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23.初めての友達とヒロイン(?)

「ついた!」


 グレイモアを散策して十分後。

 俺達はとうとう目的地であるに辿り着いた。


「おお……でっかい」


 広大な敷地には、幾重にも連なる煉瓦造りの棟が並んでおり、

 その中心にはでかいとしかいえない立派な城壁が、聳えたっていた。


 これが央都の象徴の一つでもある王学の校舎だ。

 何だか小さな要塞っぽくなっている。


「よし。手続きするか」


 俺はウェホウドが直筆してくれた推薦状を受付の人に見せ、試験会場まで案内される。

 試験会場には受験者しか入れないので、召使い三人組とはここで別れることにした。


「ゾーマ様! お気をつけて!」

「あのゾーマ様がお一人で行動をするとは……お達者で! 手紙書きます!」

「ゾーマ様!! お怪我をなさらぬように!」


 ……いや、ちょっとの間離れるだけじゃん。

 俺が一人でどこかへ行くのがそんなに心配なのか?

 まあいいや。先へ向かおう。


 ※


「最初の受験は筆記か。教室はどこだろう」

 キョロキョロと俺は周囲を見渡す。

 魔王城程ではないが、この学校も大変広い敷地なため、すぐ道に迷ってしまう。


「どこだー?」


 目前にあった液晶の掲示板に簡易地図が載っていたが、よくわからなかった。


「おい、そこのゴミ。邪魔だ」


 何か背後から声が聞こえたが、めんどくさそうだったの無視をした。

 えーっと。地図によると、ここは校庭にあたる部分なのか。筆記の教室は南校舎の3階ね。


「おい、聞こえなかったのか、俺を誰だと思ってる、そこをどけ!」


 背後から拳が飛んでくるのを察知したので、軽く躱した。

 躱した拳は情けなく空を切り、液晶画面に激突する。


 痛そうだな……。

 殴りかかってきた奴も悲鳴を上げて真っ赤になった拳を撫でてるよ。

 まあ、いきなり殴ってくるお前が悪いんだけどな。


「貴様、アリエッド様になんてことをするんだ」

 と、アリエッド様の隣にいた金髪の男が横から蹴りを入れてきた。


「南側ってどこだろ」


 その金髪男の蹴りをひょいと躱す。

 その蹴りも空を切った後、そのまま液晶に激突した。

 金髪男もアリエッドという男と同じように痛みに苦しみ悶えていた。


「……。ああ、あそこか」


 お目当ての校舎を見つけ、俺は蹲っている二人をスルーして足を動かす。


「お前、いい加減にしろよ!」


 アリエッドは激怒し、両腕から炎系統の魔法を俺に発射した。

 まあ、低級の魔法だった。

 これは避けるまでもなかった。

 俺の体に触れた途端に霧散した。


「そんな……魔法が消えた!」

「アリエッド様の魔法が!」


 何なんだこいつら。面倒くさいな


「あの、君達いったい何なんですか?」


 無視しても無駄だと気付いた俺は、さっきからうるさい二人組に声をかける。


「お、お前。俺を知らないのか? この国の侯爵である、アリエッド・ジェン様だ!」


 ジェン……そういえば、どこかで聞いたことがある名前だな。


 ああ。たまに俺の家に来てはサタンにへこへこと媚びを売っていた惨めな貴族か。

 で、その息子がこのアリエッドなわけね。

 あー。

 何ていうか、惨めなやつだなあ。

 お前が今喧嘩を売っているやつは、お前の父さんがいつも媚び売っているしてる魔王の息子だぞ。


「いや……この学校では身分何て関係ないでしょ。威張るのなら権力の力を借りるのではなく、実力じゃないと」


 まあ、俺はこいつとは違うから権力をかさに着て高慢な態度なんて取らないけどね


「何……。貴様、父に頼んで処罰してもらうからな!」


 いや……多分、そんなこと頼んだら、お前の父さんは顔を青ざめて俺に謝罪にしてくると思うぞ。


「はあ……どうぞ、やれるものならやってみな」

「この、生意気なやつだ!」


 アリエッドが俺の胸倉をつかんだその時、横合いから声がかかった


「何をしている!」


 誰だ……

 目の前に現れた人物は、金髪碧眼の少年だった。


 華奢な体だが、締まるところは締まっている細マッチョ体型。端正な顔立ちに、気品のある風貌。

 何だこのイケメン。


「貴方は……」


 アリエッドは声を震わせ、顔を青ざめていた。

 てことは、アリエッドよりも位の高い人物か。


「メルクス・ウィザーズ王子……」


 王子だって!


「下らない権力を振りかざし、周りに迷惑をかけるなんて論外だ。お前の父親、オル・ジュメスは貴様に常識という物を教えてこなかったのか?」

「も、申し訳ありませんでした」


 メルクスの正論にぐうの音も出なかったのか、アリエッドは悔しそうに歯噛みをする。


「いやあ。助かったよあんた。王子様だっけ?」

「ば、ばか。お前メルクス様に何て口をきいているんだ? あのお方はグレイモアの王族なのだ。魔族の次に偉い身分なんだぞ?」


 いや、俺その魔族だし。

 まあ、今の俺は魔族の証である金色の角を帽子で隠してるから誰も俺の正体を知らないだろうけど。


「ここでは身分何て関係ないって、王子様自身がさっき言ったばかりじゃないか」


 俺の言葉にうんうんと頷いてから、メルクスはアリエッド君を睨んで忠告する。


「その通りだ。アリエッドよ、受験に備えている者の空気を乱すな。わかったなら早く去るが良い」

「は、はい。すみませんでした」


 アリエッドは最後に俺を睨んでから、速足にこの場を去っていった。

 うん。かっこ悪いな。


「わざわざすまない。メルクスだっけ? 俺の名はゾーマ・ベルゼブブ」

「おお。魔族の方でしたか。そしたら先程の助太刀は不要な真似でしたかな?」

「とんでもない。助かったよ。俺もあまり自分の立場を言いたくないんでね」


 この人は、いい奴そうだな。

 そう判断した俺はメルクスに手を差し伸べた。


「俺のことはゾーマでいいよ。ここでは権力なんて関係ない」

「面白い人だ。姉から君の話をよく聞いている」

「姉?」


 はて。グレイモア国の王族に知り合い何ていただろうか。

 ……。あっ。まさか


「もしかして、ウェホウドさんの弟?」


 ほぼ忘れていたが、初めて会った時、ウェホウドさんはどっかの王族出身だったと聞いたことがある。

 俺に王族の知り合いなんてウェホウドさんくらいしかいないな。

 俺の反応がおもしろかったのか、えくはくくくと上品に笑う。


「その通り、ウェホウド姉さんはよく俺に貴方の話をしていた。何でも、私を超えた数少ない天才が貴方だと」


 おいおい、凄く褒められてるじゃないか俺。


「そのお陰で同い年である俺は事あるごとに、会った事もないあなたと比較されてた。中でも、5トンの木刀を無理やり振らされた時はマジで辛かった。ははは」

「な、なんかごめんね」


 超成長のスキルを宿していない人に5トンの木刀なんて持たせるな! と胸中でウェホウドさんに突っ込む


「謝ることはない。君のお陰で俺も大分強い魔法師になれたからな。俺の事はメルクスと呼んでくれたまえ」

「おお!」 


 始めて同性の友達ができた。

 同性の友達なんて何年振りだろう。

 中学二年生の頃にできた高杉君以来か。

 いや、どうだろう。

 高杉君は、俺にゲームを借りる時だけ友達だろとか言ってたクズだしな。


 ゲームを貸した途端、「誰だてめえ」とか言ってきてびっくりしたよ。

 お前、セーブデータと同時に俺の存在もリセットしたのかよって。

 まあ、あんなクズとは違ってメリクスは良い奴に違いない。巻き込まれていた俺を助けてくれたし。


「じゃあゾーマよ。教室へ向かおうか」

「おう……いて!」


 初めての友達との会話を楽しんでいると、突然背中に軽い衝撃が走った。

 どうやら誰かが俺にぶつかってきたようだ。

 何だよ。またあの公爵様なのか?


「あ。ご、ごめんなさい」


 ぶつかってきたのは、クソ公爵ではなくとんでもない美少女だった。


 艶やかな背の半ばまであるストレートの黒髪に、同じくらい黒く、そして吸い込まれそうなほどに透き通った黒い瞳。


 咲きたての花のような清潔感と尊さを感じさせる端正な顔立ちで、肌はこの世の物とは思えない程に艶やかな白い肌をしている。

 

 華奢な体だが、その体躯は世の男性を一瞬で虜にしてしまいそうなくらい魅惑的で、お淑やかな印象とは異なり、やたらと主張的な胸部が俺の視線を釘付けにさせる。


 ・・・なんだこの欠点のなさそうな美少女は。

 こいつ、誰かが創造魔法かなんかで作った、男の妄想を具現化させた幻なのではないのか?

 そう思ってしまうほどに、目の前の女性は途方もなく綺麗だ


「いえ。あなたこそ、怪我はありませんか?」


 そう言ってから、しゃがみこみ、彼女が落とした紙切れや参考書を披露。


 凄いな。参考書には付箋やマーカが沢山あり、紙切れには数式や単語の羅列でいっぱいだった。

 これだけで、彼女が今までどれだけ勉強をしてきたのかわかる。


「どうぞ。これ、落とした荷物です」

「ありがとうございます・・・優しいのですね。庶民の私の落し物を拾ってくれるなんて」

「いや、庶民とかそういうの抜きに、これくらいは人として当然の行動だよ」

「そうですか」


 美少女はにっこりと俺を見て笑う

 やばい。平常時の表情ですら美しすぎて魂が抜けてしまいそうなのに、こんな笑顔を見せられてしまったら、心がどうにかなってしまいそうだ。


「お互い頑張りましょう。同じクラスになれると嬉しいですね」

「そ、そうだね! その時はよろしく」

「はい」


 ありがとうございます、俺とメルクスに礼をしてから、彼女は速足で教室へと駆けていった。


「ほう。ソフィーナ・インズじゃないか」


「知っているのか?」

「ああ。インズ一族の子だ。インズ一族は代々魔力の低い者ばかりが生まれてくる家系で、そうした理由もあって、庶民の中でも1番身分の低い立場だった。ソフィーナが生まれてくるまでは」

「ということは、彼女は凄い魔力量を有してるのか?」


 俺の問いかけに、メルクスは首肯する。

 凄いな。たった1人で一族の立場を一変させたのか。


「彼女は破格の魔力量にくわえ、サタン様以来の全属性の適正持ちという天才だ」

「それは凄いな」


 身分の低い子で魔法の才能があるとか、ある意味俺の対極の存在じゃないか


「おまけに美少女だ。この国1のな」

「この国1の美少女か……」

 おいおい。楽しくなってきたじゃねえか!

 学園生活!

ついにヒロインが出てきました!

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