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「短期連載版」金貨に執着する聖女の話  作者: 山田 勝


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3/4

3 慈愛孤児院

 私はシスターアリシア、慈愛孤児院の院長をしておりますの。



「「「皆様、ご鑑賞有難うございました」」」



 今日は貴族の方々を招いて劇の公演ですわ。

 王宮の楽団まで来て頂きました。

 後援者に対するお礼ですわ。

 拍手が鳴り響きました。大成功ですわ。



「アリシア様、ご寄付を受けて下さい」

「アリシア様、還俗して子息の妻に」


 ええ、大成功でしたわ。

 孤児院はつつがなく衣食住が足りる状況でした。


 王族を追放され修道院に行かされましたが、こうして孤児院長になれて・・・良かったですわ。


 しかし、子供達に変化が現われたのです。


「皆様、祈りの時間ですわ」


「シスター様、僕たちは貴族様に一目おかれる存在です」

「そうだわ。演劇の練習をしたいですわ」

「祈り?勉強?それよりも、シスター様、お金を沢山もらっているのでしょう?」


「「「分け前をもらいたい」」」



 そんなことを言い出しましたわ。


「み、皆様は子供で、もの珍しいから寄付を頂いたのですわ」


 そのようなことを言っても逆効果でした。


「舞台衣装を新しくして」

「そうよ。もっと良い脚本家を選んでね」


 もう、統制が取れません。

 あんなに良い子だったのに。


 そんな中、街角で聖女様をお見かけしたのです。

 大工の現場で1人の大工が倒れていました。

 木材が落ちて腕に大怪我を負っています。

 そこに聖女様が通りかかったのです。


「おい、聖女だ!治してやれよ」

「そうだよ・・・って、あれはドケチ聖女だ・・」


 聖女様はドケチと評判ですが涼しい顔で言い放ちました。


「治ったら金貨一枚ですわ」


「「「ハアアアアアーーーーー」」」」

「噂以上だ!」


 大工は腕の腕は骨が見えていました。皮一枚でつながっている状態でした。

 これは切断?

 大工は腕がなかったら・・・私でも分かります。家族ともども飢え死にですわ。


 その時、聖女様は言い放ちましたわ。


【あら、貴方たちが出しあって金貨一枚分寄越しなさいな】


 すると、急に静かになって、


「俺、用事があった」

「帰らなきゃ。お使いの途中だったわ」


 急に野次馬の群れが消えました。


 でも、


「おおーし、俺の今日の一日の稼ぎだ!」

「ドケチ聖女!金貨一枚集めるからそこで待っていやがれ!」


 大工の仲間達が奮起しました。

 何とか、金貨一枚分集めたようです。


「どうよ、聖女様よ!これで治らなきゃどうなるか分かっているのか?」


 でも、聖女様はお金を数えていましたわ。


「3,4・・・あら、銅貨二枚分多いわ。これはお返ししますわ」

「そんなの良いから早くせい!」


「急かす殿方は嫌われますわ。あら、これは欠損回復魔法を使うまでもない。(麻酔)」



 不思議な言語が中に入ってました。


「あれ、痛みが消えた。俺は死ぬのか?」

「いいえ。死ぬまで死にません。ギャーギャー騒がれるのも嫌ですから、えい」


 皮一枚でつながっている腕をもぎ。

 聖魔法でつなげました。


 これは、見た事のない領域の聖魔法でしたわ。



「あれ、腕が動く」

「しばらく安静にしなさいな。では」


「見たか。ドケチ聖女!」

「ハンス、良かったな。今日はもう帰れ」

「はい、親方・・・」



 この場も見事でしたわ。わざと反感を買って、善意を引き出す。

 私は聖女様の後をつけ。こうして、助言をお願いしております。



 ・・・・・・・・・・・・・・




「どうか、聖女様、私に道を差し伸べて下さい。子供達が言うことを聞かないのです」


「治療以外の話はお控え下さい」

「待って下さい!金貨一枚お支払いしますわ」

「人生相談は受け付けておりませんの」


 必死にすがったら聖女様はとても嫌な顔をされて・・・


「なら、四の辻の孤児院にお行きなさいませ」

「四の辻孤児院、私がいなくなったら・・・子供達は」


「子供は守ってくれる存在に依存する者。慈善貴族を頼れる存在と思っているのでしょうね」


 そう言ってどこかに行かれたわ。

 四の辻孤児院、王都の四つの道が交差する場所にある孤児院ね。


 あまり聞いたことがない。

 土地は三角地だ。値が安い土地、貧乏孤児院と思われたが・・・


 出むかえたのは年長の子だった。十三歳だと言う。


「ベッキーと申します。お話はオーナーから書簡が届きました」

「オーナー?孤児院長は不在なのかしら」

「そうです」


 教師はいない。強いて言えば年長の子が世話をしている感じだわ。

 毎月、決まった額が送金されると言う。


「まさか、貴方が帳簿をつけているの?」

「そうです」


 さらりと言う。

「エへへへ、このままずっと孤児院で働きたいと思っています」

「そう・・・私は何をすればよろしいかしら」

「見学をお願いします」


 午前中は勉強・・・これは大陸共通語で最近導入された異世界数字・・・


「計算はこっちの方が早いのです」


 午後は年少の子はボール遊びをしたり。

 中には手伝いに来る大人がいたわ。貴族の男性だわ。


「どうも、ウェーバー・ザイルと申します」

「シスターアリシアと申します」

「え、王族の方?あの、失礼しました」

「昔の話ですわ・・・」


 彼は男の子に剣を教えるわ。


「まず基本からだ!」

「「「はい、先生!」」」



 食事は外から料理人が来る。料理人もオーナーから書面で指示をされているそうだわ。

「いや、オーナーから細かい指示をされまして、でも、この通り作ると美味しいのですよ。参っちゃいます」



 野菜は煮過ぎない。炒めすぎない。魚がメインで肉も時々支給される。


 オーナーって何者かしら。

 ベッキーはうっとりして言うわ。


「分からないのです。書簡で指示が来ます。きっと、名のある方なのでしょう」


 見た事もないオーナーを尊敬しているわ。

 ウェーバー様にオーナーを聞いても言葉を濁す。


「うむ・・・まあ」

「どこかにいる名のある慈善家ですか?」

「いや、違います。では失礼します」


 およそ十日経ってから、オーナーの指示が来た。

 慈愛孤児院に戻れとのことだわ。


 ここでは学べなかった。

 慈愛孤児院に戻ったら・・・・



「おい、ここはいいな。食事も出るしな」

「おい、ガキども、邪魔だから外に行っていろ」



 ゴロツキ達のたまり場になっていた・・・・

 子供達は怯えきっている。


「お、女が向こうから来たぜ」

「ホロホロ鳥が鍋をしょってやってきたぜ」


 わ、わたしはどうしたら良いのかしら・・・逃げる?


「シ、シスター様!」

「ウワーン、シスター様、どこに行っていたの?」



「み、みなさま・・・」


 初心を思い出した。親を亡くしこの孤児院に来たとき子供は怯えきっていたわ。

 それを優しくしてあげて・・・



「出ていって下さいませ。この子達は私が守りますわ!」


 子供を背にして両手を広げて庇ったわ。

 子供達が一斉に背中の後ろに集まった。


「あん?」

「出ていけだと!」


 ゴロツキ達がすごむ。

 思わず目を瞑ったら・・・


「なら、しゃあないか?」

「占有権って奴が・・・え、と何だっけ」

「兄貴、難しい事を言わないで行きましょう。占有権を主張したら真の所有者が来て・・・」



 何故か去って行ったわ。


「「「ウワーン」」」

「シスター様!」


「貴族達は来てくれなかったの?」


「うん。門前払いされた・・・」

「アリシア様がいるから寄付をしたのですって・・・グスン」


「まあ・・」


「「「僕たち間違ってました」」」


 貴族達にとって元王族の私狙いで子供達の将来を案じている訳ではなかったのね・・・



 それから、街角で聖女様をお見かけするが・・・


「おら、おら、聖女様のお通りだ」


 何故か、あのゴロツキ達が付き従っていた。まさか、これも仕込みだったの?


 もしかして、四の辻孤児院のオーナーが聖女サトコ様ではないかと思って仕方ないが・・・


「聖女様!」

「あら、シスターアリシア様?」


「私が間違っておりましたわ。でも、貴方のやり方は嫌いですわ!」


「あら、そう。私も慈愛を説く貴方は嫌いなの。気が合うわね」


 いつか超えてみせる。慈愛に満ちた国にするわ。

 そう決意したわ。



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