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22.テスト当日の朝、女体化するスライム

 朝だ。

 そして、今日は待ちに待った王立聖闘士魔法学院の入試当日だ。


「ふぁー……太陽がまぶしい」


 大きく伸びをしてから、俺はカーテンを開けて外を見る。

 早朝というものは実に不思議だと俺は思った。

 世闇を照らしていた夜空は消え、空の支配者は太陽に変わる。

 昇ってくる日の出はとても神々しく、着替をすることも忘れて見入ってしまいそうだった。


「さて。外へ出るか」


 頭部に乗っかっていたスライムをベッドに置いてから、俺は身支度を済ませる。


「……っておい!」


 睡眠中のスライムが小刻みに震えていた。

 震える体からは小さな光が纏い、その大きさを徐々に拡大していった。

 マズい。


 これはスライム特有の女体化の症状だ……。

 俺のペットである。【チェンジング・スライム】は週に2回は突然女体化する。

 理由は良くわかっていないが、

 一説によるとチェンジング・スライムはスライムという存在になる前は女性だっという話があるそうだ。


 死んでいった美少女が天寿を全うするとスライムとして転生するらしい。

 有り得ない話だが、事実俺が転生しているため何とも言えん。


「……だからといって、どうして今女体化するんだ!」


 うぎゃー。と叫びながら、俺は慌ててタンスから女性用の服を取り出した。

 元々スライムは服を着ていない。

 そんな全裸同然のスライムが女体化したらどうなる?


 そう、俺の眼の前に真っ裸の美少女が現れることになるのだ。

 美少女の一糸纏わぬ姿を拝めることは確かに嬉しいが、全裸のままでいさせるわけにはいかない。


 姿形は人でも、頭脳はスライムのままだ。

 服を着るという概念がないこいつらは、

 人化した瞬間に部屋を飛び出して屋敷を走り回ることが多い。


 屋敷に住んでいる者達をパニックにさせないためにも、俺はここでスライムに服を着せなくてはならない。


「おら! 服を着ろ」


 包んでいた光が終息し、目の前にはとんでもない美少女が裸で立っていた。


「人……なった……。私、屋敷を冒険する」

「ダメだ! せめて服を着ろ」

「服……嫌い。暑苦しいし、動きにくい」


 スライムは乱暴に差し出した服を払う。

 部屋を出ようとするスライムの手を引っ張り、俺は必死にスライムの脱走を阻む。


「やめて……乱暴、よくない」

「え? お、おい」


 俺は情けなく振り切られ、スライムもろとも転倒する。

 どうやら、腕力の方はスライムの方が強かったらしい。

 昨日S級魔獣を倒した俺が、D級のスライムに負けるなんて皮肉な話だ。


 い、いやあ。全然悔しくないよ?

 剣さえあれば俺の方が強いはずだし?

 それに、スライムとはいえ今はか弱い女性だしなあ。

 女性に暴力とか最悪だし。


 え? ウェホウド? あの人はか弱くないから例外。

 て、今はそんな言い訳をしている場合じゃない!


「いてて……」


 床にぶつけた後頭部を撫でてから、俺は目を開ける。

 視界には、麦のように透き通った肌が映っていた。

 そして、俺の上には同じく転倒したスライムが乗っていた。 


 俺の目に映っていたものは、言うまでもなく、スライムの裸だ。

 これはやばい状況だ……。


 こんな所を誰かに診られたら、大変なことになるぞ

 急いで起き上がろうとした瞬間、

 扉が開かれる音が聞こえた。


「ゾーマ。起きているの? 今日は王学の試験があるから早く起きるとか言っていたじゃな――」


 扉を開けた人物は、レイナスだった。

 うわあ……最悪の闖入者だ。

 レイナスの視界の先には、俺と、俺に跨る裸のスライム。


「え……ゾーマ何をやっているの?」


 レイナスは俺とスライムを見て絶句していた。

 そりゃそうだろう。

 俺にとってはこの状況は事故そのものだが、

 レイナスにとっては、スライムを女体化させてエッチなことを企んでいる息子という風にしか見えない。


「いや……違うんです母様。これはですね」


 必死に脳を働かせ、弁明を図ろうとするが、

 その努力はスライムによって砕かれた。


「ゾーマが私に乱暴する……」

「ええ!? ゾーマ! これは一体どういうことですか!」

「ギャー! 誤解だあああ」


 この後、誤解を解くのに5分くらいかけました。

 朝から幸先悪いなおい!


 ※


 ――グレイモア国《ジェンゲル街≫―― 

 《ジュンゲル街≫とは30ヶ国ある国の中で、最も水準の高いグレイモア国の首都である

 魔王の故郷でもあり、丘の上には魔王城が今でも堂々と君臨しているようだ。


 尊敬する魔王の生まれた地であるからか、ここ100年で一度も戦争が起こらなかった唯一の国でもある。

 央都の国が生まれたのは今から400年前。


 元は五つの国が別々に独立していたが、当時世間を賑わせていた、宗教戦争とは違う「とある戦争」をきっかけに5つの国が結合し、グレイモア国が誕生したと言われている。

 国力。人員。

 そして歴史の長さも魔界1だと言われているこの街の特徴を一言で表現するならば、熱狂という言葉だろう。


 中でも、国の中心にある強大な闘技場では常に祭典が開かれており、

 会場の中は一年中歓声が鳴りやまないと言われている。 

 祭典だけではなく、教育に関しても熱狂的で、

 魔界最大の生徒数と偏差値を誇る「存王立聖誓魔法学院」もこの国の魅力の一つだ。


 魔族の加護を受けし、教育と情熱が交わる国。

 それが、グレイモアなのである。



 はい。ジュンゲル街につきました。

 まず一言。

 人混みと騒音で気持ちが悪い。

 田舎のダーク・テリトリーとは違い、


 この街には活気がありすぎだ。

 田舎の透き通った空気を吸いながら育った俺には少しこの人の密度はきついものだった。


「ゾーマ様。顔色が悪いですけど大丈夫ですか? 何かおっさんみたいになってますよ」


 付き添いとしてきたゴブ平は心配そうに俺の顔を覗いた。

 おっさん顔なのはお前もだろ。


「ゾーマ様。酔い止めのお薬を持ってきました」


 同じく俺の付き添いとしてきたオークンが小さな薬を俺に差し出してきた。

 いや、オークン。それ酔い止めの薬じゃなくて、座薬だから

 口からじゃなくて。、下から凄い物吐いちゃうから。


「ゾーマ様。お疲れなら私が抱っこして差し上げます。ぜひ、私に乗っかってください。ハァハァ……」


 付添人のエルフィンは息を荒くしながら俺の両肩をいやらしい手つきで撫でてきた。

 疲れと同時に童貞もなくなりそうだから丁重にお断りしよう。


「お前ら……いつにも増してテンションが高いな」


 俺の調子とは逆に、3人は久しぶりに王都の国へきたせいか、

 とても浮かれていた。


「ええ。久しぶりのジュンゲル街ですからね。テンションは上がりますよ!」


 と、ゴブ平は満面の笑みで答えた。

 そうか。確か俺が生まれる前は全員ここを住まいとしていたんだっけな。

 ここは魔族の生まれ故郷であると同時に、こいつらの故郷でもあるのか。


「はい! ダークテリトリーのような静か場所もいいですが、やっぱりこの賑やかな空間もたまりませんね! ゾーマ様も酔いを醒まして、この空間を楽しみましょう!」


 オークンもゴブリンと同意見のようで、物凄く楽しそうだった。

 あと、さっきから俺に飲ませようとしている薬は、酔い止めじゃなくて座薬だから。

 この熱狂的な街も、俺の脱糞音で一気に静まり返るから


「そうですね。ここで育っていくゾーマ様も見てみたいですが、私はゾーマ様がご一緒ならどこでも良いですよ」


 最後の方は良く聞こえなかったが、やはりエルフもこの街が好きだということはわかった。


「じゃあ、行ってみようか王立聖闘士魔法学院に!」


 俺は使用人を引き連れて目的地へと向かった。


あともう1話投稿します

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