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19.最後の修行を始めました。そして3億GET

 歩く。歩く。まだ歩く。

 今日はいよいよ修業最終日だ。

 ウェホウドさんと過ごす最後の日に行う修行の内容は、「2年間の総まとめ」。 言わば最終試験のようなものだ。


 今から外の森へ行き、ウェホウドさんが指定したS級魔獣を「ジャッジメントルシファーき」で討伐できれば見事合格となる。

 これでウェホウドさんから合格を貰えば、俺は晴れて一流の剣士として認められたことになる。


 俺はこの日のためにずっと頑張ってきたのだ。絶対にウェホウドさんに認めてもらうぞ


「うーん。やっぱり外の空気は最高ですね」


 ウェホウドさんは大きく伸びをしてから新鮮な空気を吸い込む。

 意気込んでいる俺とは違い、彼女はとても気分がよさそうだった


「ところでウェホウドさん、どの魔獣を討伐すればよいのですか?」


 対戦相手がS級魔獣という事は知っているが、その魔獣の名前や特徴、弱点は効かされていない。


「ふふふ。うふふ。ぐひひ」

「ええ……」


 今まで見てきた中で一番不気味な笑みを見せていた。


「これを見てください」

「これは……ギルドの依頼書じゃないですか。どうしてこんな物を?」


 ギルドの依頼書とは、依頼主が冒険者に依頼をする紙みたいなものだ。

 冒険者はギルドの掲示板に貼られているその依頼書の内容と、報酬を見て依頼を受託するかしないか判断するらしい。


 そんなギルド冒険者にしか使えない依頼書をどうしてウェホウドさんが持っているのだろうか?


「言っていませんでしたっけ? 私は魔界騎士団の隊長でもあり、冒険者なんですよ。まあ、ギルド冒険者になったのは5年前ですけどね」

「そうなんですか……」


 そういって、ウェホウドさんは自身の冒険者カードを俺に見せた。

 そこには、ウェホウド・ウィザードという名前と、S級冒険者という、冒険者の中で最も位の高いランクが記されていた。


 ちなみに、S級冒険者の領域に達するまでその凡人なら20年、才あるものでも10年は必要だと言われている。

  ウェホウドさんはたった5年で冒険者を極めてしまったのだ。

 やっぱりウェホウドさんって凄いんだな……


「まあ、既にゾーマ様は私を超えているので、ゾーマ様も直ぐにS級冒険者になれると思いますけどね」


 笑顔でそう言いながら、依頼書を俺に渡してきた。

 依頼書にはこう書かれていた


『ルンドル・ドラゴンを10体討伐せよ。成功報酬ルンドル・ドラゴンの肉と3億M』


「さ、3億M??」


 巨額の報酬を目にして俺は目を丸くする。

 この世界の通貨は「Mマジック」だ

 1M=1円だから、これは地球でいうと、3億円貰えるという事になる。


「まあ、当然ですよ。S級魔獣は、一流冒険者が束になってやっと1匹倒せるかどうかってレベルですからね。それを10匹も倒すんですからそれくらい報酬を貰わなくてはやってられません」


 まあ、本来ならこの手の大型クエストは大規模のパーティーを結成しないとまず成功しないんですけどね。

 と、ウェホウドさんは付け加えた。


 いや、そんなレベルのクエストを俺1人にやらせるなよ・・・。


「というか、ルンドル・ドラゴンってなんですか?」

「ルンドル・ドラゴンは炎系統の魔法を扱うドラゴンです。S級魔獣の中でも特に怪力で凶暴性も高く、油断をしているとベテランの冒険者でも殺されてしまうことがあります」


 ルンドル・ドラゴン怖いよ! 

 てか、そんな化け物を今から10体も倒さないといけないのかよ!


「まあ、でもルンドル・ドラゴンは攻撃に特化している分動きは遅いです。ゾーマ様なら炎魔法も効かないですし、厄介な怪力も遠く離れたところで斬撃を飛ばしちゃえば余裕ですかね」


 そうなのか?

 何かそう言われたら勝てそうな気になってきた。

 よし、ウェホウドさんを信じていっちょやってみっか!


 ※


 森を散策してから十分後、

 俺等は森の辺境にある小川にきていた。


「ルンドル・ドラゴンはドラゴンですが、基本的には水の中で暮らしています」

「ほうほう。じゃあ、川を潜って探すんですか?」

「いいえ。わざわざ不利になる状況で戦う必要はありません。ルンドル・ドラゴンを陸に誘き寄せて戦った方が得策です」

「でも、どうやって陸に誘き寄せるんですか? でかい釣り竿でも使うんですか?」


 ウェホウドさんは俺の答えがおもしろかったのか、ふっと吹きだした


「うふふ。違いますよ。さっきも言いましたよね? ルンドル・ドラゴンは凶暴なんですよ。そして、好戦的でもあります」

「好戦的?」


 ますますわからない。

 うーん。何だ?


「うふふ。わかりませんか?」

 うーんと唸っている俺を見て、ウェホウドさんは微笑ましそうに笑う。


「魔力ですよ。ルンドル・ドラゴンは、巨大な魔力を探知して、獲物を襲うんです」

「なるほど……魔力を解放して誘き寄せるんですね。でも、僕には魔力がないんですけど」

「そのために私がいます。私がルンドル・ドラゴンを誘き寄せますよ!」


 おお。頼もしい!

 確かにウェホウドさんの強大な魔力なら、森全体の魔獣に伝わるぞ!

 え……森全体の魔獣に伝わる?


「それだと、ルンドル・ドラゴン以外の魔獣も誘き寄せてしまうんじゃないか?」

「安心してください。この森で魔力感知できる魔獣はルンドル・ドラゴンだけです」


 そうなのか。安心した。

 S級魔獣10匹と相対するだけでも大変なのに

 これ以上こられたら命が幾つあっても足りないわ。


「では、いきますよ……ハア!」

 

 ウェホウドさんは一回大きく息を吸ってから、自身の魔力を放出させた。

 瞬間、小川の中から、大量の魔獣が飛び出してきた。

 

 その数なんと、1匹、2匹、3匹、4匹……じゅ、15匹?

 目的の数より5匹多いぞ


「これがルンドル・ドラゴン……」 


 肉体を直接貫くような鋭い魔力が俺の全身に伝わる。

 規格外の魔力を察知した俺は、思わず背筋を凍らした。 


 何て巨大な魔力だ。

 こんなに大きな魔力を肌で感じたのは、生まれて初めてだった。


「ゾーマ様、では、よろしくお願いします」

「は、はい。わかりました」


「ギャオオオオ!」


 森全体を震わせる咆哮をあげ、ルンドル・ドラゴンの群れは俺とウェホウドさんに襲い掛かってきた。


「あ!」


 先手必勝とばかりに、一匹目のドラゴンは炎魔法を放ってきた。

 俺は避ける暇もなくその魔法をもろに浴びてしまう。

 まあ、効いてないんですけどね。


「……?」


 ルンドル・ドラゴンは目をきょろきょろとさせながら、首を傾げていた。

 予期せぬ現象が立て続けに起きて混乱しているようだ。


 ははは。若いねえ。ルンドル・ドラゴンくん

 敵を目の前にして混乱をしている時点でお前の負けだ

 

「グ、ギャアアア」


 俺に魔法が効かないと判断したのか、

 今度は後方にいたルンドス・ドラゴンが俺の脳天目がけて右腕を振り下ろしてきた。


「ははははは。望むところだ」

 

 ここで避けてカウンターを喰らわせることは簡単だったが、俺はあえてその選択を捨て、攻撃を受けることを選んだ。


 振り下ろされた右腕を、同じく右の剣で受け止める。

 凄まじい衝撃が剣から伝わってくるが、耐えられない程ではなかった。

 よし、今度は俺の番だ。


「うおおお!」


 相手の攻撃が落ち着いたのを確認してから、

 俺は右足で獲物の腹部を思いっきり蹴り上げる。

 ルンドル・ドラゴンはそのまま情けなく吹き飛んだ。


「グ、グギイイイ!!」


 腹部を押さえながら、ルンドル・ドラゴンは苦悶の表情を浮かべている。


「……蹴りだけで」


 魔力もなく、魔法も使えないちっぽけな存在だった俺が

 今では体術だけでS級魔獣相手に無双している。。


 一流の冒険者が束になってようやく勝てるくらいの強さを誇るS級の魔獣を、たった一人で倒しているのだ。。


「……はは」


 自分の成長を肌で感じ、少し泣きそうになってくるが、ここで泣くわけにはいかない。

 この最終試験の他にも、俺はまだ沢山やらなくてはいけない試練があるのだ。

 泣くのはその後だ!


「ギャアアア!」


 蹴り飛ばされたルンドス・ドラゴンは怒り狂ったように顔を真っ赤にさせ、再度俺に向かって腕を振り下ろしてきた。


「グァァァァァ!!」


 続いて、残りの14匹のルンドス・ドラゴンも一斉に俺目がけて突進をしてくる。

 よい、丁度いい感じにルンドス・ドラゴンが集まってきた。

 ここで一気に決めよう。


「オラアア」


 鋭利な呼気を放ち、俺は15匹の獲物目がけて斬撃を放った。。

 ――いくぞ、ウェホウドさんと一緒に完成させた俺達の最終奥義「ジャッジメントルシファーき」


 走る鈍色の剣先は、空気を貫いて標的の元へと襲い掛かる。 

 たった一度だけ剣を振った。

 それだけで、周辺の世界は激変した。


 太刀筋は風を巻き込んでその規模を広げていき、ルンドル・ドラゴンだけでなく、空間をも容易に切り裂いた。


 地は真っ二つに割かれ、盛大な地響きと土煙が屋敷に響く。

 大気が湾曲するレベルの余波が生まれ、暴風が周辺を飲み込んだ。


「おお。想像以上の破壊力だな」


 木々が消し飛んですっかり丸裸となった森と、

 バラバラに切り裂かれたドラゴンを確認する。

 うん。少しやりすぎたかな。


「ふへえ。汚い」


 全身に付着したルンドル・ドラゴンの血を払う。

 魔獣の血は生臭いだけじゃなくて、粘々しているため、

 振り払おうとしても粘着してなかなか取れない。


 本当に汚い。

 まあ、この汚れも最終試験を合格とした勲章と考えれば多少はマシになるのかな。


「よっしゃ! ウェホウドさん。最終試験をクリアしましたよ!」


 ニッコリと笑いながらウェホウドさんを見る

 彼女も、俺と同じで、最終試験の合格を喜んでくれているはずだ


「……」


 あれ?

 ウェホウドさんは、俺の予想とは真逆のリアクションを取っていた。

 笑顔をむき出しにしている俺とは違い

 口を開け、呆然としながら立ち尽くしているのだ。


 え? 何だこの反応。

 もしかして、何かマズい事をしてしまったのか?


「ウェホウドさん?」

「……凄いわ。本当にこの子は歴代最強の魔王になりうるかもしれない」


 え? 何て言っているんですかね? 

 聞こえないですよ。


「えっと。ルンドル・ドラゴンの討伐に成功したんですけど、これでいいんですよね? 最終試験クリアですよね?」

「は、はい! 勿論合格です。はい……非の打ち所がないくらい完璧でした」

「よっしゃ!」


 右腕を天に掲げ、俺は全身で喜びを表現する。

 くー。やったぜ!

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