34話
そこで、俺の最初の記憶は途切れている。
剣が振り下ろされて、それから、どうなったのか。痛みはあったのか、なかったのか。覚えていない。ただ、あのあたたかい光の中で、彼女の涙に濡れた顔を最後に見て、俺の最初の生は終わった。
名前の話から始めた。
名前がまだなかった頃の話を。緑の小さな、何も持たない、はぐれのゴブリン。言葉も名も居場所もなかった、あの生の話を。
あの生で、俺はたくさんのものをもらった。剣を。技を。言葉を少し。そして、名を。守る者、という名を。その意味も知らずに、俺はそれを生きた。誰かを守って、守れなくて、また守って。最後は、その名をくれた者に看取られて、死んだ。
悪い生では、なかったと思う。
奪われることから始まった生だった。だが終わってみれば、俺はたくさんのものを与えられていた。そして、少しは与えることもできた。あの女に。相棒に。名も知らぬ、あの人間たちに。差し引きしてどうだったのかは、わからない。だが、悪くはなかった。そう思いたい。
これで終わりだと、あのときは思った。
一つの生が終わり、すべてが暗闇に還る。それでおしまい。緑の、はぐれの、小さな何かの、短い一生の幕切れ。誰にも知られず、あの女の記憶の中だけに残って、あとは消えていく。そう思っていた。
だが、そうではなかった。
俺の生は、そこで終わらなかった。終わらせてもらえなかった、と言うべきか。あのあと俺の知らないところで、誰かが何かをしていた。俺のこの、ちっぽけな魂に。
——だが、それを知るのは、まだ少し先のことだ。
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