾る怒りを押し殺し、俺はウェンデルの剣を弾く。


「な……!」

「俺とお前の2年じゃ密度が全然違うってことを教えてやる」


 俺の発言が心底ムカついたのか、ジョンは顔を真っ赤にさせて俺に突っ込んできた。


「な、生意気だぞ! 魔力もない虫けらがあああ!! 」


 ぶつぶつと詠唱を済ませ、ジョンは風系統の魔法を放つ。

 大口叩いてた割に、その魔法は低級魔法だった。

 呆れて笑いも出ない。

 お前の修業など、緒戦はその程度なのだ。


 権力にしがみ付き、才能に慢心しているお前には、2年間死に物狂いで鍛錬する根性も気迫も持ち合わせていない。

 俺は2年間、これ以上の魔法や太刀筋を浴びてきた。


 こんな魔法、避けるまでもない。

 2つの剣を強く握りしめ、俺は真っ直ぐにウェンデルの元へ疾駆する。

 まずは左の剣で魔法を消去。

 弱々しい低級魔法ははいとも容易く消滅した。


「な……魔法が打ち消されただと!」


 予期しない現象に、狼狽えるウェルデン。

 これがお前の言う魔力のない落ちこぼれの力だよ!

 俺は一気にウェンデルの腰元に接近し、右の剣で腹部を切る。


 全身切り刻んでやっても良かったが、こんな奴でも命は命だ。

 峰打ちにしておいてやった。


「おお……すげえ」


 いつの間にか、先程まで沸いていた歓声や雑音は消えていた。

 武道場には、先程までとは一変した重い空気が流れている。

 まあ……やりすぎちゃったか。


「しょ……勝者、ゾーマ・ベルゼブブ」



 結果から言うと。トーナメントは俺がぶっちぎりで優勝した。

 2位はソフィーナ

  3位はメルクス。

  4位は色気抜群のサキュバス少女だった。

 いやあ。楽しかったな。

 これで俺は筆記、戦術、スキル、実戦と全て1位か。

 合計は900点。首席合格できるかな……。

 できるといいな!

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